都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「オスカー・ニーマイヤー展」 東京都現代美術館
東京都現代美術館
「オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」
7/18-10/12
東京都現代美術館で開催中の「オスカー・ニーマイヤー展」を見てきました。
ブラジルの首都ブラジリアの主要建築の設計に携わり、104歳で亡くなるまで旺盛な活動を行ったという建築家、オスカー・ニーマイヤー(1907-2012)。日本では初めての大規模な個展だそうです。
さてニーマイヤー、もちろん建築家ではありますが、もはや都市設計家と言うべき壮大なスケールにて様々な作品を展開しています。
「パンプーリャ・コンプレックス(手前:ダンスホール)」 1943年 縮尺1/50
リオデジャネイロの北400キロの内陸部にあるベロオリゾンチのプロジェクトです。名はパンプーリャ・コンプレックス。カジノ、ダンスホール、ヨットクラブ、教会堂、そして当時の市長の邸宅で構成された計画。ニーマイヤーのキャリア初期の代表的な作品としても知られています。
「パンプーリャ・コンプレックス サン・フランシスコ・デ・アシス教会」 1943年 縮尺1/50
うちなだらかな曲線を活かしたのがダンスホール。ホール部分の円形と、にょろにょろとうねりながら曲線を描く屋根のフォルムも特徴的です。いずれも人造湖を中核にした建築物。ダンスホールしかり水辺の景観を効果的に活かしています。
「カノアスの邸宅(ニーマイヤー自邸)」 1953年 リオデジャネイロ、ブラジル 縮尺1/20
曲線はニーマイヤーの自邸にも取り込まれました。今度は山の麓、リオデジャネイロ南部のカノアスという場所にある邸宅です。斜面に埋め込まれるようにして建ち、南には海も望めるというロケーション。木が生い茂り、自然に囲まれた環境でもあったそうです。屋根の曲線は不定形で自在。どこかアメーバが四方に触手を広げているようでもあります。
「国際連合本部ビル」 1952年 ニューヨーク、アメリカ 縮尺1/200
国際連合本部ビルの一部も彼の手によるものです。同ビルは国連のコンセプトに沿って各国の著名建築家の総体として計画された建築物。ニーマイヤーとコルビュジエの共同案が採用されました。ともかく直方体の高層ビル棟が目を引きますが、よく見れば低層の議会棟にはドームとともに、緩やかな曲面が屋根に取り込まれていることも分かります。これぞニーマイヤーらしさと言うべきところなのでしょうか。
ブラジリア(ニーマイヤー設計建築物一覧)
集大成はブラジリアの設計です。僅か3年で作られたという人工都市ブラジリア。言うまでもなくブラジルの首都です。マスタープランをニーマイヤーの師であるルシオ・コスタが策定し、ニーマイヤーが殆ど全ての公共建築を設計しました。
「ブラジリア大聖堂」 1960年 ブラジル 縮尺1/10
大聖堂、国立美術館、裁判所、国民会議議事堂、大統領府に大統領官邸。同国の中枢と呼ぶべき施設をニーマイヤーが手がけています。
「アウヴォラーダ宮(大統領官邸)の柱」 1960年 ブラジル 縮尺1/2.67
ブラジリア大聖堂の10分の1スケールの模型が展示されていました。やはりここでも目を引くのは曲線です。力強く下から上へと束になって突き出るように進んでいます。ほか大統領官邸の柱なども並びます。まるで鋭い剣のようです。柱というよりもそれ自体がモニュメントのようでもあります。
イワン・バーン「ブラジリア」 2010年
ブラジリアの眺望写真はどうでしょうか。やはり湖に面しての壮大なパノラマ。地平線は無限の彼方まで広がっています。思わず一度行ってみたくなりました。
「ニテロイ現代美術館」 1996年 ニテロイ、ブラジル *写真:レオナルド・フィノッティ 2007年
ニテロイ現代美術館も個性的です。場所はリオデジャネイロの対岸。完成は1996年です。ニーマーヤー自身は「花」と呼んでいるそうですが、キャプションにもあるようにやはり宇宙船のようにも見えます。水辺に面して建つ円形の施設はそれこそスタートレックに出てくる連邦宇宙船の円盤部のようでした。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
アトリウムのスペースも効果的に利用しています。サンパウロのイビラプエラ公園です。実際の広さは180ヘクタール。同市の創設400年を記念して作られました。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
