「禅の里と恐竜の故郷を旅して」 後編:福井県立恐竜博物館

前編「曹洞宗大本山永平寺」に続きます。福井県立恐竜博物館へ行ってきました。



永平寺から福井県立恐竜博物館へは、九頭竜川に沿った国道をひたすら東へ進み、石川県にも接した勝山市へ向かう必要があります。



両側に山の迫る川縁の道を走っていると、ほぼ正面に銀色の卵のような形をした建物が目に飛び込んできました。遠くからでも大変に目立っていて、すぐに恐竜博物館であることが分かりました。



1989年から恐竜の調査事業を勝山市で開始し、多くの化石を発掘した福井県は、2000年に国内最大級の地質・古生物学博物館である福井県立恐竜博物館をオープンしました。



一帯は「かつやま恐竜の森」(勝山市長尾山総合公園)として整備されていて、想像以上に広大な施設でした。また「かつやま恐竜の森」には、実物大の恐竜の模型が揃うかつやまディノパークや化石発掘体験コーナー、恐竜の遊具のある公園やバーベキューガーデンなどもあり、恐竜博物館を中心とした一大テーマパークと捉えて差し支えありません。(一部は冬季期間休業。)

また2009年には勝山市全域が、恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークとして、日本ジオパークに認定されました。言わば日本の恐竜のふるさととも呼べるのではないでしょうか。



建物を設計したのは黒川紀章建築都市設計事務所で、ちょうど丘の中に埋もれるような形になっているのか、3階より入場し、エスカレーターで地下の「ダイノストリート」へ降りた後、1階の「恐竜の世界ゾーン」と「地球の科学ゾーン」、そしてスロープを経由して2階の「生命の歴史ゾーン」へと進む動線となっていました。

内部も卵形のスペースが特徴的で、ちょうどエントランスから潜り込むようなアプローチは、東京の葛西臨海水族園を連想させるものがありました。


「恐竜の世界ゾーン」展示風景

1階の「恐竜の世界ゾーン」からして圧巻の内容でした。ドーム型の高さ37メートルもの大ホールには、10体の本物の骨格を含む、全44体もの全身骨格が展示されていました。


「恐竜の世界ゾーン」展示風景

私もこれまでに様々な恐竜に関する展覧会を見てきたつもりでしたが、これほどの密度で骨格が並ぶ姿を目にしたの初めてだったかもしれません。


「恐竜の世界ゾーン」展示風景

また中央の円形状のスペースでは「恐竜のからだと暮らし」と題し、恐竜の誕生や食性などについてパネルや資料で紹介していました。


「恐竜の世界ゾーン」展示風景

ともかく骨格が密に並ぶだけに、標本そのものに圧倒されてしまいましたが、よく見やると解説パネルが詳細で、恐竜を見て楽しむだけでなく、学びの観点においても充実した展示であることが分かりました。


「中国四川省の恐竜たち」展示風景

さらに奥では「中国四川省の恐竜たち」とし、同地域の中生代の恐竜を実物大で再現したジオラマも広がっていました。


「中国四川省の恐竜たち」展示風景

一部では動く恐竜の模型があるなど、全体として臨場感があり、まるで恐竜のいた時代へタイムワープしたかのような錯覚に陥るかもしれません。


「ダイノシアター」

対面スクリーンに恐竜の生態を再現した「ダイノシアター」も迫力十分でした。


「日本とアジアの恐竜」から

1階スペースで見逃せないのは、アジアや日本、特にご当地である福井県の恐竜について紹介する展示があることでした。


「手取層群の環境再現」

日本では長く恐竜の化石が発見されませんでしたが、1978年に岩手県で竜脚類の化石が見つかると、次々と各地で化石が掘り出されるようになりました。その結果、日本でもジュラ紀後期から白亜紀後期にかけて、北海道から九州に至るまでに恐竜が生息していたことが判明しました。


「フクイティアン・ニッポネンシス」

そのうち手取層群とは、北陸一帯に分布する中世代の地層で、これまでにも多くの化石が発見されました。そして全長10メートルほどと推定され、白亜紀前期の竜脚類であるフクイティアン・ニッポネンシスも、手取層群のある勝山で見つかった恐竜でした。


