都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「2021年宇宙の旅」 GYRE GALLERY
GYRE GALLERY
「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」
2021/2/19~4/25
GYRE GALLERYで開催中の「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」を見てきました。
1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」は、CGもない当時、圧倒的な映像美をもって宇宙空間を描くともに、人類の未来を予言するように表現したストーリーで多くの人々の心を捉えてきました。
そうした映画のビジョンを現代アートの視点から再考するのが「2021年宇宙の旅」と題した展覧会で、アニッシュ・カプーアや森万里子といった国内外の9組のアーティストの作品が公開されていました。
「モノリス」
まず入口左手にて目を引くのが映画の代名詞ともいえる「モノリス」で、各辺比1:4:9の黒光りした四角柱が行手を遮るかのようにそびえ立っていました。ちょうど下には黒い石が無数に転がっているからか、映画の中で「モノリス」が月面で発見された時の光景と重なって見えました。
左:アニッシュ・カプーア「Syphon Mirror- Kuro」 2008年
アニッシュ・カプーアの「Syphon Mirror- Kuro」も印象に深い作品の1つかもしれません。実際に前へ立つと自分の姿がわずかに映り込むものの、黒い円の奥底へと誘われるような錯覚に囚われて、あたかも全てを飲み込むブラックホールのような雰囲気を醸し出していました。また漆を塗った表面の滑らかな質感も魅惑的に感じられました。
手前:森万里子「トランスサークル」 2004年
奥:ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年
森万里子の「トランスサークル」は縄文遺跡や太陽系惑星に着想を得た作品で、9色の光を点滅させた9体の人工石が環を描いて置かれていました。そして「トランスサークル」の奥には、キャラクターのアン・リーがたった一人で月面を歩く風景を表現したピエール・ユイグのアニメーション「100万年王国」が映し出されていました。
ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年
このアニメーションにはデジタル合成された宇宙飛行士アームストロングの声により、アポロ11号月面着陸計画の物語をベルヌの小説「地底探検」の一節と混ぜ合わせたナレーションが朗読されていて、それこそ月面世界をさまよっているような気にさせられました。
第2展示室「月面とポストトゥルース」会場風景。左はオノデラユキ「月の裏側 No.1」 2020年
され今回の展覧会では「AIの反乱」、「非人間的な知性」、「人工的な進化」など、映画「2001年宇宙の旅」にも描かれた諸問題がテーマとされていましたが、特に興味深いのはアーティストたちが思いがけないようなアプローチで新たな時代の未来観を示していることでした。
ネリ・オックスマン「流離う者たち」 2014年
例えばネリ・オックスマンは「流離う者たち」において、宇宙で人間が生きられるように臓器の機能を拡張したコルセットを提案していました。現在、人間が宇宙空間で活動するには分厚い宇宙服が必要ですが、そもそも人の身体構造からして宇宙に適用させようとする斬新なアイデアと言えるかもしれません。
プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」 2020年
人工的に地球外の生命を作ろうとする「プロトエイリアン・プロジェクト」もユニークな取り組みではないでしょうか。人類の宇宙への進出と地球外生命の関わりについて考えさせられるものがありました。
4月25日まで開催されています。*最上段の写真は、プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」より。会場内の撮影が可能でした。
「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」 GYRE GALLERY
会期:2021年2月19日(金)~4月25日(日)
休廊:不定休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」
2021/2/19~4/25
GYRE GALLERYで開催中の「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」を見てきました。
1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」は、CGもない当時、圧倒的な映像美をもって宇宙空間を描くともに、人類の未来を予言するように表現したストーリーで多くの人々の心を捉えてきました。
そうした映画のビジョンを現代アートの視点から再考するのが「2021年宇宙の旅」と題した展覧会で、アニッシュ・カプーアや森万里子といった国内外の9組のアーティストの作品が公開されていました。
「モノリス」
まず入口左手にて目を引くのが映画の代名詞ともいえる「モノリス」で、各辺比1:4:9の黒光りした四角柱が行手を遮るかのようにそびえ立っていました。ちょうど下には黒い石が無数に転がっているからか、映画の中で「モノリス」が月面で発見された時の光景と重なって見えました。
左:アニッシュ・カプーア「Syphon Mirror- Kuro」 2008年
アニッシュ・カプーアの「Syphon Mirror- Kuro」も印象に深い作品の1つかもしれません。実際に前へ立つと自分の姿がわずかに映り込むものの、黒い円の奥底へと誘われるような錯覚に囚われて、あたかも全てを飲み込むブラックホールのような雰囲気を醸し出していました。また漆を塗った表面の滑らかな質感も魅惑的に感じられました。
手前:森万里子「トランスサークル」 2004年
奥:ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年
森万里子の「トランスサークル」は縄文遺跡や太陽系惑星に着想を得た作品で、9色の光を点滅させた9体の人工石が環を描いて置かれていました。そして「トランスサークル」の奥には、キャラクターのアン・リーがたった一人で月面を歩く風景を表現したピエール・ユイグのアニメーション「100万年王国」が映し出されていました。
ピエール・ユイグ「100万年王国」 2001年
このアニメーションにはデジタル合成された宇宙飛行士アームストロングの声により、アポロ11号月面着陸計画の物語をベルヌの小説「地底探検」の一節と混ぜ合わせたナレーションが朗読されていて、それこそ月面世界をさまよっているような気にさせられました。
第2展示室「月面とポストトゥルース」会場風景。左はオノデラユキ「月の裏側 No.1」 2020年
され今回の展覧会では「AIの反乱」、「非人間的な知性」、「人工的な進化」など、映画「2001年宇宙の旅」にも描かれた諸問題がテーマとされていましたが、特に興味深いのはアーティストたちが思いがけないようなアプローチで新たな時代の未来観を示していることでした。
ネリ・オックスマン「流離う者たち」 2014年
例えばネリ・オックスマンは「流離う者たち」において、宇宙で人間が生きられるように臓器の機能を拡張したコルセットを提案していました。現在、人間が宇宙空間で活動するには分厚い宇宙服が必要ですが、そもそも人の身体構造からして宇宙に適用させようとする斬新なアイデアと言えるかもしれません。
プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」 2020年
人工的に地球外の生命を作ろうとする「プロトエイリアン・プロジェクト」もユニークな取り組みではないでしょうか。人類の宇宙への進出と地球外生命の関わりについて考えさせられるものがありました。
【新着】映画の舞台から20年。GYRE GALLERYの『2021年宇宙の旅』展で人類の行方について考える。 https://t.co/mXSvuPYuts
— Pen Magazine (@Pen_magazine) March 29, 2021
4月25日まで開催されています。*最上段の写真は、プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)「FORMATA」より。会場内の撮影が可能でした。
「2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」 GYRE GALLERY
会期:2021年2月19日(金)~4月25日(日)
休廊:不定休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
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