木々の立ち並ぶ市民公園ではありますが、中には産業館や講堂、オカと呼ばれる展示会場など5つの建物があります。遊歩道はやはり曲線を描きながらのびていました。「マティスの切り絵」とキャプションにありましたが、確かに人体のフォルムを抽象化したような構造が面白い。また展示では靴を脱いで上にあがることが出来ます。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
寝転がって視点を低くしてみました。するとさも公園の人々と同じような視覚体験を味わえます。細い円柱による遊歩道。さすがに深呼吸とまではいきませんが、木立も並び、気持ちが良いもの。アトリウムフロア全面を使っています。スケールとしては30分の1。ピクトグラムの模型も臨場感を高めてくれました。
マルセウ・ゴーテロー「オスカー・ニーマイヤー」他 1958年
ちょうど目黒の村野藤吾展にて精巧な建築模型を見た後だったせいか、模型の質がややアバウトな感は否めませんでしたが、それでもニーマイヤーの弩級なまでのスケールを知るには格好の展示だと言えるのではないでしょうか。
会場内ではドキュメンタリー映像、「20世紀最後の巨匠 オスカー・ニーマイヤー」(2001年制作)が上映されていました。全60分です。それぞれ10:15、11:20、12:25、13:30、14:35、15:40、16:45にスタートします。鑑賞希望の方は時間にあわせて出かけられることをおすすめします。
10月12日まで開催されています。
「オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:7月18日(土)~10月12日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/20、9/21、10/12は開館。7/21、9/24は休館。
時間:10:00~18:00。
*7~9月の金曜日は21時まで開館。
*入場は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生・65歳以上800(640)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。同時開催の「ここはだれの場所?」、「きかんしゃトーマスとなかまたち」との2展、3展セット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
「オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」
7/18-10/12
東京都現代美術館で開催中の「オスカー・ニーマイヤー展」を見てきました。
ブラジルの首都ブラジリアの主要建築の設計に携わり、104歳で亡くなるまで旺盛な活動を行ったという建築家、オスカー・ニーマイヤー(1907-2012)。日本では初めての大規模な個展だそうです。
さてニーマイヤー、もちろん建築家ではありますが、もはや都市設計家と言うべき壮大なスケールにて様々な作品を展開しています。
「パンプーリャ・コンプレックス(手前:ダンスホール)」 1943年 縮尺1/50
リオデジャネイロの北400キロの内陸部にあるベロオリゾンチのプロジェクトです。名はパンプーリャ・コンプレックス。カジノ、ダンスホール、ヨットクラブ、教会堂、そして当時の市長の邸宅で構成された計画。ニーマイヤーのキャリア初期の代表的な作品としても知られています。
「パンプーリャ・コンプレックス サン・フランシスコ・デ・アシス教会」 1943年 縮尺1/50
うちなだらかな曲線を活かしたのがダンスホール。ホール部分の円形と、にょろにょろとうねりながら曲線を描く屋根のフォルムも特徴的です。いずれも人造湖を中核にした建築物。ダンスホールしかり水辺の景観を効果的に活かしています。
「カノアスの邸宅(ニーマイヤー自邸)」 1953年 リオデジャネイロ、ブラジル 縮尺1/20
曲線はニーマイヤーの自邸にも取り込まれました。今度は山の麓、リオデジャネイロ南部のカノアスという場所にある邸宅です。斜面に埋め込まれるようにして建ち、南には海も望めるというロケーション。木が生い茂り、自然に囲まれた環境でもあったそうです。屋根の曲線は不定形で自在。どこかアメーバが四方に触手を広げているようでもあります。
「国際連合本部ビル」 1952年 ニューヨーク、アメリカ 縮尺1/200
国際連合本部ビルの一部も彼の手によるものです。同ビルは国連のコンセプトに沿って各国の著名建築家の総体として計画された建築物。ニーマイヤーとコルビュジエの共同案が採用されました。ともかく直方体の高層ビル棟が目を引きますが、よく見れば低層の議会棟にはドームとともに、緩やかな曲面が屋根に取り込まれていることも分かります。これぞニーマイヤーらしさと言うべきところなのでしょうか。
