都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「禅の里と恐竜の故郷を旅して」 前編:曹洞宗大本山永平寺
1244年、曹洞宗の宗祖道元によって開かれた永平寺は、座禅修行の道場として、長らく人々の信仰を集めてきました。そして福井県北東部の永平寺町の山中にて、法堂、仏殿、僧堂などの7つの堂による伽藍を有してきました。
羽田から9時前の飛行機に乗り、小松へ降り立った後、福井の知人の車に乗ったのは10時頃でした。小松から永平寺へはおそらく北陸自動車道を入り、福井北JCTから中部縦貫自動車道を経由して、永平寺参道ICから向かうのが一般的かもしれませんが、今回は知人の案内によって、小松から山代温泉、山中温泉、さらに大聖寺川へと伸びる国道364号線を利用することにしました。
山中温泉を過ぎるとダム湖を望む山道となりましたが、しばらく走って福井県内に入ると、江戸時代初期に建てられ、同県内最古の民家である「坪川家住宅」こと「千古の家」が姿を現しました。
残念ながら休館日のため、中に入ることは叶いませんでしたが、門の外からも母屋だけは見ることが出来ました。茅葺の屈曲した屋根が極めて特徴的な建物で、当時の豪族の生活様式を伝えることから、1966年に国の重要文化財に指定されました。
「千古の家」を出て、再び364号の山道を上っては下り、九頭竜川を渡ると、永平寺町へと到着しました。ただ永平寺は、役場のある町中心部より南側の山中にあるため、さらに車を進めると、土産店などの立ち並ぶ門前の通りが見えてきました。
車を停めて門前へと向かうと、南側にもう一本の参道が伸びていることが分かりました。これは今年夏、「永平寺門前まちなみ整備事業」にて整備された新たな参道で、永平寺川沿いの石畳の親水空間には宿泊施設も設けられました。この新しい参道は1600年の古地図に由来するもので、創建当時から明治時代までは、永平寺川沿いを歩いて参詣していたことが記録されているそうです。その後、ルートが変わって現在へと至りましたが、いわば約1世紀ぶりに参道が復元されたとして良いのかもしれません。
龍門を抜け、木立の中、苔の生茂る石垣などを眺めて歩くと、参詣者の受付のある通用門が見えてきました。
永平寺での参詣は、まず通用門で受付を済ませ、その後、吉祥閣、傘松閣へと進み、さらに僧堂、仏殿、法堂などを回廊を歩きながら、左回りに7つの伽藍を巡るスタイルになります。また写真に関しては、修行僧である雲水にカメラを向けなければ、原則自由に撮影が出来ました。(フラッシュ不可。)
傘松閣の2階にある「絵天井の間」の天井絵が圧巻でした。156畳もの大広間の天井には、昭和初期の144名の日本画家の描いた彩色画が飾られていて、四季の草花や鳥など、いわゆる花鳥風月を主題した作品が230枚も広がっていました。
7つの伽藍の中で最も古い建物が、1749年に築かれた山門で、中国の唐の様式に基づく楼閣でした。また山門から見上げると、さも山城の砦のような威容を見せる中雀門や仏殿を望むことも出来ました。
伽藍の中心に位置するのが、1902年に改築された仏殿で、曹洞宗の本尊である釈迦牟尼仏をはじめ、弥勒仏と阿弥陀仏が祀られていました。
檀の上には「祈祷」の額が掲げられ、左右には実に精巧な彫刻の施された欄間がのびていました。いずれも禅の逸話などを表現しているそうです。
大きな屋根の広がる僧堂にも目を引かれました。仏殿と同様の1902年の改築で、正面には「雲堂」の額が掛けられ、日々の雲水の修行の場として用いられています。
「法王法」の額を掲げ、伽藍でも最も高い場所に位置するのが、聖観世音菩薩を祀った法堂でした。住持が法を説く道場として築かれていて、説法の他に、朝課などの法要の儀式も執り行われています。
今回、私が永平寺をお参りして印象的だったのは、伽藍を繋ぐ回廊の存在でした。そして時折、伽藍の窓から垣間見える景観が殊更に美しく、しばし立ち止まっては見入ってしまいました。
山の中の鬱蒼とした森の中にある永平寺は、木々を揺らす風の音か鳥のさえずりくらいしか聞こえないほど静寂に包まれていました。
ちょうど紅葉の少し前のシーズンでもあり、まだ葉も青々と茂っていましたが、冬になると一帯は多くの雪が降り積もるそうです。
2018年に福井地方を襲った豪雪では、あまりにもの積雪のため、一時参拝が中断されたこともありました。その豪雪の様子もお寺の中で紹介されていましたが、まさに雪に埋もれた状態に置かれていて、除雪などで相当の苦難があったことも想像されます。また毎年、雪のために多くの瓦を取り替えているそうです。
一通り参拝した後は、門前で永平寺そばを食べ、次の目的地である福井県立恐竜博物館へと向かいました。
後編「福井県立恐竜博物館」へと続きます。
「曹洞宗大本山永平寺」
休場:年中無休
参拝時間:8:30~17:00
*入場は16時半まで。
拝観料:大人500円、小・中学生200円。
*座禅などの体験には別途料金。
住所:福井県吉田郡永平寺町志比5-15
