「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」  ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)

ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)
「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」 
2021/3/13~4/18



ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)で開催中の「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」の内覧会に参加してきました。

藤子・F・不二雄による「ドラえもん」は、テレビアニメや映画、さらにはキャラクター商品などでも展開し、日本を代表する国民的漫画として世代を超えて愛されてきました。

その「ドラえもん」の漫画の一コマに着目し、原画の迫力に迫ったのが「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」で、原画を高解像度でスキャンし、拡大して印刷した作品がずらりと展示されていました。


「ミチビキエンゼル」 小学五年生 1973年11月号

そして全ての複製原画は額装されているのが特徴で、あたかも美術館で絵画を鑑賞しているような気持ちにさせられました。


「ゆうれい城へ引っこし」 週刊少年サンデー 1976年6月15日増刊号

一連の作品において印象に深いのは、登場人物たちの「顔・感情」で、言い換えれば喜怒哀楽が、言葉を通さずとも絵だけで見事なまでに表現されていることでした。


「ぼくの生まれた日」 小学四年生 1972年8月号

そのうち「僕の生まれた日」はひどく怒られた後ののび太を描いた作品で、悲しくも悔しいのか、半目を見開きながら溢れんばかりの涙で顔を濡らすのび太の姿を見ることができました。



黒い背景から浮かび上がる顔の表情そのものも鬼気迫るようで、跳ね上がるような眉やきりりと閉じた口元からは、何かに立ち向かうような強い意志すら感じられました。


「宝くじ大当たり」 小学三年生 1971年8月号

「宝くじ大当たり」は、タイムマシンで過去の宝くじ売り場へ行き、パパが当たりくじを購入している場面を知ったママの様子を捉えていて、口を大きく開けては驚く姿を描いていました。目の不思議な形も独特で、「ロッピャクマンエン!?」との言葉も、嬉しさというよりも動揺しているのか、文字そのものが引きちぎられるように表現されていました。


「のろいのカメラ」 小学三年生 1970年10月号

「のろいのカメラ」では、シャッターを押した瞬間に衝撃を受けるのび太の顔を描いていて、驚きのあまりに時間が停止したかのような姿を見せていました。しかもこの作品で面白いのは、のび太が「のろいのカメラ」と知らずして写していることで、全く予期せずに受けた振動によって茫然自失しているように表されていました。また背景の渦巻く雲のような描写も、今後の不穏な展開を予兆させるものがあるかもしれません。


大長編ドラえもん「のび太の恐竜」 月刊コロコロコミック 1980年2月号

こうした登場人物の「顔・感情」だけでなく、会場では「構図」や「ワイド」などに着目して複製原画を紹介していて、1コマ1コマの中に見せ場を築くため、藤子・F・不二雄が驚くほどに多様な描写を盛り込んでいるのかを見ることができました。


超大作特撮映画「宇宙大魔神」 小学四年生 1979年11月号

そのうち「構図」の観点で面白く感じたのは、誰もが特撮映画を撮れるという「イージー特撮カメラ」を手にしゃがみ込み、どら焼きを接写するドラえもんの後ろ姿を描いた作品でした。丸い足を後ろに差し出し、同じく丸い尻尾とお尻をこちらに向けていて、カメラの効果音か「ジー」いう音が表されていました。曲線とお尻の直線を組み合わせた幾何学的とも受け止められるシンプルな構図ながら、一目でドラえもんと分かること自体も表現として見事ではないでしょうか。


左:「未来の町にただ一人」 小学四年生 1979年7月号

のび太が一人で未来のトーキョーに向かった「未来の町にただ一人」は、ほぼ直線のみで構成された無機質な街にぽつんと佇む姿を描いていて、奥行きを極端なまでに強調した構図などで孤独感を巧みに表していました。


大長編ドラえもん「のび太の宇宙開拓史」 月刊コロコロコミック 1980年9月号

映画シリーズの「大長編ドラえもん」の複製原画も見どころかもしれません。実のところ私自身「大長編ドラえもん」がとても好きだったことだけあり、「のび太と大魔境」や「のび太と宇宙開拓史」などの複製原画は懐かしく感じられました。


大長編ドラえもん「のび太の大魔境」 月刊コロコロコミック 1982年2月号

それにしても高解像度での複製だけに、鉛筆で描かれた文字や貼り付けられたテープ、さらにホワイトの修正した跡などまでも目の当たりにできました。



一コマ一コマを追いながら、細部へと目を凝らすと、それこそ自分も映画の中へと入り込むような錯覚にさえ陥るかもしれません。子どもの頃、父に連れてもらった映画館にて、のび太やドラえもんたちと一緒に冒険している気持ちで「大長編ドラえもん」に見入っていたことを思い出しました。



さて今回の展覧会の開催に際しての切っ掛けとなったのが、4月7日に小学館から刊行される豪華本「THE GENGA ART OF DORAEMON ドラえもん拡大原画美術館」でした。



これは「漫画を読む」ではなく「絵を鑑賞する」をコンセプトに、藤子・F・不二雄の初の本格画集でかつ美術書として制作されたもので、「ドラえもん」の直筆原画を拡大した130点以上のコマが掲載されました。



コマは「顔・表情」や「構図」、それに「ひみつ道具」などの7つのテーマに沿って選ばれていて、いずれも一般的な印刷物の2倍にあたる高解像度での撮影されました。



また単に画集としてではなく、橋本麻里さんの日本美術の視点から『ドラえもん』に迫るコラムや、漫画家の浦沢直樹氏とむぎわらしんたろう氏の対談などの読み物も収録されました。

世界へドラえもんの魅力を伝えるべく全文に英訳が付いていて、サンプルを「1コマ拡大鑑賞展」内でのショップで閲覧することができました。なお初回限定特典の「特大アートカード」などがついた「ほぼ日購入特典」付きの書籍は、4月3日よりショップで先行発売されます。


金箔や透明箔の加工をした特別ケースなど豪華本としての作りも充実していました。こうした漫画の拡大原画を収録した書籍を刊行するのは、小学館としても初めてのことだそうです。



一連の原画を所蔵する「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」についてのパネル展示も行われていました。同ミュージアムは通常、日時指定の予約制となっていますが、今回は特別に日時指定の不要なチケットが会場内で発売されています。(日時指定チケットは枚数に限りあり。)



流石に抜群の知名度と人気を誇るドラえもんだけに、グッズにも事欠きませんでした。1つ1つのコマを独立した絵画として捉えることで、ドラえもんファンや漫画ファンはもちろん、美術ファンにとっても注目したい展覧会と言えそうです。


予約は不要ですが、混雑時は時間指定の整理券制となります。最新の情報はほぼ日曜日の公式アカウント(@hobo_nichiyobi)をご覧ください。


「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」会場風景

入場は無料、撮影も可能です。4月18日まで開催されています。

「ドラえもん 1コマ拡大鑑賞展」 ほぼ日曜日@hobo_nichiyobi
会期:2021年3月13日(土)~4月18日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料。
住所:渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO8階
交通:JR線、東急東横線・田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線・半蔵門線渋谷駅より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )