都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「中野正貴写真展 東京」 東京都写真美術館
東京都写真美術館
「中野正貴写真展 東京」
2019/11/23〜~2020/1/26

東京都写真美術館で開催中の「中野正貴写真展 東京」を見てきました。
1955年に福岡で生まれ、翌年に東京へ移り住んだ写真家の中野正貴は、大学を卒業後、広告写真を手掛けながら、約30年に渡って東京を撮り続けました。
その中野の美術館として初めての大規模な個展が「東京」で、タイトルが示すように、全て東京を舞台とした写真、約100点ほどが展示されていました。
さて一概に東京とはいえども、幾つかの切り口、つまりテーマを据えて写真を撮っているのも、中野の制作の特徴と言えるかもしれません。

中でも目を引くのが「TOKYO NOBODY」と題したシリーズで、いずれも人が誰もいない東京の街の光景をカメラに収めていました。常日頃、大勢の人で行き交う銀座や渋谷の繁華街も無人であるため、何らかのデジタル加工がなされているかと思いきや、一切の手が加わっていませんでした。

ともかく見慣れた街から人がいない光景はどこかシュールでもあり、あたかもパラレルワールドを覗き込んでいるかのような錯覚に陥るかもしれません。

ビルや民家の窓から外を眺めた「東京窓景」も中野の代表的なシリーズで、同作にて2004年度の第30回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

「東京窓景」で興味深いのは、何も単に窓の外を捉えているだけでなく、窓の内側、つまり室内空間をも合わせて取り込んで写していることでした。そこに中野は、座敷から内部空間を含めて表の庭を鑑賞する日本の伝統的な美意識と、額入り絵画のように屋外の風景を見る西洋のピクチャーウィンドウの概念を当てはめたとしていました。

川を都市の動脈と位置付ける中野は、「TOKYO FLOAT」において、川面の船の上から東京を見上げるように撮影しました。それらはさも街やビルが水に浮いているかのようで、高速道路下の水路から眺めた景観など、日常的な視点とは異なった東京の姿を見ることが出来ました。
ところで天を突くそびえ立つビル群や、大蛇のように這う高速道路の高架橋など、ダイナミックな景色にばかり目が向いてしまいますが、何も中野は東京のランドスケープのみを切り取ってカメラに表現しているわけではありません。

というのも、「東京刹那」や「東京切片」のシリーズでは、街に行き交う人々の様子から裏寂れた路地などを写していて、東京の日常的なドラマなり細部へ目を向けていたからでした。

花見に花火の観客、それに居酒屋に集う人々の光景など、どこかリアルで血の通った東京をえぐり取っているのも、中野の写真の魅力なのかもしれません。

なお展示は、1990年から2019年にかけて撮られた作品で構成されていましたが、とりわけ2000年前後の写真が目立っていました。

建て替え前の渋谷PARCOのある公園通りや、同じく開発前の渋谷駅前、はたまた建設途上の汐留のビル群などは、一昔前の東京と呼んでも差し支えありません。

私も約20年前から東京に出入りしつつ、近隣で生活していますが、それらの写真を見ていると、当時の東京での出会いや思い出が頭に思い浮かぶような、どこかノスタルジックな感興も覚えました。
会場内の撮影も可能です。2020年1月26日まで開催されています。
「中野正貴写真展 東京」(@tokyophotoex) 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2019年11月23日(土・祝)~2020年1月26日(日)
休館:月曜日。*但し1月13日(月・祝)は開館し、1月14日(火)は休館。年末年始(12月29日〜1月1日)。
時間:10:00~28:00
*木・金曜は20時まで開館。1月2日(木)と3日(金)の開館は18時まで。
料金:一般1000(800)円、学生800(640)円、中高生・65歳以上600(480)円。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
「中野正貴写真展 東京」
2019/11/23〜~2020/1/26

東京都写真美術館で開催中の「中野正貴写真展 東京」を見てきました。
1955年に福岡で生まれ、翌年に東京へ移り住んだ写真家の中野正貴は、大学を卒業後、広告写真を手掛けながら、約30年に渡って東京を撮り続けました。
その中野の美術館として初めての大規模な個展が「東京」で、タイトルが示すように、全て東京を舞台とした写真、約100点ほどが展示されていました。
さて一概に東京とはいえども、幾つかの切り口、つまりテーマを据えて写真を撮っているのも、中野の制作の特徴と言えるかもしれません。

中でも目を引くのが「TOKYO NOBODY」と題したシリーズで、いずれも人が誰もいない東京の街の光景をカメラに収めていました。常日頃、大勢の人で行き交う銀座や渋谷の繁華街も無人であるため、何らかのデジタル加工がなされているかと思いきや、一切の手が加わっていませんでした。

ともかく見慣れた街から人がいない光景はどこかシュールでもあり、あたかもパラレルワールドを覗き込んでいるかのような錯覚に陥るかもしれません。

ビルや民家の窓から外を眺めた「東京窓景」も中野の代表的なシリーズで、同作にて2004年度の第30回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。

「東京窓景」で興味深いのは、何も単に窓の外を捉えているだけでなく、窓の内側、つまり室内空間をも合わせて取り込んで写していることでした。そこに中野は、座敷から内部空間を含めて表の庭を鑑賞する日本の伝統的な美意識と、額入り絵画のように屋外の風景を見る西洋のピクチャーウィンドウの概念を当てはめたとしていました。

川を都市の動脈と位置付ける中野は、「TOKYO FLOAT」において、川面の船の上から東京を見上げるように撮影しました。それらはさも街やビルが水に浮いているかのようで、高速道路下の水路から眺めた景観など、日常的な視点とは異なった東京の姿を見ることが出来ました。
ところで天を突くそびえ立つビル群や、大蛇のように這う高速道路の高架橋など、ダイナミックな景色にばかり目が向いてしまいますが、何も中野は東京のランドスケープのみを切り取ってカメラに表現しているわけではありません。

というのも、「東京刹那」や「東京切片」のシリーズでは、街に行き交う人々の様子から裏寂れた路地などを写していて、東京の日常的なドラマなり細部へ目を向けていたからでした。

花見に花火の観客、それに居酒屋に集う人々の光景など、どこかリアルで血の通った東京をえぐり取っているのも、中野の写真の魅力なのかもしれません。

なお展示は、1990年から2019年にかけて撮られた作品で構成されていましたが、とりわけ2000年前後の写真が目立っていました。

建て替え前の渋谷PARCOのある公園通りや、同じく開発前の渋谷駅前、はたまた建設途上の汐留のビル群などは、一昔前の東京と呼んでも差し支えありません。

私も約20年前から東京に出入りしつつ、近隣で生活していますが、それらの写真を見ていると、当時の東京での出会いや思い出が頭に思い浮かぶような、どこかノスタルジックな感興も覚えました。
写真家・中野正貴が撮り続ける“予測不可能都市”、東京。大規模個展でその軌跡をたどる。https://t.co/CAU6GnbTMm pic.twitter.com/8N4PgHmAST
— Pen Magazine (@Pen_magazine) December 24, 2019
会場内の撮影も可能です。2020年1月26日まで開催されています。
「中野正貴写真展 東京」(@tokyophotoex) 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2019年11月23日(土・祝)~2020年1月26日(日)
休館:月曜日。*但し1月13日(月・祝)は開館し、1月14日(火)は休館。年末年始(12月29日〜1月1日)。
時間:10:00~28:00
*木・金曜は20時まで開館。1月2日(木)と3日(金)の開館は18時まで。
料金:一般1000(800)円、学生800(640)円、中高生・65歳以上600(480)円。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
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