「石川真生―沖縄を撮る」 横浜市民ギャラリーあざみ野

横浜市民ギャラリーあざみ野
「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る」
2/2-2/24



横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る 」へ行ってきました。

横浜はあざみ野発、現代の写真表現を紹介する「あざみ野フォト・アニュアル」。近年、年に一回、写真家を個展形式で紹介してきましたが、今回選ばれたのは石川真生。1953年に沖縄で生まれた沖縄の写真家です。


「石川真生―沖縄を撮る」展示室風景

石川は占領下の沖縄でデモに参加。そこで火炎瓶にぶつかって焼死した機動隊員の姿を目撃した体験から、写真家になることを決意。以来、一貫して沖縄を撮り続けました。

展示では石川のデビュー作の「熱き日々 in オキナワ」(1975-77年)と初公開の近作「沖縄芝居」(1989-92年)、そして同じく沖縄出身の森花との共作で最新作でもある「森花-夢の世界」(2012年)の三シリーズを紹介。過去から今へ。終始、沖縄と向き合いながらも、表現を変化させてきた石川の世界を知ることが出来ました。

さてそのデビュー作の「熱き日々 in オキナワ」から。

1975年、まだ22歳だった石川は、ちょうどベトナムから帰還してきた米兵の写真を撮ろうと思い、黒人専用のバーで働きながら、黒人米兵やホステスと生活を共にします。


「熱き日々 in オキナワ」1975-77年、ゼラチン・シルバープリント

賑やかなバーで酒を飲む人々、交わる男女。そして熱気に満ちた日常。それは石川の「黒人を愛して何が悪い。セックスを謳歌して何が悪い。」の言葉に集約されているのではないでしょうか。

ちなみにこの一連のシリーズ、80年代に出版された際、被写体の女性から抗議を受け、お蔵入りなってしまったとか。その時にプリントはおろか、ネガも渡してしまったため、作品は世に出ることもありませんでしたが、実は何と父親が一部のプリントを秘蔵。それが今回、公開されることになりました。


「熱き日々 in オキナワ」1975-77年、ゼラチン・シルバープリント

よって一部のプリントは変色していたり、端が破れていたりと良好ではありません。しかしながらここに捉えられたのは確かに石川が身体をもって入り込んだ沖縄の深部。ドロドロとしながらも生き生きとした人間ドラマを写真からも感じることが出来ます。

作品はプリント25点、スライド90点超。全てモノクロームです。どことなく退廃的でもあり熱気に満ちた70年代の沖縄の日常。力強さと儚さとが同居する瞬間。石川は親しみのある眼差しでもって彼ら彼女らを捉えています。実に見応えがありました。

さて本展、石川という一人の写真家の個展ながら、その幅広い表現には驚かされるものがあります。最新作の「森花-夢の世界」へと進みましょう。


「森花-夢の世界」2012年、インクジェットプリント

ここに表れたのは艶やかでかつシュールな夢の国。まだ20代の沖縄のアーティスト、森花が見た夢を自身で演じながらセットで再現。それを石川が撮影していくという共作シリーズです。


「石川真生―沖縄を撮る」展示室風景

しかしながら夢の多様なこと。性に痛みもストレート。またメッセージも強烈です。

後ろを向いた両親に足枷で繋がれた「両親」、そして浴槽で愛する男を殺し、『女にとって愛とは独り占めすることだ。』との言葉を残す「浴槽」、さらには『私』を食べる東京の食卓を描いた「食卓」など。舞台はもちろん全て沖縄。

時に猟奇的なまでの夢は不条理な現実世界も告発します。

「熱き日々」で沖縄の女性の生活を捉えた石川はさらに夢にまで潜り込みます。被写体との密接な関わりは作品に迫真性をもたらしました。


「沖縄芝居」1989-1992年 インクジェットプリント

また他には沖縄の伝統的な芝居の役者を写したシリーズも。なお石川は先に亡くなられた東松照明のワークショップの一期生、その後も深く関わりを持ち続けたいわゆるお弟子さんでもあります。

会場では亡くなる前に東松が石川について語ったインタビュー映像も。残念ではありますが、今となっては大変に貴重です。


石川真生さん(左)と森花さん(右)

お邪魔した初日パーティー時に森花さんとポーズをとっていただきました。石川さんご本人も作品同様にエネルギッシュ!また気さくでお茶目な方です。ちなみに石川さんは何と会期中、連日、会場におられるとか。お話を伺うチャンスです!

沖縄の歌姫 仲田まさえがおくる うちなーの歌と踊り】(石川真生展関連イベント)
日時:2月16日(土)15:30開演 (15時開場、17時頃終演予定)
会場:アートフォーラムあざみ野 エントランスロビー
出演:仲田まさえ
 *予約不要。入場無料、入退場自由。


「平成24年度横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」

ちなみに同ギャラリーでは「写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」もあわせて開催。横浜の誇る19世紀アメリカの写真、カメラコレクションを楽しむことも出来ます。


「写真コレクション展 アメリカ写真の黎明」展示室風景

沖縄の生活、文化、そして何よりも人と向き合い続けた石川。その人生の蓄積に裏打ちされた写真は説得力がありました。

「石川真生写真集 FENCES,OKINAWA (沖縄写真家シリーズ 琉球烈像/未来社」

2月24日まで開催されています。入場は無料でした。

「あざみ野 フォト・アニュアル 石川真生―沖縄を撮る」 横浜市民ギャラリーあざみ野@artazamino
会期:2月2日(土)~2月24日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
交通:東急田園都市線あざみ野駅東口徒歩5分、横浜市営地下鉄ブルーラインあざみ野駅1番出口徒歩5分。
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