◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「氷を入れたら香りが飛んでしまう」って?

2015-08-23 09:29:44 | 言葉についてあれこれ
                                  秋の気配

 「悲願の戦没者のために祈ります」は、昼ちょっと前の「FNNスピーク」で見たテロップですが、もやもやするでしょ? 見た瞬間、テロップに目を奪われてしまい、話し手がどう発音したかは覚えていないのですが、これはどう考えても「悲願」ではなく「彼岸」です。入力作業者が話を聞いて直接入力したのでしょうけれど、放送前にほかの人がチェックして修正、というのはできないのでしょうか。
 「最愛の妻も知らなかった○○さんの過去」は「ウェークアップ!ぷらす」のナレーションですが、聞いた瞬間、もやもやしました。この「妻」は誰の妻かというと、○○さんの妻です。「最愛の」と言いたい気持ちは分かりますよ、でも、流れが不自然だったのです。「妻も知らなかった○○さんの過去」もしくは「最愛の妻にも知らせなかった○○さんの過去」ならすんなり聞けたのですけれど。
 「とくダネ!」で「抱えきれないほどのお菓子」というナレーションが聞こえたとき、宙づりになった子どもが両手両足でお菓子の袋をたくさん抱え込んでいました。へえ~、人間クレーンゲームですか、何でもありだなぁ、でも「抱えきれない」って・・・、がっつり抱えてるじゃないですくわぁっo(`д´)o!
 「前方の車両が電柱に追突する事故が発生」は「世界のありえへん衝撃映像」のナレーションとテロップですが、これは問題外。「電柱に追突する」って何ですか? 「追突」とは後ろから突き当たること。前から、もしくは側面にぶつかったときは「衝突」と言います。電柱の正面ってどこ?
 「めざましテレビ」で「おいしさの秘密はパッケージの裏にありました」と若い女性(多分、アナウンサー)が言ったのですが、これも問題外( ̄д ̄)! パッケージの裏に書いてある原材料名を見ると、ふぅん、鰹節とかいろいろ入っているようですね、それが「おいしさの秘密」なのだそうで。ま、秘密というほどでもないと思いますが、パッケージの裏に“書いて”あるのね。
 「この日を待ち切れなかった人々が長い行列を作った」というナレーションを聞いたのは随分前で何の番組だか忘れましたが、待ちきれなかったということは、「この日」よりずっと前から行列を作っていたのでしょうか、そう聞こえますが。ちなみに、私は行列が嫌いで、パンケーキやかき氷を食べるために炎天下で何時間も待つなんて理解できません。バスに乗るときやトイレの順番待ちならおとなしく待ちますけれどね。
 長い行列を作った人々は「この日」を待っていた、待ち切れなくてフライングしてしまったわけではなく、おとなしく待っていたのです。そして、やっと「この日」が来て、わくわくしながら行列を作ったのです。それは「この日を待ちわびた人々が長い行列を作った」「この日を待ち続けた人々が長い行列を作った」「首を長くしてこの日を待った人々が長い行列を作った」でしょ。
 ちょっと前に「相棒」season6#14「琥珀色の殺人」(脚本 櫻井武晴)が再放送されたのですが、何とも残念なセリフを聞きました。「(香りを楽しむお酒に氷を入れたら)せっかくの香りが飛んでしまいます」と言ったのは右京さん。「氷を入れたらシェリーの香りが飛んでしまう」と言ったのは米沢さん。でもね、氷を入れると香りが“飛ぶ”のではなく、“立たない”のではありませんか?
 料理に日本酒を入れて一煮立ちさせるのはアルコールを飛ばすため。味噌汁をぐらぐら煮立たせると香りが飛んでおいしくなくなる。柑橘系の香りは温度が高いとすぐに飛んでしまう。「香り立つ」というすてきな言い方がありますよね、ブランデーグラスの底を掌で包むようにして持ってブランデーを温めるのは香りを立たせるため。「飛ぶ」と「立たない」は違うのですよ。
コメント
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