都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「川内倫子展」 東京都写真美術館
東京都写真美術館
「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」
5/12~7/16

東京都写真美術館で開催中の「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」へ行ってきました。
2002年に第27回木村伊兵衛写真賞を受賞して以降、国内外のギャラリーなどでも展示を重ねてきた写真家の川内倫子ですが、意外なことに首都圏の美術館では初となる個展が始まりました。
出品は2011年に発表された「イルミナンス」の他、最新作「あめつち」や「影を見る」などの写真、もしくは映像、計78点です。
必ずしも広いとはいえない写美の空間ではありますが、川内の制作の『今』を知ることの出来る内容となっていました。
展示は「イルミナンス」からはじまります。光の「照度」を意味するというこのシリーズですが、確かにいずれの作品からも川内の光に対するセンス、またその美意識に感心させられます。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2007年
冒頭の一枚、おそらくは歩道橋の階段を上がる中学生の姿を捉えた作品では、中央に光の粒が帯状に連なることで、まるで祭壇のような神々しさを感じないでしょうか。
またバイクのサドルを捉えた作品にも要注目です。サドルのミラーには強い光が反射し、幻影のような背景の闇と美しいコントラストを描いています。
半ばトリミング的にモチーフを捉えることで、その背景となる空間や時間の意味を排し、事物そのものから放たれる色と光を、驚くほど高い純度を持って浮かび上がらせていました。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2009年
なお「イルミナンス」では二面のスクリーンを用いた映像も見逃せません。
ここで川内は同一の映像を二つの画面へタイミングをずらして映していますが、それが不思議にも写真作品では全体としてあえて除かれていた一定の物語性を与えることに成功しています。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2009年
渋谷のスクランブルに集う人々と巣に群れるアリの大群、ミラーボールに映る光と輝かしい夕陽、そしてでさばかれる食肉とパワーショベルが地面を掘る様子などが左右に写されていましたが、それら本来的に関係のない光景が、あたかも何からの繋がりを持つかのように見えてくるのではないでしょうか。
日常的でかつ一見するところ取り合わない個々の素材が、組み合わされることで意外性のある新たなイメージが生み出されます。それこそまさに川内が海外でよく指摘されるという「俳句」の世界に近いのではないかと思いました。

「無題」シリーズ「あめつち」より 2012年
さて「イルミナンス」を超え、35ミリフィルムの「イリディッセンス」などを経由し、最期に待ち構えているのが新作の「あめつち」と「影を見る」です。
まずはやや暗がりのスペースに向かい合うようにして映された二面の映像作品に目が向くのではないでしょうか。
「あめつち」では阿蘇の野焼きの様子が映されているのに対し、「影を見る」では冬の湖の上を回転しながら渡り鳥の光景が淡々と映し出されています。

「無題」シリーズ「あめつち」より 2012年
また「あめつち」の写真では野焼きとともに神楽、またプラネタリウムの星空などの軌跡が取り込まれています。
燃え盛る炎に儀式、そして水辺に大地に生き物、また空を超えた宇宙へと向かう光景は、まさに我々を取り巻く万物そのものに他なりませんでした。
「Illuminance/川内倫子/フォイル」
身近な事物を切り取り、そこに潜む輝きを取り出しながら、自然や生き物と響きあわせることで作られる写真の一大叙事詩とも言えるスケールの大きな世界、是非とも味わって下さい。
7月16日までの開催です。これはおすすめします。
「照度 あめつち 影を見る/川内倫子/青幻舎」
「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」 東京都写真美術館
会期:5月12日 (土) ~ 7月16日 (月・祝)
休館:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館。)
時間:10:00~18:00 *毎週木・金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで。)
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」
5/12~7/16

東京都写真美術館で開催中の「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」へ行ってきました。
2002年に第27回木村伊兵衛写真賞を受賞して以降、国内外のギャラリーなどでも展示を重ねてきた写真家の川内倫子ですが、意外なことに首都圏の美術館では初となる個展が始まりました。
出品は2011年に発表された「イルミナンス」の他、最新作「あめつち」や「影を見る」などの写真、もしくは映像、計78点です。
必ずしも広いとはいえない写美の空間ではありますが、川内の制作の『今』を知ることの出来る内容となっていました。
展示は「イルミナンス」からはじまります。光の「照度」を意味するというこのシリーズですが、確かにいずれの作品からも川内の光に対するセンス、またその美意識に感心させられます。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2007年
冒頭の一枚、おそらくは歩道橋の階段を上がる中学生の姿を捉えた作品では、中央に光の粒が帯状に連なることで、まるで祭壇のような神々しさを感じないでしょうか。
またバイクのサドルを捉えた作品にも要注目です。サドルのミラーには強い光が反射し、幻影のような背景の闇と美しいコントラストを描いています。
半ばトリミング的にモチーフを捉えることで、その背景となる空間や時間の意味を排し、事物そのものから放たれる色と光を、驚くほど高い純度を持って浮かび上がらせていました。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2009年
なお「イルミナンス」では二面のスクリーンを用いた映像も見逃せません。
ここで川内は同一の映像を二つの画面へタイミングをずらして映していますが、それが不思議にも写真作品では全体としてあえて除かれていた一定の物語性を与えることに成功しています。

「無題」シリーズ「Illuminance」より 2009年
渋谷のスクランブルに集う人々と巣に群れるアリの大群、ミラーボールに映る光と輝かしい夕陽、そしてでさばかれる食肉とパワーショベルが地面を掘る様子などが左右に写されていましたが、それら本来的に関係のない光景が、あたかも何からの繋がりを持つかのように見えてくるのではないでしょうか。
日常的でかつ一見するところ取り合わない個々の素材が、組み合わされることで意外性のある新たなイメージが生み出されます。それこそまさに川内が海外でよく指摘されるという「俳句」の世界に近いのではないかと思いました。

「無題」シリーズ「あめつち」より 2012年
さて「イルミナンス」を超え、35ミリフィルムの「イリディッセンス」などを経由し、最期に待ち構えているのが新作の「あめつち」と「影を見る」です。
まずはやや暗がりのスペースに向かい合うようにして映された二面の映像作品に目が向くのではないでしょうか。
「あめつち」では阿蘇の野焼きの様子が映されているのに対し、「影を見る」では冬の湖の上を回転しながら渡り鳥の光景が淡々と映し出されています。

「無題」シリーズ「あめつち」より 2012年
また「あめつち」の写真では野焼きとともに神楽、またプラネタリウムの星空などの軌跡が取り込まれています。
燃え盛る炎に儀式、そして水辺に大地に生き物、また空を超えた宇宙へと向かう光景は、まさに我々を取り巻く万物そのものに他なりませんでした。

身近な事物を切り取り、そこに潜む輝きを取り出しながら、自然や生き物と響きあわせることで作られる写真の一大叙事詩とも言えるスケールの大きな世界、是非とも味わって下さい。
【関連イベント】
対談「内藤礼(現代美術作家)×川内倫子」
日時:2012年5月25日(金) 18:30~20:00
対談「原田郁子(音楽家)×川内倫子」
日時:2012年6月22日(金) 18:30~20:00
ともに会場は1階ホール(定員190名)。要展覧会半券。受付は先着順で当日午前10時より1階受付にて入場整理券を配布。
対談「内藤礼(現代美術作家)×川内倫子」
日時:2012年5月25日(金) 18:30~20:00
対談「原田郁子(音楽家)×川内倫子」
日時:2012年6月22日(金) 18:30~20:00
ともに会場は1階ホール(定員190名)。要展覧会半券。受付は先着順で当日午前10時より1階受付にて入場整理券を配布。
7月16日までの開催です。これはおすすめします。

「川内倫子展 照度 あめつち 影を見る」 東京都写真美術館
会期:5月12日 (土) ~ 7月16日 (月・祝)
休館:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館。)
時間:10:00~18:00 *毎週木・金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで。)
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
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