「2020年 見逃せない美術展」 日経おとなのOFF

今年も残すところ半月となり、来年の美術展のスケジュールもかなり出揃ってきました。

「2020年 絶対に見逃せない美術展/日経トレンディ/日経BP」

そうしたスケジュールを網羅したのが、日経おとなのOFFの「絶対見逃せない美術展」で、2020年の美術展の開催情報を多く掲載していました。



「カラヴァッジョ キリストの埋葬」(仮) 国立新美術館(10月21日〜11月30日)

まず冒頭、速報として掲載されたのが、先だって公表された「カラヴァッジョ キリストの埋葬」展で、約30年ぶりに来日することの決まった「キリストの埋葬」を大きくクローズアップしていました。なお本展は現在、バチカンに残る日本の資料を調査する「バチカンと日本の100年プロジェクト」の一環として行われるもので、日本の使徒がローマに送った書状などが公開されるなど、両国の交流の歴史について明らかにされます。「キリストの埋葬」以外の詳細な内容も待たれるところです。



「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」 国立西洋美術館(3月3日〜6月14日) *国立国際美術館(7月7日〜10月18日)へ巡回。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」展の情報も詳しく掲載されていました。これは表紙を飾ったスルバランの「アンティオキアの聖マルガリータ」をはじめとする61点のコレクションが一堂に来日するもので、全ての出品作が日本初公開であることも話題を呼んでいます。

日本にあるゴッホの「ひまわり」の元になったロンドンの「ひまわり」の他、細かなディテールが際立ったクリヴェッリの「聖エミディウスを伴う受胎告知」など、「その時代の傑作が分かる」(解説より)とされる名作群も大いに注目されそうです。



「ハマスホイとデンマーク絵画」 東京都美術館(1月21日〜3月26日) *山口県立美術館(4月7日〜6月7日)へ巡回。

北欧のフェルメールと呼ばれるハマスホイの作品を展示する、「ハマスホイとデンマーク絵画」も人気を集めるのではないでしょうか。ハマスホイは2008年、ハンマースホイとして日本でも紹介されたデンマークの画家で、室内の扉や後ろ向きの女性など、独自の静謐な構図やモチーフを特徴としてきました。約12年ぶりの開催ゆえに、再びハマスホイを見られることを待ち望んでいる方も多いかもしれません。


一方の日本美術では、「日本美術フェスティバル」と題し、浮世絵、江戸絵画、きもの、絵巻、屏風の5つの観点から、各種の展覧会をピックアップしていました。言うまでもなく2020年は東京でオリンピックが開催されることもあり、海外でも人気の高い浮世絵など、訪日客などへ向けて日本美術を発信するような企画も少なくありません。

「The UKIYO-E 2020ー日本三大浮世絵コレクション」 東京都美術館(7月23日〜9月13日)
「きもの KIMONO」 東京国立博物館(4月14日〜6月7日)
「おいしい浮世絵展」 森アーツセンターギャラリー(4月17日〜6月7日)


江戸絵画でまず注目したいのは出光美術館です。今年、プライスコレクションまとめてを購入した同館が、「江戸絵画の華」と題した展覧会にて、同コレクションの一部(80件)を公開します。また府中市美術館の恒例企画である「春の江戸絵画祭り」も面白いのではないでしょうか。昨今の奇想ブームに対し、あえて「ふつう」で挑む内容にも期待が持てそうです。

「江戸絵画の華」 出光美術館(9月19日〜12月20日)
「奇才 江戸絵画の冒険者たち」 江戸東京博物館(4月25日〜6月21日) *山口県立美術館(7月7日〜8月30日)、あべのハルカス美術館(9月12日〜11月8日)へ巡回。
「猿描き狙仙三兄弟」 大阪歴史博物館(2月26日〜4月5日) *熊本県立美術館(7月18日〜9月6日)へ巡回。
「ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」 府中市美術館(3月14日〜5月10日)



