「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「特別展 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」
2020/6/11~6/29



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「特別展 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」を見てきました。

2010年に写実絵画専門の美術館として開館したホキ美術館(千葉市緑区)のコレクションが、初めてまとまって東京へとやって来ました。

それが「特別展 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」で、約30名の作家による70点ほどの作品が展示されていました。

まず目を引くのが、風景や人物をセピア色のトーンに包んで描く森本草介で、後ろ姿の裸婦が横になる姿を捉えた「横になるポーズ」は、ホキ美術館の最初のコレクションという記念すべき作品でした。また「アリエー川の流れ」は、フランス中央部を流れる川の岸を横に長い構図に描いていて、家々の立ち並ぶ当地の風景のみならず、静止した時間までも切り取っているかのようでした。リアルながらも叙情的な作風も魅力かもしれません。


野田弘志「聖なるもの THE-Ⅳ」 2013年 ホキ美術館

「魂のリアリズム」と称される画家、野田弘志の「聖なるもの THE-Ⅳ」にも魅せられました。北海道の洞爺湖畔に建つアトリエの庭で見つけた鳥の巣をモチーフとしていて、木や草が細かに重なり、小さな卵が入る様子からは、自然の神秘までを表現しているように思えました。


生島浩「5:55」 2007〜2010年 ホキ美術館 *会場外のパネルより

チラシ表紙を飾った、生島浩の「5:55」に心を奪われた方も多いかもしれません。17世紀のオランダ絵画を思わせるようなアンティークな室内には、一人の女性が座っていて、視線をやや逸らしつつ、指をよじらせながら、はにかむような表情を見せていました。なおタイトルの「5.55」とは、画面右上の時計の指す時分、つまり5時55分に由来していて、ミステリアスな雰囲気もあるのか、ホキ美術館のコレクションの中でも特に高い人気を得ているそうです。

ガラスや花の精緻極まりない描写に驚いたのが、五味文彦の「あかい花」でした。白一色を背に、4つのガラスの器が中央に並べられていて、3つのグラスには赤い花が水に浮いていました。水に屈曲する花や葉は、まるで本物と見間違うかのようで、全体を満たす光の存在までも写しているかのようでした。これほどまでに眩しく透明感のある写実絵画も滅多にないかもしれません。


石黒賢一郎「存在の在処(ありか)」 2001~2010年 ホキ美術館

私が今回の展覧会で最も引かれたのが、石黒賢一郎の「存在の在処(ありか)」でした。一人のやや老いた男性が、教室の黒板や掲示物を背に、横向きに腕を組んでは立つ光景を表していて、黒板の白い文字に至るまで油彩で描いていました。

モデルの男性は画家の父親で、高校を退職する際に制作されたそうですが、僅かな緊張感をたたえながら、どこか達観するかのように遠くを見やる姿には、人生の重みすら感じられはしないでしょうか。年季の入った職人を前にするかのようで、尊敬の念すら覚えるほどでした。

廣戸絵美の「階段」にも目がとまりました。タイトルのごとく建物の中の階段を描いていて、誰もいないからか、どこかで目にし得るような光景にも関わらず、非日常的な空間を見ているような気持ちにもさせられました。コンクリート打ちっぱなしの壁面や、階段の組み合わせなど、幾何学的な空間構成も際立って見えるかもしれません。


小木曽誠「森へ還る」 2017年 ホキ美術館

巨木を背に二人の若い女性を描いたのが、小木曽誠の「森へ還る」でした。佐賀と福岡の県境にある佐賀市富士町の樹齢千年の巨木、「下合瀬の桂」を舞台としていて、青いワンピース姿の女性は、樹木の幹の部分に寄り添うようにポーズをとっていました。*小木曽誠の「森へ還る」のみ撮影可能。

ところでホキ美術館ですが、2019年10月に千葉県を襲った豪雨による被害を受け、設備と一部の作品が損傷したことから、現在も長期に渡って休館しています。先日、ようやく再開の目処が立ち、今年の8月1日のリニューアルオープンすることが発表されました。

私も数年前に一度、訪ねたことがありますが、静かな住宅地の中に、突如、現れる宇宙船のような建物からして個性的で、曲線を活かした回遊型のギャラリーを歩きながら、充実したコレクションに見入ったことを覚えています。再び開館した際は改めて出向きたいと思いました。

最後に新型コロナウイルス感染症対策の情報です。Bunkamura ザ・ミュージアムでは、入館時に全員の検温と手指の消毒を行い、マスクの着用を求めています。原則、発熱や風邪の症状が見られる場合は入館出来ません。

さらに受付にて代表者氏名と連絡先の電話番号を記入する必要がありました。なお連絡先シートについては事前にWEBよりダウンロードして持参することも可能です。


この「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」は、3月20日に開幕したものの、新型コロナウイルス感染拡大防止のため4月6日で中止されました。そして事実上、会期を先延ばしする形にて、6月11日より特別展として改めて再開催されました。(内容は同一です。)

ロッカーが全て閉鎖されていました。重い荷物を持ちながらの鑑賞は大変です。お出かけの際は十分にご注意下さい。

6月29日まで開催されています。

「特別展 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」 Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2020年6月11日(木)~6月29日(月)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600円、大学・高校生900円、中学・小学生600円。
 *団体の受付は休止。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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