ブラジリア(ニーマイヤー設計建築物一覧)
集大成はブラジリアの設計です。僅か3年で作られたという人工都市ブラジリア。言うまでもなくブラジルの首都です。マスタープランをニーマイヤーの師であるルシオ・コスタが策定し、ニーマイヤーが殆ど全ての公共建築を設計しました。
「ブラジリア大聖堂」 1960年 ブラジル 縮尺1/10
大聖堂、国立美術館、裁判所、国民会議議事堂、大統領府に大統領官邸。同国の中枢と呼ぶべき施設をニーマイヤーが手がけています。
「アウヴォラーダ宮(大統領官邸)の柱」 1960年 ブラジル 縮尺1/2.67
ブラジリア大聖堂の10分の1スケールの模型が展示されていました。やはりここでも目を引くのは曲線です。力強く下から上へと束になって突き出るように進んでいます。ほか大統領官邸の柱なども並びます。まるで鋭い剣のようです。柱というよりもそれ自体がモニュメントのようでもあります。
イワン・バーン「ブラジリア」 2010年
ブラジリアの眺望写真はどうでしょうか。やはり湖に面しての壮大なパノラマ。地平線は無限の彼方まで広がっています。思わず一度行ってみたくなりました。
「ニテロイ現代美術館」 1996年 ニテロイ、ブラジル *写真:レオナルド・フィノッティ 2007年
ニテロイ現代美術館も個性的です。場所はリオデジャネイロの対岸。完成は1996年です。ニーマーヤー自身は「花」と呼んでいるそうですが、キャプションにもあるようにやはり宇宙船のようにも見えます。水辺に面して建つ円形の施設はそれこそスタートレックに出てくる連邦宇宙船の円盤部のようでした。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
アトリウムのスペースも効果的に利用しています。サンパウロのイビラプエラ公園です。実際の広さは180ヘクタール。同市の創設400年を記念して作られました。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
木々の立ち並ぶ市民公園ではありますが、中には産業館や講堂、オカと呼ばれる展示会場など5つの建物があります。遊歩道はやはり曲線を描きながらのびていました。「マティスの切り絵」とキャプションにありましたが、確かに人体のフォルムを抽象化したような構造が面白い。また展示では靴を脱いで上にあがることが出来ます。
「イビラプエラ公園」 1954年 サンパウロ、ブラジル
寝転がって視点を低くしてみました。するとさも公園の人々と同じような視覚体験を味わえます。細い円柱による遊歩道。さすがに深呼吸とまではいきませんが、木立も並び、気持ちが良いもの。アトリウムフロア全面を使っています。スケールとしては30分の1。ピクトグラムの模型も臨場感を高めてくれました。
マルセウ・ゴーテロー「オスカー・ニーマイヤー」他 1958年
ちょうど目黒の村野藤吾展にて精巧な建築模型を見た後だったせいか、模型の質がややアバウトな感は否めませんでしたが、それでもニーマイヤーの弩級なまでのスケールを知るには格好の展示だと言えるのではないでしょうか。
会場内ではドキュメンタリー映像、「20世紀最後の巨匠 オスカー・ニーマイヤー」(2001年制作)が上映されていました。全60分です。それぞれ10:15、11:20、12:25、13:30、14:35、15:40、16:45にスタートします。鑑賞希望の方は時間にあわせて出かけられることをおすすめします。
10月12日まで開催されています。
「オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:7月18日(土)~10月12日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/20、9/21、10/12は開館。7/21、9/24は休館。
時間:10:00~18:00。
*7~9月の金曜日は21時まで開館。
*入場は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生・65歳以上800(640)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。同時開催の「ここはだれの場所?」、「きかんしゃトーマスとなかまたち」との2展、3展セット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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