◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「熟練された技と精神が」って?

2013-01-16 18:49:56 | 気になる言葉、具体例
                               いっぱいあるのにぃ

 だいぶ前に「熟練された技術や能力が」「熟練された多くの技術者が」とアナウンサーが言うのを聞いたことがあるのですが、最近、立て続けにこの「熟練された」を耳にしました。「熟練された職人の手で」はナレーション、「熟練された職人技を要します」はドラマのセリフ、そして、「熟練された技と精神が」は、2週間ほど前に放送されたMRO開局60周年記念番組で聞いたナレーションです。
 MRO(北陸放送、TBS系列、本州の日本海側では最初の民間放送会社)ですよ、後発の他局の手本になってもいいくらいなのに、しかも、記念番組というだけあって、前田家の第18代当主まで登場して、格調高く、なかなか興味深い内容だったのに「熟練された技と精神が」ですよ、情けないったらありゃしない( ̄д ̄)ダラケッ!
 「熟練」の意味は、よく慣れていて上手なこと。「熟練する」は自動詞なので、「熟練した○○」と言うのが普通です。他動詞「~する」の受身の形は「~される」、例えば「監視する」「監視される」、「伝える」「伝えられる」、「壊す」「壊される」ですが、自動詞の場合は違います。「伝わる」は「伝わる」、「壊れる」は「壊れる」です。「熟練する」は「熟練する」で、「熟練される」なんて言いません。
 一体どういうつもりで「熟練された」と言うのか・・・、まさか、尊敬表現? んなわけない。変な日本語メモを見たら、だれが言ったのか分かりませんが、「彼の熟練された監視の目には」というのもありました。また、タレントが言った「だいぶ熟練されましたよ」というのもメモってありました。他人のことを敬語で言っているのかと思いきや、なんと、これが、自分のことなのだ~( ̄ ̄)。
 例えば、「体を鍛える」「案を練る」「技を伝承する」なら「鍛えられた体」「練られた案」「伝承された技」と言えますが、「熟練する」はあくまでも「熟練する」です。よく慣れて上手になるという意味です。「熟練した技術や能力が」「熟練した多くの技術者が」「熟練した職人の手で」「熟練した職人技を要します」「熟練した技と精神が」「彼の熟練した監視の目には」「だいぶ熟練しましたよ」ですよ。
 MROといえば、局アナである松村玲郎(まつむられお)なんか、報道特別番組のナレーションで「次々と明るみになった」「明るみになったのは28項目にも及ぶ法令違反」「違法なもたれ合いの関係が明るみとなった」などと、「明るみになった」を連発したうえに「明るみとなった」とまで言う始末。前からそうなのですから、MROにはそれは誤りだと松村アナに教えてやれる熟練したアナウンサーはいないらしい。
 「報ステ」で「明るみになると」というナレーションが流れた後、古舘さんが「ついに明るみに出たんです」と言ったことがあって、やっと直したんだなぁと思ったのですが、最近また「事実を明るみにさせるところまで」と言いましたからね、やっぱり、直すのは容易ではないようです(ーー;。

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