甲乙丙丁4巻の全場面を初めて一挙に公開する「国宝 鳥獣戯画のすべて」や、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」と「吉備大臣入唐絵巻」の2つの国宝級絵巻が来日する「ボストン美術館展 芸術×力」、さらに23年ぶりに法隆寺より百済観音が出陳する「法隆寺 金堂壁画と百済観音」の各展も大勢の人々で賑わいそうです。

「国宝 鳥獣戯画のすべて」 東京国立博物館(7月14日〜8月30日)
「ボストン美術館展 芸術×力」 東京都美術館(4月16日〜7月5日) *福岡市美術館(7月18日〜10月4日)、神戸市立博物館(10月24日〜2021年1月17日)へ巡回。
「法隆寺 金堂壁画と百済観音」 東京国立博物館(3月13日〜5月10日)

現代美術では、共に2020年に展覧会が予定されている、ウォーホルとバンクシーについて細かに紹介されていました。特にバンクシーはネズミの絵でニュースにも取り上げ、いわばトレンドになるなど、アートファン以外の関心を集めるかもしれません。

「アンディ・ウォーホル・キョウト」 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(9月19日〜2021年1月3日)
「BANKSY展」 寺田倉庫G1ビル(8月29日〜12月6日)


日本の現代アートシーンをチャート形式で追うコーナーも充実していたのではないでしょうか。横須賀美術館での回顧展の記憶が未だ忘れられない「白髪一雄」展、また叙情的な画風が目を引く「ピーター・ドイグ」展、それに原美術館での日本初個展が2005年にまで遡る「オラファー・エリアソン」展などは、私も心待ちにしたいと思います。

「白髪一雄」 東京オペラシティアートギャラリー(1月11日〜3月22日)
「ピーター・ドイグ」 東京国立近代美術館(2月26日〜6月14日)
「オラファー・エリアソン」 東京都現代美術館(3月14日〜6月14日)



恒例の付録のうち「2020 美術展100ハンドブック」も大変に有用でした。ここでは2020年の年間の美術展をカレンダー形式で掲載していて、各展の開催館や会期、それに見どころなどを簡単に紹介していました。そのうち私が注目したい展覧会を以下にピックアップしてみました。(上に掲載した展覧会を除く)

「岡崎乾二郎 視覚のカイソウ」 豊田市美術館(~2月24日)
「出雲と大和」 東京国立博物館(1月15日~3月8日)
「毘沙門天 北方鎮護のカミ」 奈良国立博物館(2月4日~3月22日)
「画家が見たこども展」 三菱一号館美術館(2月15日~6月7日)
「古典×現代2020 時空を超える日本のアート」 国立新美術館(3月11日~6月1日)
「和食 日本の自然、人々の知恵」 国立科学博物館(3月14日~6月14日)
「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」 Bunkamura ザ・ミュージアム(3月18日~5月11日)
「雅楽の美」 東京藝術大学大学美術館(4月4日~5月31日)
「飄々表具 杉本博司の表具表現世界」 細見美術館(4月4日~6月21日) 
「聖地をたずねて 西国三十三所の信仰と至宝」 京都国立博物館(4月11日〜5月31日)
「神田日勝 大地への筆触」 東京ステーションギャラリー(4月18日〜6月28日) *神田日勝記念美術館(7月11日〜9月6日)、北海道立近代美術館(9月19日〜11月8日)へ巡回。
「STARS展:現代美術のスターたち」 森美術館(4月23日〜9月6日)
「ファッション イン ジャパン 1945〜2020」 国立新美術館(6月3日〜8月24日) *島根県立石見美術館(9月19日〜11月23日)へ巡回。
「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮」 国立新美術館(7月8日〜9月22日)
「スポーツ in アート ギリシャ彫刻×印象派の時代」 国立西洋美術館(7月11日〜10月18日)
「クロード・モネ 風景への問いかけ」 アーティゾン美術館(7月11日〜10月25日)
「隈研吾展」 東京国立近代美術館(7月17日〜10月25日)
「揚州八怪」 大阪市立美術館(8月29日〜10月18日)
「佐藤可士和展」 国立新美術館(9月16日〜12月14日)
「ゴッホと静物画 伝統から革新へ」 SOMPO美術館(10月6日〜12月27日)
「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING & QUEEN展」 上野の森美術館(10月〜2021年1月)
「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」 アーティゾン美術館(11月14日〜2021年1月24日)


