都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「日本橋~描かれたランドマークの400年~」 江戸東京博物館
江戸東京博物館
「日本橋~描かれたランドマークの400年~」
5/26~7/16
江戸東京博物館で開催中の「日本橋~描かれたランドマークの400年~」のプレスプレビューに参加してきました。
まさに日本の中心、全国道路網の始点としても知られる江戸・東京の日本橋。
「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 歌川広重 天保(1830~43)中頃 江戸東京博物館
初めて架橋されたのが1603年、つまり今から約400年前のことですが、その江戸から昭和へと至る長い歴史を浮世絵の他、資料などで辿る展覧会が江戸東京博物館で始まりました。
第1章 都市・江戸の橋
第2章 日本橋を描く~江戸城、富士山、魚河岸と~
第3章 文明開化と日本橋
第4章 石で造られた日本橋
始まりはまさに日本の起点、街道始まりとして描かれた日本橋の様々な絵図です。
ここでいきなり本展の目玉が登場します。それがこの暗がりの展示室に置かれた「隅田川風物図巻」です。
「隅田川風物絵巻」展示室風景
日本橋川から隅田川に合流し、浅草方向へと至る川の様子が、何と全長10メートルの長大な図巻に描かれていますが、ともかくも見るべきは夜景の表現に他なりません。
「隅田川風物絵巻 両国橋部分」 筆者不詳 江戸中期・18世紀中頃 江戸東京博物館
というのも実はこの絵巻、一部を切り抜き、薄い紙を張り合わせることで、裏から光を当てるとその部分が輝くという「影からくり絵」と呼ばれる細工が施されています。そしてそれを今回は特殊な照明効果によって再現しているわけなのです。
「隅田川風物絵巻 両国橋部分・夜景」 筆者不詳 江戸中期・18世紀中頃 江戸東京博物館
隅田川といえば花火、夜空に光り輝く大輪の花も鮮やかに浮かび上がります。まさに百聞は一見にしかずです。また描写自体もかなり細かく、それこそ江戸の賑わいと情緒を存分に楽しむことが出来ます。昼と夜のドラマテックな対比に見惚れました。
さて一言に江戸時代の日本橋を描いた絵図といえども、その表現は思いの外に多様です。
第2章「日本橋を描く~江戸城、富士山、魚河岸と~」展示室風景
江戸時代、日本橋を描く際には主に三点、江戸城、富士山、そして魚河岸のモチーフと組み合わせることが好まれていました。
「冨嶽三十六景 江戸日本橋」 葛飾北斎 天保2~4年(1831~3)頃 江戸東京博物館
展示ではそうした日本橋の言わば「三様態」を広重、北斎らの浮世絵などで丹念に紹介しています。
言い忘れましたが、展示の主役を張るのはこうした浮世絵の数々です。実は本展は全て江戸東京博物館の館蔵品で構成されていますが、浮世絵ファンとしても見るべき点の多い展覧会と言えるのではないでしょうか。
さて明治維新を迎えると一変、日本橋もいわゆる近代化の波が押し寄せていきます。
「東京日本橋風景」 歌川芳虎 明治3年(1870) 江戸東京博物館
行き交う人々の洋装はもちろん、人力車に鉄道馬車などと、当然ながら作品中にもこれまでにはなかったモチーフが登場します。
「人力車」 明治期
今でこそ観光地で人気の人力車が日本橋発祥であったことをご存知でしょうか。会場では実際に明治時代に使われていた人力車も展示されていました。
最後は石造りの日本橋です。江戸時代の日本橋はもちろん木製でしたが、明治44年に架け直され、今へと続く石造りの橋へと生まれ変わりました。
「日本橋(夜明)」 川瀬巴水 昭和15年(1940) 江戸東京博物館
在りし日の日本橋を伝える作品として一推しなのが川瀬巴水の「日本橋(夜明け)」です。
橋こそ100年前と同じものの、今は上に高速道路が被さっていますが、まだそれがなかった頃の橋の全景です。美しい空色、そして巴水ブルーの水面、また堂々たる欄干の描写など、巴水ファンの私としては何度見ても心ひかれます。ここは見入りました。
さて展覧会会場を出た後、ショップの前に超・重要なサプライズ企画展示が待ち構えているのを忘れてはなりません。
実は本展にあわせ、画家の山口晃さんが日本橋をモチーフとした木版画を制作しています。それがこうして展示されているわけです。
「新東都名所 東海道中 日本橋改」 山口晃 2012年
意外なことに山口さんが木版を手がけられたのは初めてです。またショップでは限定150部で木版作品も販売されています。
「新東都名所 東海道中 日本橋改」を前に解説を行う山口晃さん
橋の上の高速道路の上にあえてもう一つ、江戸時代の日本橋風の太鼓橋を架けるというこの仕掛け、山口さんならではの機知に富んだ作品だと言えるのではないでしょうか。また「新東都名所」のシリーズ化計画もあるそうです。「出口の先に山口晃さん。」を合い言葉に、是非ともお見逃しなきようご注意ください。
展覧会グッズ、ギボちゃん。
江戸博公式マスコットのギボちゃん(@edohakugibochan)がキャプションの至る所に登場しています。このギボちゃんこそ日本橋の欄干の擬宝珠をイメージしたものですが、言うまでもなく常設にも江戸時代の橋の半分が実物大で復元されています。日本橋展を見た後に改めて常設の日本橋を渡るというのも楽しいかもしれません。
「日本橋展」会場内での林家三平、国分佐智子ご夫妻。本展の音声ガイドを担当されています。
誰しもが知る日本橋、しかしながら意外と細かには知らないその歴史を丁寧にひも解く好企画でした。
7月16日まで開催されています。
「日本橋~描かれたランドマークの400年~」 江戸東京博物館
会期:5月26日(土)~7月16日(月・祝)
休館:月曜日(但し7/16は開館)
時間:9:30~17:30 *土曜日は19:30まで。
場所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「日本橋~描かれたランドマークの400年~」
5/26~7/16
江戸東京博物館で開催中の「日本橋~描かれたランドマークの400年~」のプレスプレビューに参加してきました。
まさに日本の中心、全国道路網の始点としても知られる江戸・東京の日本橋。
「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」 歌川広重 天保(1830~43)中頃 江戸東京博物館
初めて架橋されたのが1603年、つまり今から約400年前のことですが、その江戸から昭和へと至る長い歴史を浮世絵の他、資料などで辿る展覧会が江戸東京博物館で始まりました。
第1章 都市・江戸の橋
第2章 日本橋を描く~江戸城、富士山、魚河岸と~
第3章 文明開化と日本橋
第4章 石で造られた日本橋
始まりはまさに日本の起点、街道始まりとして描かれた日本橋の様々な絵図です。
ここでいきなり本展の目玉が登場します。それがこの暗がりの展示室に置かれた「隅田川風物図巻」です。
「隅田川風物絵巻」展示室風景
日本橋川から隅田川に合流し、浅草方向へと至る川の様子が、何と全長10メートルの長大な図巻に描かれていますが、ともかくも見るべきは夜景の表現に他なりません。
「隅田川風物絵巻 両国橋部分」 筆者不詳 江戸中期・18世紀中頃 江戸東京博物館
というのも実はこの絵巻、一部を切り抜き、薄い紙を張り合わせることで、裏から光を当てるとその部分が輝くという「影からくり絵」と呼ばれる細工が施されています。そしてそれを今回は特殊な照明効果によって再現しているわけなのです。
「隅田川風物絵巻 両国橋部分・夜景」 筆者不詳 江戸中期・18世紀中頃 江戸東京博物館
隅田川といえば花火、夜空に光り輝く大輪の花も鮮やかに浮かび上がります。まさに百聞は一見にしかずです。また描写自体もかなり細かく、それこそ江戸の賑わいと情緒を存分に楽しむことが出来ます。昼と夜のドラマテックな対比に見惚れました。
