都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」 国立新美術館
国立新美術館
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」
2021/1/30~3/7
文化庁の新進芸術家海外研修制度に参加したアーティストの活動を紹介する「DOMANI・明日展」は、今年で23回目を迎えました。
今回はサブタイトルを「スペースが生まれる」として、過去10年間に海外で研修を行った7人の新進作家に加え、それ以前に研修を経た竹村京・鬼頭健吾、及び袴田京太朗の計10名の作品が展示されていました。
高木大地「Window」 2018年
まずイントロダクションに続くのは1982年に岐阜で生まれ、2018年から翌年にオランダで研修した高木大地の展示で、「Window」や「The moon and trees」などと題した油彩画10点が並んでいました。
高木大地「The moon and trees」 2019年
そこにはカーテンのかかった窓や木立の中に広がる陽の光などが描かれていて、いずれも静けさに満ちていました。また具象でありつつも、単純化したような色面には抽象性も感じられて、まるで夢の中の世界を覗き込むような幻想的な雰囲気も漂っていました。
利部志穂 展示風景
それこそ展示室内のスペースも作品に取り込んだ、利部志穂のインスタレーションも魅惑的だったかもしれません。
利部志穂 展示風景
ここには小さな絵画とともに、プラスチエック製品やカフェの紙袋などが、いくつかに積み上げられたダンボールの上に載っていて、黄色や水色のチェーンによって緩やかに結ばれていました。
利部志穂 展示風景
いずれもが静止していて動かないものの、しばらく見ていると全体が循環して繋がっているようで、何らかの運動が形として表されているようにも感じられました。
大田黒衣美 展示風景
昼寝中の猫の上に、ガムの切り絵を置くことからはじまったという作品を展示した、大田黒衣美も独創的な魅力が感じられるのではないでしょうか。
大田黒衣美 展示風景
ここにはガムを模したセラミックのレリーフとともに、猫の毛の上にガムを置いた様子を捉えた写真を並べていて、手足や人を連想させる形ゆえか、ポートレートを見ているような気持ちにさせられました。
袴田京太朗 展示風景
コロナ禍の中、都内のギャラリーにおいて外から観ることだけの展示を行ったという、彫刻家の袴田京太朗の作品も興味深いものがありました。
袴田京太朗「軍神ー複製」 2019年
ほぼ全ての人型の像は壁や床の方を向いていたり、カーテンの中に頭を突っ込んでいて、1つとして鑑賞者の方を向いていませんでした。またカーテンからは自転車が出ていたり、人形が寝転びながら覗き込もうとしているものの、実際に中を見ることは叶いませんでした。
袴田京太朗「六面観音ー複製1」 2020年 ほか
それに「六面観音」などは観客の存在を無視するように手を壁へ向けて合わせていて、もはや正面から見られることを拒否しているかのようでした。
新里明士「光器」 2021年
岐阜県を拠点に活動する作家、新里明士による白磁の「光器」に思わず息をのんだのは私だけではないかもしれません。
新里明士「光器」 2020年
いずれも裂け目の入った器が絶妙なライティングによって展示されていて、器から滲み出す光や影までの全てが1つの作品として表現されていました。
この裂け目は新里が工房での失敗作を見直すべく、あえて直接ひびを入れた作品で、焼成によって時にめくれるように開いていました。新里自身も「刹那的かつ瞬間的な美しさ」と記していましたが、まさに器自身の内に秘めたエネルギーが示されているかのようでした。
新里明士「累日」 2021年
また日々、日記のように作り続けたというぐい呑みを並べた展示も魅力的で、お酒などが注がれる姿を空想しながら見入りました。少し大きめのサイズの作品もあり、料理を盛っても映えて見えるかもしれません。
鬼頭健吾「cartwheel galaxy」 2020年
2010年以降アトリエを共にし、パートナーでもある竹村京と鬼頭健吾の展示も、美術館の広いスペースを効果的に活かした内容だったかもしれません。
竹村京・鬼頭健吾 展示風景
2人の共同アトリエをイメージしたという空間には、竹村の糸や綿布を用いた作品や鬼頭のフラフープなどだけでなく、共作の「Playing Field」も並んでいて、素材や色彩を超えてのコラボレーションが実現していました。
竹村京・鬼頭健吾「Playing Field 04」 2021年
特に共作の「Playing Field 00」シリーズは、糸や繊維、それにアクリル絵具や写真のイメージが絡み合っては複雑なテクスチャーを築き上げていて、レイヤー状に積み重なった細かな表現にも魅力を感じました。
山本篤「I」、「名前を知らない鳥」 2019年〜2020年
昨年にオンラインでの「DOMANI・明日展plus online2020」で発表された山本篤の映像作品「I」を、同じく映像の「名前を知らない鳥」とともに展示室内で鑑賞することができました。なおオンライン展は3月7日まで無料にて再公開されています。改めて見るのも良さそうです。
事前予約は不要です。会期末を迎えました。3月7日まで開催されています。(会場内の撮影も可能でした。)
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」(@DOMANI_ten) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2021年1月30日(土)~3月7日(日)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)は開館し、24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*夜間開館は休止。
料金:一般1000円、大学生500円。高校生、18歳以下無料。
*開催中の佐藤可士和展、および公募展のチケットの提示にて一般800円、大学生300円。
*団体受付は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」
2021/1/30~3/7
文化庁の新進芸術家海外研修制度に参加したアーティストの活動を紹介する「DOMANI・明日展」は、今年で23回目を迎えました。
今回はサブタイトルを「スペースが生まれる」として、過去10年間に海外で研修を行った7人の新進作家に加え、それ以前に研修を経た竹村京・鬼頭健吾、及び袴田京太朗の計10名の作品が展示されていました。
高木大地「Window」 2018年
まずイントロダクションに続くのは1982年に岐阜で生まれ、2018年から翌年にオランダで研修した高木大地の展示で、「Window」や「The moon and trees」などと題した油彩画10点が並んでいました。
高木大地「The moon and trees」 2019年
そこにはカーテンのかかった窓や木立の中に広がる陽の光などが描かれていて、いずれも静けさに満ちていました。また具象でありつつも、単純化したような色面には抽象性も感じられて、まるで夢の中の世界を覗き込むような幻想的な雰囲気も漂っていました。
利部志穂 展示風景
それこそ展示室内のスペースも作品に取り込んだ、利部志穂のインスタレーションも魅惑的だったかもしれません。
利部志穂 展示風景
ここには小さな絵画とともに、プラスチエック製品やカフェの紙袋などが、いくつかに積み上げられたダンボールの上に載っていて、黄色や水色のチェーンによって緩やかに結ばれていました。
利部志穂 展示風景
いずれもが静止していて動かないものの、しばらく見ていると全体が循環して繋がっているようで、何らかの運動が形として表されているようにも感じられました。
大田黒衣美 展示風景
昼寝中の猫の上に、ガムの切り絵を置くことからはじまったという作品を展示した、大田黒衣美も独創的な魅力が感じられるのではないでしょうか。
大田黒衣美 展示風景
ここにはガムを模したセラミックのレリーフとともに、猫の毛の上にガムを置いた様子を捉えた写真を並べていて、手足や人を連想させる形ゆえか、ポートレートを見ているような気持ちにさせられました。
袴田京太朗 展示風景
コロナ禍の中、都内のギャラリーにおいて外から観ることだけの展示を行ったという、彫刻家の袴田京太朗の作品も興味深いものがありました。
袴田京太朗「軍神ー複製」 2019年
ほぼ全ての人型の像は壁や床の方を向いていたり、カーテンの中に頭を突っ込んでいて、1つとして鑑賞者の方を向いていませんでした。またカーテンからは自転車が出ていたり、人形が寝転びながら覗き込もうとしているものの、実際に中を見ることは叶いませんでした。
袴田京太朗「六面観音ー複製1」 2020年 ほか
それに「六面観音」などは観客の存在を無視するように手を壁へ向けて合わせていて、もはや正面から見られることを拒否しているかのようでした。
新里明士「光器」 2021年
岐阜県を拠点に活動する作家、新里明士による白磁の「光器」に思わず息をのんだのは私だけではないかもしれません。
新里明士「光器」 2020年
いずれも裂け目の入った器が絶妙なライティングによって展示されていて、器から滲み出す光や影までの全てが1つの作品として表現されていました。
この裂け目は新里が工房での失敗作を見直すべく、あえて直接ひびを入れた作品で、焼成によって時にめくれるように開いていました。新里自身も「刹那的かつ瞬間的な美しさ」と記していましたが、まさに器自身の内に秘めたエネルギーが示されているかのようでした。
新里明士「累日」 2021年
また日々、日記のように作り続けたというぐい呑みを並べた展示も魅力的で、お酒などが注がれる姿を空想しながら見入りました。少し大きめのサイズの作品もあり、料理を盛っても映えて見えるかもしれません。
鬼頭健吾「cartwheel galaxy」 2020年
2010年以降アトリエを共にし、パートナーでもある竹村京と鬼頭健吾の展示も、美術館の広いスペースを効果的に活かした内容だったかもしれません。
竹村京・鬼頭健吾 展示風景
2人の共同アトリエをイメージしたという空間には、竹村の糸や綿布を用いた作品や鬼頭のフラフープなどだけでなく、共作の「Playing Field」も並んでいて、素材や色彩を超えてのコラボレーションが実現していました。
竹村京・鬼頭健吾「Playing Field 04」 2021年
特に共作の「Playing Field 00」シリーズは、糸や繊維、それにアクリル絵具や写真のイメージが絡み合っては複雑なテクスチャーを築き上げていて、レイヤー状に積み重なった細かな表現にも魅力を感じました。
山本篤「I」、「名前を知らない鳥」 2019年〜2020年
昨年にオンラインでの「DOMANI・明日展plus online2020」で発表された山本篤の映像作品「I」を、同じく映像の「名前を知らない鳥」とともに展示室内で鑑賞することができました。なおオンライン展は3月7日まで無料にて再公開されています。改めて見るのも良さそうです。
【明日まで、DOMANI・明日展 2021】〈会場紹介⑦〉新里明士さんのスペースは、「蛍手」という手法で制作した陶芸作品を展示。ライティングにより光と影がとても美しいい空間です。現在、Yutaka Kikutake Gallery(六本木)で個展を開催中です。本展と合わせてご覧ください。(日曜休)#domani明日展 pic.twitter.com/GkncHIA7qI
— DOMANI・明日展 (@DOMANI_ten) March 6, 2021
事前予約は不要です。会期末を迎えました。3月7日まで開催されています。(会場内の撮影も可能でした。)
「DOMANI・明日展2021 スペースが生まれる」(@DOMANI_ten) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2021年1月30日(土)~3月7日(日)
休館:火曜日。但し2月23日(火・祝)は開館し、24日(水)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
*夜間開館は休止。
料金:一般1000円、大学生500円。高校生、18歳以下無料。
*開催中の佐藤可士和展、および公募展のチケットの提示にて一般800円、大学生300円。
*団体受付は中止。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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