2020年は新たにオープン、あるいは建て替えなどを終えてリニューアルオープンする美術館も少なくありません。

「京都の美術250年の夢」 京都市京セラ美術館(3月21日〜12月6日) *「杉本博司 瑠璃の浄土」(3月21日〜6月14日)を新館・東山キューブで開催。
「Thank You Memory 躍動から創造へ」 弘前れんが倉庫美術館(4月11日〜8月31日)
「見えてくる光景 コレクションの現在地」 アーティゾン美術館(1月18日〜3月31日)
「珠玉のコレクション」 SOMPO美術館(5月28日〜7月5日)
「ジャポニスム 世界を魅了した浮世絵」 千葉市美術館(7月11日〜9月6日)

年明け早々にオープンするのが、新たに建て替えられ、ブリヂストン美術館より名を改めたアーティゾン美術館で、開館記念展では、休館中に収蔵された作品を含む200点のコレクションが一堂に公開されます。なお同館ではリニューアルに際し、事前日時予約制のシステムが導入されました。既に公式サイトにて同展のチケットも販売されています。


年内まで「目 非常にはっきりとわからない」を開催中の千葉市美術館も、年明けより改修拡張工事のため、2020年6月末を目処に全館休館期間に入ります。リニューアル後は7月11日より「ジャポニスム 世界を魅了した浮世絵」が行われる予定です。また2020年4月には、北海道白老町にアイヌ文化復興や創造の拠点となるべく、国立アイヌ民族博物館もオープンします。



さらに誌面ではあまり触れられていませんでしたが、2020年は芸術祭も目白押しです。「ひろしまトリエンナーレ」など新たに始まる芸術祭もあり、各地へ遠征される方も多いのではないでしょうか。

「さいたま国際芸術祭2020」(3月14日〜5月17日)
「いちはらアート×ミックス2020」(3月20日~5月17日)
「北アルプス国際芸術祭2020」(5月31日〜7月19日)
「東京ビエンナーレ2020」(7月中旬〜9月上旬)
「ヨコハマトリエンナーレ2020 Afterglow―光の破片をつかまえる」(7月3日〜10月11日)
「奥能登国際芸術祭2020」(9月5日〜10月25日)
「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」(9月12日〜11月15日)
「札幌国際芸術祭2020」(12月19日~2021年2月14日)

基本的には関東や関西の大型展の情報が中心で、それ以外の地方の展覧会についてはあまり触れていません。おそらく情報自体の数で比べれば、12月20日発売予定の「美術の窓」の「今年の展覧会250」特集の方がより網羅的であると思われます。



とは言え、明治学院大学の山下裕二教授と編集者の山田五郎さんの対談など読み物もあり、昨年より値上がりしたものの、「2020 美術展100ハンドブック」、「2020年美術展名画カレンダー」、「クリアファイル」が付いて935円(税込)と、未だお得ではないでしょうか。また全国の美術館の広告が多いのも特徴で、そこからも各館のスケジュールを追うことも出来ました。

「2020年 絶対に見逃せない美術展/日経トレンディ/日経BP」

なおタイトルに「日経おとなのOFF」とありますが、同雑誌は今年休刊になったため、「日経トレンディ」の増刊号として刊行されていました。まずは書店で手に取ってご覧下さい。


「日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展」(日経トレンディ2020年1月号増刊)
出版社:日経BP社
発売日:2019/12/6
価格:935円(税込)
内容:惜しまれつつ休刊になった「日経おとなのOFF」ですが、年末の美術展特集は健在です。 2020年オリンピックイヤーは、美術館・博物館も日本の文化力発信のために、 ありったけのエネルギーをつぎ込んで熱い美術展が繰り広げられます。その見どころを熱血解説!
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