さて一言に江戸時代の日本橋を描いた絵図といえども、その表現は思いの外に多様です。
第2章「日本橋を描く~江戸城、富士山、魚河岸と~」展示室風景
江戸時代、日本橋を描く際には主に三点、江戸城、富士山、そして魚河岸のモチーフと組み合わせることが好まれていました。
「冨嶽三十六景 江戸日本橋」 葛飾北斎 天保2~4年(1831~3)頃 江戸東京博物館
展示ではそうした日本橋の言わば「三様態」を広重、北斎らの浮世絵などで丹念に紹介しています。
言い忘れましたが、展示の主役を張るのはこうした浮世絵の数々です。実は本展は全て江戸東京博物館の館蔵品で構成されていますが、浮世絵ファンとしても見るべき点の多い展覧会と言えるのではないでしょうか。
さて明治維新を迎えると一変、日本橋もいわゆる近代化の波が押し寄せていきます。
「東京日本橋風景」 歌川芳虎 明治3年(1870) 江戸東京博物館
行き交う人々の洋装はもちろん、人力車に鉄道馬車などと、当然ながら作品中にもこれまでにはなかったモチーフが登場します。
「人力車」 明治期
今でこそ観光地で人気の人力車が日本橋発祥であったことをご存知でしょうか。会場では実際に明治時代に使われていた人力車も展示されていました。
最後は石造りの日本橋です。江戸時代の日本橋はもちろん木製でしたが、明治44年に架け直され、今へと続く石造りの橋へと生まれ変わりました。
「日本橋(夜明)」 川瀬巴水 昭和15年(1940) 江戸東京博物館
在りし日の日本橋を伝える作品として一推しなのが川瀬巴水の「日本橋(夜明け)」です。
橋こそ100年前と同じものの、今は上に高速道路が被さっていますが、まだそれがなかった頃の橋の全景です。美しい空色、そして巴水ブルーの水面、また堂々たる欄干の描写など、巴水ファンの私としては何度見ても心ひかれます。ここは見入りました。
さて展覧会会場を出た後、ショップの前に超・重要なサプライズ企画展示が待ち構えているのを忘れてはなりません。
実は本展にあわせ、画家の山口晃さんが日本橋をモチーフとした木版画を制作しています。それがこうして展示されているわけです。
「新東都名所 東海道中 日本橋改」 山口晃 2012年
意外なことに山口さんが木版を手がけられたのは初めてです。またショップでは限定150部で木版作品も販売されています。
「新東都名所 東海道中 日本橋改」を前に解説を行う山口晃さん
橋の上の高速道路の上にあえてもう一つ、江戸時代の日本橋風の太鼓橋を架けるというこの仕掛け、山口さんならではの機知に富んだ作品だと言えるのではないでしょうか。また「新東都名所」のシリーズ化計画もあるそうです。「出口の先に山口晃さん。」を合い言葉に、是非ともお見逃しなきようご注意ください。
展覧会グッズ、ギボちゃん。
江戸博公式マスコットのギボちゃん(@edohakugibochan)がキャプションの至る所に登場しています。このギボちゃんこそ日本橋の欄干の擬宝珠をイメージしたものですが、言うまでもなく常設にも江戸時代の橋の半分が実物大で復元されています。日本橋展を見た後に改めて常設の日本橋を渡るというのも楽しいかもしれません。
「日本橋展」会場内での林家三平、国分佐智子ご夫妻。本展の音声ガイドを担当されています。
誰しもが知る日本橋、しかしながら意外と細かには知らないその歴史を丁寧にひも解く好企画でした。
7月16日まで開催されています。
「日本橋~描かれたランドマークの400年~」 江戸東京博物館
会期:5月26日(土)~7月16日(月・祝)
休館:月曜日(但し7/16は開館)
時間:9:30~17:30 *土曜日は19:30まで。
場所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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