「蜷川実花展」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「蜷川実花展 - 地上の花、天上の色 - 」
11/1-12/28



極彩色がオペラシティを奔放に乱舞します。蜷川実花の個展へ行ってきました。

原色の渦巻く蜷川作品を目にする機会は少なくありませんが、さすがにこれほど(450点超)の数をまとめて見ると、その眩しさに目がくらみ、また色の洪水に溺れるような感覚を与えられるのは致し方ないのかもしれません。展示されているのは、お馴染みのモチーフ、ようは造花や金魚、そして著名人をポートレートとして捉えた写真の数々です。どれもが対象の存在感、もしくは質感の全てを一切に排除し、シアンやマゼンタなどの原色にのみ包まれた人工美の世界へと還元しています。その選択に迷いはありません。色こそ命です。アプローチは愚直なほどにストレートでした。



そうした彼女の『らしさ』が一番出ているのはやはり金魚シリーズではないでしょうか。一種の人工物である金魚の様子を、愛くるしい眼差しでなめ回すほどひたすらに撮り続けています。ともかく蜷川の「可愛くないものでも可愛らしく、また可愛いものはより可愛らしく。」という姿勢は徹底しています。尾を靡かせ、くりくりした目を輝かせて水槽を駆け回る金魚はもちろん後者です。彼女にとっての関心のある事物は全てペット化していますが、まさに色に形として望みうる最高のそれが金魚なのでしょう。確かにこれほど金魚を可愛らしく撮れる作家を他に知りません。脱帽です。



常に対象をペットを愛でるような眼差しで捉えることは、どうしてもそれ自体に意思のある人間に関する限り、ある種モデルを冒涜するかのように作為の世界へと誘ってしまうのは当然のことではないでしょうか。蜷川の撮るポートレートにモデルの息づかいは皆無です。そんな彼女のアプローチに対抗していたのは唯一たけしのニヒルな表情でした。またモデルの草間が、ゆうに蜷川を上回る『カラリスト』であるのは皮肉めいています。ファインダーは跳ね返されていました。

エスカレーターでさえ彼女の目を通すとメルヘンチックになってしまうのには驚かされました。写真の一側面である虚構性を知り尽くしています。



会期末のせいか大変に混雑していました。(チケット購入のための行列あり。)なお本展示は明日で終了しますが、年明け以降、岩手、鹿児島、兵庫、高知の各美術館へと巡回します。(詳細は公式サイトをご覧下さい。)
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