交通:えちぜん鉄道勝山永平寺線永平寺口駅から、京福バス永平寺門前行または永平寺行に乗り、終点下車、徒歩5分。特急「永平寺ライナー」(京福バス、福井駅より直行約30分。毎日運行)あり。
羽田から9時前の飛行機に乗り、小松へ降り立った後、福井の知人の車に乗ったのは10時頃でした。小松から永平寺へはおそらく北陸自動車道を入り、福井北JCTから中部縦貫自動車道を経由して、永平寺参道ICから向かうのが一般的かもしれませんが、今回は知人の案内によって、小松から山代温泉、山中温泉、さらに大聖寺川へと伸びる国道364号線を利用することにしました。
山中温泉を過ぎるとダム湖を望む山道となりましたが、しばらく走って福井県内に入ると、江戸時代初期に建てられ、同県内最古の民家である「坪川家住宅」こと「千古の家」が姿を現しました。
残念ながら休館日のため、中に入ることは叶いませんでしたが、門の外からも母屋だけは見ることが出来ました。茅葺の屈曲した屋根が極めて特徴的な建物で、当時の豪族の生活様式を伝えることから、1966年に国の重要文化財に指定されました。
「千古の家」を出て、再び364号の山道を上っては下り、九頭竜川を渡ると、永平寺町へと到着しました。ただ永平寺は、役場のある町中心部より南側の山中にあるため、さらに車を進めると、土産店などの立ち並ぶ門前の通りが見えてきました。
車を停めて門前へと向かうと、南側にもう一本の参道が伸びていることが分かりました。これは今年夏、「永平寺門前まちなみ整備事業」にて整備された新たな参道で、永平寺川沿いの石畳の親水空間には宿泊施設も設けられました。この新しい参道は1600年の古地図に由来するもので、創建当時から明治時代までは、永平寺川沿いを歩いて参詣していたことが記録されているそうです。その後、ルートが変わって現在へと至りましたが、いわば約1世紀ぶりに参道が復元されたとして良いのかもしれません。
龍門を抜け、木立の中、苔の生茂る石垣などを眺めて歩くと、参詣者の受付のある通用門が見えてきました。
永平寺での参詣は、まず通用門で受付を済ませ、その後、吉祥閣、傘松閣へと進み、さらに僧堂、仏殿、法堂などを回廊を歩きながら、左回りに7つの伽藍を巡るスタイルになります。また写真に関しては、修行僧である雲水にカメラを向けなければ、原則自由に撮影が出来ました。(フラッシュ不可。)
傘松閣の2階にある「絵天井の間」の天井絵が圧巻でした。156畳もの大広間の天井には、昭和初期の144名の日本画家の描いた彩色画が飾られていて、四季の草花や鳥など、いわゆる花鳥風月を主題した作品が230枚も広がっていました。
7つの伽藍の中で最も古い建物が、1749年に築かれた山門で、中国の唐の様式に基づく楼閣でした。また山門から見上げると、さも山城の砦のような威容を見せる中雀門や仏殿を望むことも出来ました。
伽藍の中心に位置するのが、1902年に改築された仏殿で、曹洞宗の本尊である釈迦牟尼仏をはじめ、弥勒仏と阿弥陀仏が祀られていました。
檀の上には「祈祷」の額が掲げられ、左右には実に精巧な彫刻の施された欄間がのびていました。いずれも禅の逸話などを表現しているそうです。
大きな屋根の広がる僧堂にも目を引かれました。仏殿と同様の1902年の改築で、正面には「雲堂」の額が掛けられ、日々の雲水の修行の場として用いられています。
「法王法」の額を掲げ、伽藍でも最も高い場所に位置するのが、聖観世音菩薩を祀った法堂でした。住持が法を説く道場として築かれていて、説法の他に、朝課などの法要の儀式も執り行われています。
今回、私が永平寺をお参りして印象的だったのは、伽藍を繋ぐ回廊の存在でした。そして時折、伽藍の窓から垣間見える景観が殊更に美しく、しばし立ち止まっては見入ってしまいました。
山の中の鬱蒼とした森の中にある永平寺は、木々を揺らす風の音か鳥のさえずりくらいしか聞こえないほど静寂に包まれていました。
ちょうど紅葉の少し前のシーズンでもあり、まだ葉も青々と茂っていましたが、冬になると一帯は多くの雪が降り積もるそうです。
2018年に福井地方を襲った豪雪では、あまりにもの積雪のため、一時参拝が中断されたこともありました。その豪雪の様子もお寺の中で紹介されていましたが、まさに雪に埋もれた状態に置かれていて、除雪などで相当の苦難があったことも想像されます。また毎年、雪のために多くの瓦を取り替えているそうです。
一通り参拝した後は、門前で永平寺そばを食べ、次の目的地である福井県立恐竜博物館へと向かいました。
後編「福井県立恐竜博物館」へと続きます。
「曹洞宗大本山永平寺」
休場:年中無休
参拝時間:8:30~17:00
*入場は16時半まで。
拝観料:大人500円、小・中学生200円。
*座禅などの体験には別途料金。
住所:福井県吉田郡永平寺町志比5-15
交通:えちぜん鉄道勝山永平寺線永平寺口駅から、京福バス永平寺門前行または永平寺行に乗り、終点下車、徒歩5分。特急「永平寺ライナー」(京福バス、福井駅より直行約30分。毎日運行)あり。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )