「KATAGAMI Style」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館
「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン」
4/6~5/27



三菱一号館美術館で開催中の「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン」へ行って来ました。

19世紀末より20世紀初頭の西洋美術界を席巻したジャポニスム、その受容の切っ掛けに伝統的な型紙があったことをご存知でしょうか。

ちょうど三菱一号館の旧館が建った19世紀末期、江戸小紋など布地の紋様を染めるための道具、つまり型紙が、西洋へ大量に渡りました。

それを手にした西洋の画家やデザイナーたちは型紙のデザイン性に魅了され、絵画にとどまらず、ガラスや陶磁器などの工芸品、またテキスタイルから家具、建築などの様々な作品に取り入れ、応用していきます。

そうした型紙と当時の西洋美術の関係を探るのが本展覧会の目的です。

構成は以下の通りでした。

第1章 型紙の世界:日本における型紙の歴史とその展開
第2章 型紙とアーツ・アンド・クラフツ:英米圏における型紙受容の諸展開
第3章 型紙とアール・ヌーヴォー:仏語圏における型紙受容の諸展開
第4章 型紙とユーゲントシュティール:独語圏における型紙受容の諸展開
第5章 現代に生きる「KATAGAMI」デザイン:型紙に由来する現代のデザイン


始まりは「型紙のおさらい」です。古くは鎌倉から室町期にはじまり、江戸中期以降、明治初期にかけて全盛期を迎えた型紙ですが、ここでは主に江戸期以降の型紙などを紹介しています。


「黄地霞に枝垂桜と流水草花に飛鳥模様衣装」19世紀 女子美術大学美術館

また目立つのは型紙とも関係の深い沖縄の紅型です。琉球王朝時代の紅型衣装とともに、その型紙なども展示されていました。

さて第2章以降が展覧会の核心です。

章立てからも明らかなように、型紙が各国、各地域でどのように取り入れられたのかを追いかけています。

ここで登場するのはイギリス、もしくはアメリカ、またフランス、ドイツ、そしてそれに対応するアーツ・アンド・クラフツ、アール・ヌーヴォー、ユーゲント・シュティールです。

いっぺんに並べてしまうと分かりにくいかもしれませんが、ようは各地域で型紙受容の展開が変わっていくのかを比較、検討するというわけでした。


ルイス・コンフォート・ティファニーおよび工房「ぶどう文の箱」1905-20年頃 メトロポリタン美術館

例えばイギリスでは主に産業芸術、もしくは装飾芸術の分野で型紙が取り入れられます。

百貨店の商品カタログをはじめ、アメリカではティファニー工房のランプや小箱などのモチーフに型紙のデザインが使われました。


「型紙 菊」 パリ装飾美術館

またピアズリーからワイルドの「サロメ」の挿絵、「クライマックス」に型紙の「菊」がほぼそのまま用いられてるのも見逃せません。


オーブリー・ピアズリー「クライマックス」 文化学園大学図書館

ピアズリーの妖艶な世界と型紙の紋様は不思議にも調和しています。

なお展示では型紙と関連する西洋の作品がほぼ隣合わせになっているのもポイントです。見比べて楽しみ、その変化を分かりやすい形で知ることが出来ました。

フランスのアール・ヌーヴォーにおける型紙は最も「変容」していると言えるのではないでしょうか。

ナビ派のドニの絵画「家族の肖像」に型紙の紋様が取り入れられているとは思いもよりません。またガレ、ラリックなども型紙を基盤に、これまでにはない和様とも言える作品を作りだしました。

ドイツの型紙受容は非常にデザイン的でかつ抽象的です。


「型紙 乱菊」リンデン博物館、シュトゥットガルト

ドレスデンの工芸博物館には世界最大、約1万6千枚もの型紙コレクションがあるそうですが、型紙は当時の工芸改革運動やユーゲントシュティールと密接に結びつき、幅広く展開しました。

ドイツの型紙デザインで目立つのはオールオーバーなモチーフです。

 
左:アーデルベルト・ニーマイヤー「花器」1907-08年 ニンフェンブルク磁器製作所
右「型紙 瓢箪」ヴュルテンベルク州立博物館、シュトゥットガルト


型紙「瓢箪」からのアーデルベルト・ニーマイヤーの「花器」、また型紙「変り鹿の子」とモーザーの「パン籠」などはその一例ではないでしょうか。


「型紙 変り鹿の子」ハンブルク工芸博物館

型紙からコンポジション絵画までを展開するドイツの高いデザイン力には感心させられました。


コロマン・モーザー「パン籠」1910年 アーゼンバウム・コレクション

ラストは現在の型紙デザインです。三菱一号館お得意のテーブルセット再現展示など、家具調度品などがいくつか紹介されています。

また最後の最後、行き止まりの小部屋が非常にうまく使われていました。こちらは是非会場でご覧下さい。

ジャポニスムの展示はこれまでにも多数ありましたが、型紙にスポットを当てた展示はそうなかったかもしれません。


ペーター・ベーレンス「接吻」1898年 豊田市美術館

意外な切り口から見せる西洋の世紀末芸術、企画力が光る展覧会でした。

GW中に出かけましたが、会場はかなり賑わっていました。また一部時間帯には入場制限もかかっていたようです。作品数もかなりあります。時間に余裕を持ってお出かけください。

展覧会の公式サイトが充実しています。展示内容についての記述も豊富ですが、紋様をダウンロード出来たり、グッズの紹介と盛りだくさんです。あわせてご覧ください。

「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン」公式サイト@katagami2012

5月27日までの開催です。 なお本展は東京展終了後、京都国立近代美術館(7/7~8/19)と三重県立美術館(8/28~10/14)へと巡回します。

「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン」 三菱一号館美術館
会期:4月6日(金)~5月27日(日)
休館:毎週月曜日(但し4月30日と5月21日は開館)
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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