都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
今月の予定 2008年12月
記録編に引き続きます。私的スケジュール帳、今月の予定です。また今回から画廊の展示もリストアップしてみました。
展覧会
「オン・ユア・ボディ」 東京都写真美術館(~12/7)
「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」 国立西洋美術館(~12/7)
「フェルメール展」 東京都美術館(~12/14)
「沖縄・プリズム 1872-2008」 東京国立近代美術館(~12/21)
「アンドリュー・ワイエス」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~12/23)
「山口薫展」 世田谷美術館(~12/23)
「蜷川実花展」 東京オペラシティアートギャラリー(~12/28)
「石内都展」 目黒区美術館(~2009/1/11)
「ネオ・トロピカリア/森山大道、ミゲル・リオ=ブランコ展」 東京都現代美術館(~2009/1/12)
「新人画会展」 板橋区立美術館(~2009/1/12)
「レオナール・フジタ展」 上野の森美術館(~2009/1/18)
「雪舟と水墨画」 千葉市美術館(12/20~2008/1/25)
ギャラリー
「森山大道」 タカ・イシイギャラリー(~12/13)
「蜷川実花」 ナディッフ・アパート(12/5~2009/1/12)
「束芋 - ハウス」 ギャラリー小柳(12/20~2009/1/31)
「池田学」 ミヅマアートギャラリー(~2009/1/17)
「カンノサカン」 ラディウムーレントゲンヴェルケ(12/5~27)
「ジャナイナ・チェッペ」 nca(~12/20)
「Haptic - 触覚」 トーキョーワンダーサイト本郷(~2009/1/12)
「白 展」 MA2 Gallery(~12/20)
「八木良太 - 回路」 無人島プロダクション(~12/20)
コンサート
「NHK交響楽団第1634回定期Aプログラム」 ストラヴィンスキー 「エディプス王」(7日)
毎度のことながら今月も盛りだくさんですが、まず最優先にしたいのは、ともに一度鑑賞を終えていながらも消化しきれていない上野のフェルメールとハンマースホイ展です。また再訪と言えば夏に群馬で見た山口薫展も同様ですが、こちらはその時も印象も良かったので、今度は用賀で楽しんできたいと思います。
オペラシティの蜷川展がかなり混雑しているようです。同美術館としては異例の混雑状況がHP上に掲載されています。ちなみに混雑と言えば右に出るものはないフェルメールですが、現在、会期最終日までの連日開館を実施の上、金、土は夜8時までの観覧することが出来るそうです。平日でもゆうに30分待ちを超える人気の展示ですが、何とか再混雑時間帯を外して見納めといきたいところです。
上には挙げませんでしたが、6日からMOA美術館で琳派展がはじまります。目当ての光琳「紅白梅図」の出品もなく、また会期が年内の24日までと微妙なところですが、もしタイミングが合えば熱海までぶらっと足を伸ばしてきたいと思います。
画廊ではまずミヅマの池田学、レントゲンのカンノサカンは必見でしょう。それに小柳で束芋もはじまります。こちらは見逃さずにチェックしたいところです。
*画廊巡りと言えば東名阪の展示情報をカバーするex-chamber museum。タグボートで好評連載中のex-chamber memoも10回目の更新を迎えました。
11日より大山崎の山荘美術館にて山口晃の個展が始まります。早速、14日のソロトークに駆けつける方も多くいらっしゃいそうですが、こちらは来春までのロングランの展覧会です。年明け以降に関西ミニツアーを兼ねて廻りたいと思います。
それでは今月も宜しくお願いします。
展覧会
「オン・ユア・ボディ」 東京都写真美術館(~12/7)
「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」 国立西洋美術館(~12/7)
「フェルメール展」 東京都美術館(~12/14)
「沖縄・プリズム 1872-2008」 東京国立近代美術館(~12/21)
「アンドリュー・ワイエス」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~12/23)
「山口薫展」 世田谷美術館(~12/23)
「蜷川実花展」 東京オペラシティアートギャラリー(~12/28)
「石内都展」 目黒区美術館(~2009/1/11)