「フクイサウルス・テトリエンシス」(複製)

このフクイベナトール・パラドクサスを含め、同じく勝山で発見されたフクイベナトール・パラドクサスやフクイサウルス・テトリエンシスなど5体の新種の恐竜化石は、2017年に発掘現場とともに国の天然記念物に指定されました。


「恐竜発掘現場再現」展示コーナー

また同じく1階の「地球と科学ゾーン」では、恐竜発掘現場の再現の他、地質調査や岩石など、科学の視点から地球について紹介する展示も行われていました。



再び「恐竜の世界ゾーン」へ戻り、骨格標本の立ち並ぶ光景を見下ろしながら、スロープで2階へと上がると、「生命の歴史ゾーン」へと辿り着きました。


「ケナガマンモス」(複製)他

ここではドーム型の展示室の半分を利用し、生命の誕生から人類の出現までを追っていて、古生代から新世代へと至る生命の進化の軌跡を辿ることが出来ました。ケナガマンモスの大きな複製骨格も迫力があるかもしれません。


「生命の歴史ゾーン」展示風景

植生の変化、恐竜から鳥への進化のプロセス、哺乳類時代の陸と海を比べた展示も興味深い内容ではないでしょうか。何も恐竜博物館は恐竜の時代のみにスポットを当てた博物館ではありませんでした。

この他、ティラノサウルスレックスの骨格を間近に観察可能なダイノラボや、化石のクリーニング作業を公開した「化石クリーニング室」などもあり、恐竜の魅力に触れるとともに、調査や研究の一端についての知見を得ることも出来ました。海外の研究機関との共同調査にも取り組む福井県立恐竜博物館は、日本やアジアの恐竜学の一大研究拠点でもありました。


「生命の歴史ゾーン」展示風景

この日は特別展の開催はなく、時間の都合もあり、常設展のみ観覧してきましたが、予想以上のボリュームでした。そして恐竜博物館には、ツアー形式で見学可能な「野外恐竜博物館」もあり、博物館の内外を含め、「かつやま恐竜の森」の全てを楽しむには、おそらく1日がかりとなるのではないでしょうか。


「アロサウルス・フラギリス」

近年、福井県立恐竜博物館の人気が高まり、今年の上半期の入館者数は過去最高の65万人を記録し、年間でも昨年度の93万名を上回る勢いで推移しています。確かに私が出向いた日も、混雑こそしていなかったものの、若い方から年配の方、さらにファミリーに至る幅広い層の人々で賑わっていました。


「ディメトロドン・リンバタス」

現在、福井県では、2023年の北陸新幹線敦賀延伸開業を見据え、博物館を増築し、新たな特別展示室や収蔵庫、研究体験スペースを設けることを検討しています。ショップやレストランの拡充も予定されています。



既に福井を代表する文化観光施設と化していましたが、数年後にはスケールアップした恐竜博物館がお目見えするのでしょうか。また改めて出かけたいと思いました。

「福井県立恐竜博物館」
休館:第2・4水曜日
 *祝日の時は翌日が休館、夏休み期間は無休。
 *年末年始(12月29日~1月2日)但し2019年度は12月31日~1月2日。
 *施設点検などに伴う臨時休館あり。
時間:9:00~17:00
 *入館は16時半まで。
 *開館時間を拡大する期間あり。
料金:一般730(630)円、高・大学生420(320)円、小・中学生260(210)円。未就学児、70歳以上無料。
 *( )内は30名以上の団体料金。
 *特別展は別途料金。
 *毎月第3日曜日の「家庭の日」(7~9月を除く)、4月17日の「恐竜の日」、5月18日の「国際博物館の日」、10月15日の「化石の日」、11月第3土曜日の「関西文化の日」、2月7日の「ふるさとの日」は常設展観覧料が無料。
住所:福井県勝山市村岡町寺尾51-11 かつやま恐竜の森内
交通:えちぜん鉄道勝山永平寺線勝山駅下車、コミュニティバスにて約15分、及びまたはタクシーにて約10分。無料駐車場あり。(乗用車1500台分)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )