都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「奥絵師・木挽町狩野家」 板橋区立美術館
板橋区立美術館
「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家~お殿さまに仕えた絵師たちの250年~」
4/7-5/6
板橋区立美術館で開催中の「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家」へ行って来ました。
館蔵の江戸絵画には定評のある板橋区立美術館ですが、今回はややマニアックな切り口でコレクションを紹介しています。
その切り口とはタイトルの通り、「奥絵師」と「木挽町」です。
ともに聞き慣れない言葉なので説明があった方が良いかもしれません。
手前:狩野探雪「私の守り神」(*板橋名)「妙音天像」
まず奥絵師とは、幕府に仕えた御用絵師の中でも将軍に接見出来る高い家柄のことで、江戸中期には4家ありました。
その4家とはいずれも狩野家から中橋、鍛治橋、木挽町、浜町を指しますが、そのうち木挽町家の作品を、板橋区立美術館が多く所蔵しています。
ごく簡単に言えば御用絵師の最高ブランドです。古くは探幽の弟、初代尚信にはじまり、幕府に最も重用された6代典信、さらには最後の当主で門下から芳崖や雅邦を輩出した雅信へと至ります。それらの絵師らの作品が展示されていました。 (出品リスト)
さてそれこそ蕭白イヤーらなぬ、奇想系ブームの中、御用絵師となると少々分が悪いのかもしれませんが、もちろん作品自体に見るべき点がないと言うわけではありません。
面白いのが7代目惟信から「四季花鳥図屏風」、お馴染み板橋名では「極楽の花と鳥」です。
狩野惟信「極楽の花と鳥」(*板橋名)「四季花鳥図屏風」
眩い金地に右から春、夏、秋、冬と、四季の様子が描かれていますが、狩野派以外の様々な画風、例えば伊年印の草花図や、琳派風の図案化されたモミジなどが取り入れられていることがわかります。
狩野惟信「極楽の花と鳥」(*板橋名)「四季花鳥図屏風」 部分
この鳥など完全に若冲風です。おそらくは結婚式のために描かれたのではないかということですが、まさかこの絢爛豪華な花鳥図に若冲モチーフが登場するとは思いませんでした。
典信の「唐子遊図屏風」、板橋名「チャイニーズ・キッズ」 や、チラシ表紙を飾る栄信の「花鳥図」、板橋名「青ざめた牡丹」も目を引きます。
狩野典信「チャイニーズ・キッズ」(*板橋名)「唐子遊図屏風」
それにしても、この背景の青の目立つ牡丹の絵に「青ざめた」と名付けた板橋のネーミングセンスには脱帽です。
右:狩野栄信「青ざめた牡丹」(*板橋名)「花鳥図」1812年
河鍋暁斎の「龍虎図屏風」を「ドラゴン・タイガー最終決戦」とするなど、いつもながらの奇抜なタイトルで見ると俄然、絵の印象が変わってきます。
またはじめの展示室はどちらかというと探幽を連想させるような淡麗でモノクロの作品で統一されているのに対し、二つ目の展示室では派手な色の金屏風がずらりと並んでいます。
展示室風景
細かい点かもしれませんが、そうしたメリハリのついた構成も巧みでした。
もちろん恒例のガラスケースなし、ウォークイン方式のお座敷完全露出展示もご覧の通りです。
お座敷展示風景
まさに目と鼻の先で作品を楽しめますが、その分ちょっとした注意も必要です。
狩野惟信「黄金色の雪景色」(*板橋名)「秋冬松竹梅小禽図屏風」
係りの方が案内して下さいますが、手荷物は靴を脱ぐスペースに一度置いてからご観覧下さい。
ちなみに木挽町の画所には弟子が5、60名おり、絵画の養成カリキュラムが行われていた他、酒盛りや文人画家に混じって浮世絵を描くことを禁止するなどの細かな規則もあったそうです。
「狩野派決定版/別冊太陽/平凡社」
また奥絵師に対する表絵師は、あくまでも奥絵師の分家、言わば一段下の家柄に過ぎません。実は行く前はてっきり奥より表の方が格が上かと思いこんでいました。
「もっと知りたい狩野派―探幽と江戸狩野派/東京美術」
館内撮影可能、入場無料の展示です。これまであまり意識しなかった知られざる狩野派を体系だって見るチャンスではないでしょうか。
5月6日まで開催されています。
「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家~お殿さまに仕えた絵師たちの250年~」(@edo_itabashi) 板橋区立美術館
会期:4月7日(土)~5月6日(日)
休館:月曜日。但し4/30は開館し、5/1は休館。
時間:9:30~17:00
住所:板橋区赤塚5-34-27
交通:都営地下鉄三田線西高島平駅下車徒歩13分。東武東上線・東京メトロ有楽町線成増駅北口2番のりばより増17系統「高島平操車場」行き、「区立美術館」下車。
「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家~お殿さまに仕えた絵師たちの250年~」
4/7-5/6
板橋区立美術館で開催中の「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家」へ行って来ました。
館蔵の江戸絵画には定評のある板橋区立美術館ですが、今回はややマニアックな切り口でコレクションを紹介しています。
その切り口とはタイトルの通り、「奥絵師」と「木挽町」です。
ともに聞き慣れない言葉なので説明があった方が良いかもしれません。
手前:狩野探雪「私の守り神」(*板橋名)「妙音天像」
まず奥絵師とは、幕府に仕えた御用絵師の中でも将軍に接見出来る高い家柄のことで、江戸中期には4家ありました。
その4家とはいずれも狩野家から中橋、鍛治橋、木挽町、浜町を指しますが、そのうち木挽町家の作品を、板橋区立美術館が多く所蔵しています。
ごく簡単に言えば御用絵師の最高ブランドです。古くは探幽の弟、初代尚信にはじまり、幕府に最も重用された6代典信、さらには最後の当主で門下から芳崖や雅邦を輩出した雅信へと至ります。それらの絵師らの作品が展示されていました。 (出品リスト)
さてそれこそ蕭白イヤーらなぬ、奇想系ブームの中、御用絵師となると少々分が悪いのかもしれませんが、もちろん作品自体に見るべき点がないと言うわけではありません。
面白いのが7代目惟信から「四季花鳥図屏風」、お馴染み板橋名では「極楽の花と鳥」です。
狩野惟信「極楽の花と鳥」(*板橋名)「四季花鳥図屏風」
眩い金地に右から春、夏、秋、冬と、四季の様子が描かれていますが、狩野派以外の様々な画風、例えば伊年印の草花図や、琳派風の図案化されたモミジなどが取り入れられていることがわかります。
狩野惟信「極楽の花と鳥」(*板橋名)「四季花鳥図屏風」 部分
この鳥など完全に若冲風です。おそらくは結婚式のために描かれたのではないかということですが、まさかこの絢爛豪華な花鳥図に若冲モチーフが登場するとは思いませんでした。
典信の「唐子遊図屏風」、板橋名「チャイニーズ・キッズ」 や、チラシ表紙を飾る栄信の「花鳥図」、板橋名「青ざめた牡丹」も目を引きます。
狩野典信「チャイニーズ・キッズ」(*板橋名)「唐子遊図屏風」
それにしても、この背景の青の目立つ牡丹の絵に「青ざめた」と名付けた板橋のネーミングセンスには脱帽です。
右:狩野栄信「青ざめた牡丹」(*板橋名)「花鳥図」1812年
河鍋暁斎の「龍虎図屏風」を「ドラゴン・タイガー最終決戦」とするなど、いつもながらの奇抜なタイトルで見ると俄然、絵の印象が変わってきます。
またはじめの展示室はどちらかというと探幽を連想させるような淡麗でモノクロの作品で統一されているのに対し、二つ目の展示室では派手な色の金屏風がずらりと並んでいます。
展示室風景
細かい点かもしれませんが、そうしたメリハリのついた構成も巧みでした。
もちろん恒例のガラスケースなし、ウォークイン方式のお座敷完全露出展示もご覧の通りです。
お座敷展示風景
まさに目と鼻の先で作品を楽しめますが、その分ちょっとした注意も必要です。
狩野惟信「黄金色の雪景色」(*板橋名)「秋冬松竹梅小禽図屏風」
係りの方が案内して下さいますが、手荷物は靴を脱ぐスペースに一度置いてからご観覧下さい。
ちなみに木挽町の画所には弟子が5、60名おり、絵画の養成カリキュラムが行われていた他、酒盛りや文人画家に混じって浮世絵を描くことを禁止するなどの細かな規則もあったそうです。
「狩野派決定版/別冊太陽/平凡社」
また奥絵師に対する表絵師は、あくまでも奥絵師の分家、言わば一段下の家柄に過ぎません。実は行く前はてっきり奥より表の方が格が上かと思いこんでいました。
「もっと知りたい狩野派―探幽と江戸狩野派/東京美術」
館内撮影可能、入場無料の展示です。これまであまり意識しなかった知られざる狩野派を体系だって見るチャンスではないでしょうか。
5月6日まで開催されています。
「館蔵品展 奥絵師・木挽町狩野家~お殿さまに仕えた絵師たちの250年~」(@edo_itabashi) 板橋区立美術館
会期:4月7日(土)~5月6日(日)
休館:月曜日。但し4/30は開館し、5/1は休館。
時間:9:30~17:00
住所:板橋区赤塚5-34-27
交通:都営地下鉄三田線西高島平駅下車徒歩13分。東武東上線・東京メトロ有楽町線成増駅北口2番のりばより増17系統「高島平操車場」行き、「区立美術館」下車。
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