「ネオ・トロピカリア/森山大道、ミゲル・リオ=ブランコ展」 東京都現代美術館(~2009/1/12)
「新人画会展」 板橋区立美術館(~2009/1/12)
「レオナール・フジタ展」 上野の森美術館(~2009/1/18)
「雪舟と水墨画」 千葉市美術館(12/20~2008/1/25)
ギャラリー
「森山大道」 タカ・イシイギャラリー(~12/13)
「蜷川実花」 ナディッフ・アパート(12/5~2009/1/12)
「束芋 - ハウス」 ギャラリー小柳(12/20~2009/1/31)
「池田学」 ミヅマアートギャラリー(~2009/1/17)
「カンノサカン」 ラディウムーレントゲンヴェルケ(12/5~27)
「ジャナイナ・チェッペ」 nca(~12/20)
「Haptic - 触覚」 トーキョーワンダーサイト本郷(~2009/1/12)
「白 展」 MA2 Gallery(~12/20)
「八木良太 - 回路」 無人島プロダクション(~12/20)
コンサート
「NHK交響楽団第1634回定期Aプログラム」 ストラヴィンスキー 「エディプス王」(7日)
毎度のことながら今月も盛りだくさんですが、まず最優先にしたいのは、ともに一度鑑賞を終えていながらも消化しきれていない上野のフェルメールとハンマースホイ展です。また再訪と言えば夏に群馬で見た山口薫展も同様ですが、こちらはその時も印象も良かったので、今度は用賀で楽しんできたいと思います。
オペラシティの蜷川展がかなり混雑しているようです。同美術館としては異例の混雑状況がHP上に掲載されています。ちなみに混雑と言えば右に出るものはないフェルメールですが、現在、会期最終日までの連日開館を実施の上、金、土は夜8時までの観覧することが出来るそうです。平日でもゆうに30分待ちを超える人気の展示ですが、何とか再混雑時間帯を外して見納めといきたいところです。
上には挙げませんでしたが、6日からMOA美術館で琳派展がはじまります。目当ての光琳「紅白梅図」の出品もなく、また会期が年内の24日までと微妙なところですが、もしタイミングが合えば熱海までぶらっと足を伸ばしてきたいと思います。
画廊ではまずミヅマの池田学、レントゲンのカンノサカンは必見でしょう。それに小柳で束芋もはじまります。こちらは見逃さずにチェックしたいところです。
*画廊巡りと言えば東名阪の展示情報をカバーするex-chamber museum。タグボートで好評連載中のex-chamber memoも10回目の更新を迎えました。
11日より大山崎の山荘美術館にて山口晃の個展が始まります。早速、14日のソロトークに駆けつける方も多くいらっしゃいそうですが、こちらは来春までのロングランの展覧会です。年明け以降に関西ミニツアーを兼ねて廻りたいと思います。
それでは今月も宜しくお願いします。
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先月の記録 2008年11月
毎月恒例の「予定と振り返り」です。いつもは「予定」と「記録」を一緒に並べていましたが、どうも長くなりすぎてしまうので、今回から別々のエントリに分けて書くことにしました。まずは見聞録です。お付き合いいただければ幸いです。
展覧会
◯「近世初期風俗画 躍動と快楽」 たばこと塩の博物館
・「チバトリ」 千葉市美術館、WiCANアートセンター他
◯「ボストン美術館 浮世絵名品展」 江戸東京博物館
◯「シェル美術賞展 2008」 代官山ヒルサイドフォーラム
・「20世紀の写真」 千葉市美術館
・「ダブルクロノス展」 ZAP
◯「モーリス・ルイス 秘密の色層」 川村記念美術館
◎「線の巨匠たち」 東京藝術大学大学美術館
☆「大琳派展」 東京国立博物館 (12(其一+まとめ)/11(酒井抱一)/10(光琳、乾山)/9(宗達、光悦)/8(波対決)/7(風神雷神図)/6(中期展示)/5(平常展琳派)/4(おすすめ作品)/3(展示替え)/2(レクチャー)/1(会場写真))
◯「三沢厚彦 - アニマルズ08」 そごう美術館
◎「岡村桂三郎展」 神奈川県立近代美術館 鎌倉
☆「速水御舟 - 新たなる魅力 - 」 平塚市美術館
・「スリランカ」 東京国立博物館
◯「ジョットとその遺産展」 損保ジャパン東郷青児美術館
・「巨匠ピカソ」 国立新美術館/サントリー美術館
・「琳派から日本画へ」 山種美術館
・「石田徹也 僕たちの自画像」 練馬区立美術館
・「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」 三井記念美術館
・「第4回 日経日本画大賞展」 ニューオータニ美術館
ギャラリー
◯「飯田竜太 - 永遠なる同等物」 TSCA
・「大谷有花展 - フェイバリット!」 高橋コレクション
・「ヘルマン・ニッチ展」 山本現代
・「山本麻友香」 ギャラリー椿
◯「あおひー写真展 - いつかのどこか - 」 Gallery613
・「サガキケイタ - Birthday - 」 CASHI
◯「佐藤好彦 - Trachea - 」 ラディウム
・「伊藤雅恵 - MIXING IN」 TWS本郷
・「Oコレクションによる空想美術館 - 第6室『赤羽史亮・小西紀行の部屋』」 TWS本郷
◯「MASAKO - MY HOME」 ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート
・「アニマル・ガーデン」 オオタファインアーツ
・「小笠原美環 - ひとりごと - 」 SCAI
コンサート
◎「ウィーン国立歌劇場来日公演2008」 ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」 グルベローヴァ(4日)
先月は何と言っても大琳派展が第一です。里帰り作の点数など、30数年ぶりの東博琳派展にしてみればやや物足りなさの残る部分もあったかもしれませんが、私としてはともかく初めての規模で接する琳派展で十分に堪能出来ました。またそれと並んで強く印象に残ったのが、平塚の速水御舟展です。新山種のオープニングを飾る回顧展もいよいよ来年に迫ってきましたが、平塚は未見の作品も多く、文字通り御舟の『新たなる魅力』を知るのに相応しい展覧会であったのではないでしょうか。その他、芸大らしい企画力にも冴えた線の巨匠、または箱との相性の抜群だった鎌倉の岡村展も秀逸でした。11月は質量ともに大当たりの一ヶ月だったかもしれません。
初ウィーンはグルベローヴァに限れば◎ではなくもちろん☆です。役という枠を超えた真の女王が文化会館に君臨していました。彼女の威厳に満ちた歌唱は一生忘れられない体験となりそうです。
さて拙ブログで駄文を連ねている感想ですが、最近、鑑賞しながらも書ききれていないものがいくつかあります。以下、そのような展示について一言で簡単にまとめてみました。
「スリランカ」@東京国立博物館
琳派展の影に隠れながらも、日本では殆ど知られないスリランカ芸術を詳らかにした好企画。どこかエロスを感じさせる妖艶な仏様の響宴に、仏教芸術のまた新たな面を見たような気がした。模造を含め、会場の雰囲気も、表慶館では最良の展示インスタレーションが展開されていた。
「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」@三井記念美術館
器などの個々の品には見るべき点も多いが、森川の人となりや交流関係がもう一歩伝わってこない惜しい展示。キャプション以外の構成にもさらなる工夫があっても良かったのではないか。また佐竹本が出ていたが、私の下調べが不十分で見られなかった。その点も残念。
「ジョットとその遺産展」@損保ジャパン東郷青児美術館
冒頭、ジョットの「嘆きの聖母」からして心は14世紀のイタリアに飛んでしまう。取り乱したようにも見える表情の奥には、深い悲しみと慈愛が満ちあふれていた。前提知識ゼロだったが、聖堂の再現パネルをはじめ、ジョットの革新性、もしくは同時代の画家への影響など、画業を丁寧に紹介する内容も大変に充実。今年の西洋画関連では間違いなく五本の指に入る展覧会だろう。
12月の予定へと続きます。
展覧会
◯「近世初期風俗画 躍動と快楽」 たばこと塩の博物館
・「チバトリ」 千葉市美術館、WiCANアートセンター他
◯「ボストン美術館 浮世絵名品展」 江戸東京博物館
◯「シェル美術賞展 2008」 代官山ヒルサイドフォーラム
・「20世紀の写真」 千葉市美術館
・「ダブルクロノス展」 ZAP
◯「モーリス・ルイス 秘密の色層」 川村記念美術館
◎「線の巨匠たち」 東京藝術大学大学美術館
☆「大琳派展」 東京国立博物館 (12(其一+まとめ)/11(酒井抱一)/10(光琳、乾山)/9(宗達、光悦)/8(波対決)/7(風神雷神図)/6(中期展示)/5(平常展琳派)/4(おすすめ作品)/3(展示替え)/2(レクチャー)/1(会場写真))
◯「三沢厚彦 - アニマルズ08」 そごう美術館
◎「岡村桂三郎展」 神奈川県立近代美術館 鎌倉
☆「速水御舟 - 新たなる魅力 - 」 平塚市美術館
・「スリランカ」 東京国立博物館
◯「ジョットとその遺産展」 損保ジャパン東郷青児美術館
・「巨匠ピカソ」 国立新美術館/サントリー美術館
・「琳派から日本画へ」 山種美術館
・「石田徹也 僕たちの自画像」 練馬区立美術館
・「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」 三井記念美術館
・「第4回 日経日本画大賞展」 ニューオータニ美術館
ギャラリー
◯「飯田竜太 - 永遠なる同等物」 TSCA
・「大谷有花展 - フェイバリット!」 高橋コレクション
・「ヘルマン・ニッチ展」 山本現代
・「山本麻友香」 ギャラリー椿
◯「あおひー写真展 - いつかのどこか - 」 Gallery613
・「サガキケイタ - Birthday - 」 CASHI
◯「佐藤好彦 - Trachea - 」 ラディウム
・「伊藤雅恵 - MIXING IN」 TWS本郷
・「Oコレクションによる空想美術館 - 第6室『赤羽史亮・小西紀行の部屋』」 TWS本郷
◯「MASAKO - MY HOME」 ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート
・「アニマル・ガーデン」 オオタファインアーツ
・「小笠原美環 - ひとりごと - 」 SCAI
コンサート
◎「ウィーン国立歌劇場来日公演2008」 ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」 グルベローヴァ(4日)
先月は何と言っても大琳派展が第一です。里帰り作の点数など、30数年ぶりの東博琳派展にしてみればやや物足りなさの残る部分もあったかもしれませんが、私としてはともかく初めての規模で接する琳派展で十分に堪能出来ました。またそれと並んで強く印象に残ったのが、平塚の速水御舟展です。新山種のオープニングを飾る回顧展もいよいよ来年に迫ってきましたが、平塚は未見の作品も多く、文字通り御舟の『新たなる魅力』を知るのに相応しい展覧会であったのではないでしょうか。その他、芸大らしい企画力にも冴えた線の巨匠、または箱との相性の抜群だった鎌倉の岡村展も秀逸でした。11月は質量ともに大当たりの一ヶ月だったかもしれません。
初ウィーンはグルベローヴァに限れば◎ではなくもちろん☆です。役という枠を超えた真の女王が文化会館に君臨していました。彼女の威厳に満ちた歌唱は一生忘れられない体験となりそうです。
さて拙ブログで駄文を連ねている感想ですが、最近、鑑賞しながらも書ききれていないものがいくつかあります。以下、そのような展示について一言で簡単にまとめてみました。
「スリランカ」@東京国立博物館
琳派展の影に隠れながらも、日本では殆ど知られないスリランカ芸術を詳らかにした好企画。どこかエロスを感じさせる妖艶な仏様の響宴に、仏教芸術のまた新たな面を見たような気がした。模造を含め、会場の雰囲気も、表慶館では最良の展示インスタレーションが展開されていた。
「茶人のまなざし 森川如春庵の世界」@三井記念美術館
器などの個々の品には見るべき点も多いが、森川の人となりや交流関係がもう一歩伝わってこない惜しい展示。キャプション以外の構成にもさらなる工夫があっても良かったのではないか。また佐竹本が出ていたが、私の下調べが不十分で見られなかった。その点も残念。
「ジョットとその遺産展」@損保ジャパン東郷青児美術館
冒頭、ジョットの「嘆きの聖母」からして心は14世紀のイタリアに飛んでしまう。取り乱したようにも見える表情の奥には、深い悲しみと慈愛が満ちあふれていた。前提知識ゼロだったが、聖堂の再現パネルをはじめ、ジョットの革新性、もしくは同時代の画家への影響など、画業を丁寧に紹介する内容も大変に充実。今年の西洋画関連では間違いなく五本の指に入る展覧会だろう。
12月の予定へと続きます。
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「飯田竜太 - 永遠なる同等物」 TSCA
TSCA Kashiwa(千葉県柏市若葉町3-3)
「飯田竜太- ewiges equivalent 永遠なる同等物 - 」
11/8-12/13
千葉・柏の一角に神秘的な『本の滝』が出現しました。紙や本を素材として用い、彫刻などの手法で作品を制作している(画廊HPより引用)、飯田竜太のインスタレーション個展です。TSCAで開催中の「飯田竜太 - 永遠なる同等物」へ行ってきました。
ともかく圧巻なのは、入口すぐ、一階フロアで展開されている「Falling like water」でしょう。高さはゆうに2メートルを超える位置から、解体された古本の『しずく』が垂れ下がり、それがまるで滝のような筋を描いて地上へと流れ出ています。一つ一つ切り刻まれ、そして繋がった紙の感触はリズミカルであり、またしなやかです。轟々といった水の音までが聞こえるかのようでした。
二階へあがると、持っていた形より解き放たれ、まさに変幻自在、多様な姿を見せた本がずらりと待ち構えています。壁一面に抽象画を描くかのように文庫が並ぶ「book wall」、そして同じく文庫の内部が削り取られ、棒の上に突き刺さる「annual ring」と、素材としての本からオブジェとしてのそれへと変化したインスタレーションが繰り広げられていました。また本の解体は単に形だけにとどまりません。その表面にも注目です。断裁されることで文字が歪み、判読不能の一種の紋様と化して、形とともに持ち合わせていた意味からも解放されています。時に円を描くように線が走り、さらには峡谷のように複雑な凹凸を見せる表面は、隠し持っていた本の新たな魅力を眼前に引き出しました。
展示室最奥部、新聞紙を用いた「NP Books」も見逃せません。キャプション等に記されたコンセプトはやや哲学的ですが、出来上がった作品群はシンプルな美感をたたえています。
今月12日までの開催です。
「飯田竜太- ewiges equivalent 永遠なる同等物 - 」
11/8-12/13
千葉・柏の一角に神秘的な『本の滝』が出現しました。紙や本を素材として用い、彫刻などの手法で作品を制作している(画廊HPより引用)、飯田竜太のインスタレーション個展です。TSCAで開催中の「飯田竜太 - 永遠なる同等物」へ行ってきました。
ともかく圧巻なのは、入口すぐ、一階フロアで展開されている「Falling like water」でしょう。高さはゆうに2メートルを超える位置から、解体された古本の『しずく』が垂れ下がり、それがまるで滝のような筋を描いて地上へと流れ出ています。一つ一つ切り刻まれ、そして繋がった紙の感触はリズミカルであり、またしなやかです。轟々といった水の音までが聞こえるかのようでした。
二階へあがると、持っていた形より解き放たれ、まさに変幻自在、多様な姿を見せた本がずらりと待ち構えています。壁一面に抽象画を描くかのように文庫が並ぶ「book wall」、そして同じく文庫の内部が削り取られ、棒の上に突き刺さる「annual ring」と、素材としての本からオブジェとしてのそれへと変化したインスタレーションが繰り広げられていました。また本の解体は単に形だけにとどまりません。その表面にも注目です。断裁されることで文字が歪み、判読不能の一種の紋様と化して、形とともに持ち合わせていた意味からも解放されています。時に円を描くように線が走り、さらには峡谷のように複雑な凹凸を見せる表面は、隠し持っていた本の新たな魅力を眼前に引き出しました。
展示室最奥部、新聞紙を用いた「NP Books」も見逃せません。キャプション等に記されたコンセプトはやや哲学的ですが、出来上がった作品群はシンプルな美感をたたえています。
今月12日までの開催です。
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「大谷有花展 - フェイバリット!」 高橋コレクション
高橋コレクション 白金(港区白金3-1-15 2階)
「大谷有花展 - フェイバリット!」
10/4-12/13
同画廊の広々としたスペースにも見合った大作中心の個展です。高橋コレクションで開催中の「大谷有花 - フェイバリット!」へ行ってきました。
大谷有花と言えば、上記DM作にもあるような『キミドリ』が特徴的ですが、今回はそれら以外にも、色やモチーフに趣の異なった作品がいくつか展示されています。小さな家が連なり、いつの間にか崩れるかのように飛び交う「ピクニック」や、同じく家が一棟だけボツンと、虚空を思わせる白い空間に建った「最初の家族」などは、静けさとともに物悲しささえ連想させる刹那的な作品と言えるのではないでしょうか。キャプションによれば、今展示はいわゆる「9.11」に由来しているとのことでしたが、率直なところ、例えば今年春に六本木のMomoで見た個展の世界観に惹かれる私にとって、いささかとどまってしまうような部分があるのも事実でした。
とは言え、お馴染みのキミドリ色が画面を支配し、童話を思わせる独特の緩やかな空間を描いたペインティングももちろん登場しています。大谷の多様な画風を伺い知れる展覧会なのかもしれません。
今月13日までの開催です。
「大谷有花展 - フェイバリット!」
10/4-12/13
同画廊の広々としたスペースにも見合った大作中心の個展です。高橋コレクションで開催中の「大谷有花 - フェイバリット!」へ行ってきました。
大谷有花と言えば、上記DM作にもあるような『キミドリ』が特徴的ですが、今回はそれら以外にも、色やモチーフに趣の異なった作品がいくつか展示されています。小さな家が連なり、いつの間にか崩れるかのように飛び交う「ピクニック」や、同じく家が一棟だけボツンと、虚空を思わせる白い空間に建った「最初の家族」などは、静けさとともに物悲しささえ連想させる刹那的な作品と言えるのではないでしょうか。キャプションによれば、今展示はいわゆる「9.11」に由来しているとのことでしたが、率直なところ、例えば今年春に六本木のMomoで見た個展の世界観に惹かれる私にとって、いささかとどまってしまうような部分があるのも事実でした。
とは言え、お馴染みのキミドリ色が画面を支配し、童話を思わせる独特の緩やかな空間を描いたペインティングももちろん登場しています。大谷の多様な画風を伺い知れる展覧会なのかもしれません。
今月13日までの開催です。
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「ヘルマン・ニッチ展」 山本現代
山本現代(港区白金3-1-15 3階)
「ヘルマン・ニッチ展」
11/12-12/6
血にまみれた鮮烈な表現は横浜トリエンナーレでも一際目立っていました。動物の死骸を用いて多様なパフォーマンスを繰り広げるヘルマン・ニッチの世界を紹介します。山本現代で開催中の個展へ行ってきました。
ヤギの体を切り裂き、臓物や体液を裸体の男女へぶちかけて一種のカタルシスを得るニッチのパフォーマンスは、当然ながら直感的に目を背けてしまうものではありますが、その執拗に繰り返される悪魔的な儀式(=パフォーマンス)を見ていると、血や死の光景をきれいサッパリに隠してしまう現代の在り方の一種の欺瞞性がダイレクトに浮き上がってくるに思えてなりません。ニッチの『生贄』は、人間が元来持っている血への欲求を、それ自体が代謝的であり、なおかつ西洋の伝統に立脚したものではありながらも、半ば正直なほど真っ当に引き出すことに成功しています。臓物への嫌悪感が、いつしかその場に立つことすら許されない『清潔』な現代へのそれと転化したのは私だけでしょうか。神聖なものへと祭り上げられた血を解体して手元に引き戻す瞬間をニッチは包み隠すことなく示していました。その切り口は意外と古典的です。
展示は上記のパフォーマンスの映像、もしくは写真数点、または血の飛沫とそのこびり付いた様を連想させる「Poured Painting」と名付けられた絵画作品にて構成されています。混雑していたトリエンナーレよりも、その世界感をじっくりと味わうことはできました。
不快に思われる方もおられるので、DM画像は掲載しません。関心のある方は画廊HPへあたるか、展示作品写真の掲載されたリンク先アートインデックスをご参照下さい。(ともに血の表現が登場します。ご注意下さい。)
12月6日までの開催です。
「ヘルマン・ニッチ展」
11/12-12/6
血にまみれた鮮烈な表現は横浜トリエンナーレでも一際目立っていました。動物の死骸を用いて多様なパフォーマンスを繰り広げるヘルマン・ニッチの世界を紹介します。山本現代で開催中の個展へ行ってきました。
ヤギの体を切り裂き、臓物や体液を裸体の男女へぶちかけて一種のカタルシスを得るニッチのパフォーマンスは、当然ながら直感的に目を背けてしまうものではありますが、その執拗に繰り返される悪魔的な儀式(=パフォーマンス)を見ていると、血や死の光景をきれいサッパリに隠してしまう現代の在り方の一種の欺瞞性がダイレクトに浮き上がってくるに思えてなりません。ニッチの『生贄』は、人間が元来持っている血への欲求を、それ自体が代謝的であり、なおかつ西洋の伝統に立脚したものではありながらも、半ば正直なほど真っ当に引き出すことに成功しています。臓物への嫌悪感が、いつしかその場に立つことすら許されない『清潔』な現代へのそれと転化したのは私だけでしょうか。神聖なものへと祭り上げられた血を解体して手元に引き戻す瞬間をニッチは包み隠すことなく示していました。その切り口は意外と古典的です。
展示は上記のパフォーマンスの映像、もしくは写真数点、または血の飛沫とそのこびり付いた様を連想させる「Poured Painting」と名付けられた絵画作品にて構成されています。混雑していたトリエンナーレよりも、その世界感をじっくりと味わうことはできました。
不快に思われる方もおられるので、DM画像は掲載しません。関心のある方は画廊HPへあたるか、展示作品写真の掲載されたリンク先アートインデックスをご参照下さい。(ともに血の表現が登場します。ご注意下さい。)
12月6日までの開催です。
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