平日は駅まで約10分の道のりを歩いているが、途中のお宅の庭木に季節を感じることが多い。3月末から4月にかけては梅の花を皮切りにピンクの桜や濃い赤の花海棠、少し経って白やピンクのハナミズキの花、梅雨の頃の紫陽花の紫、夏の紅葉葵の赤い花、百日紅のピンクの花と目を楽しませてくれる。
しかし、この季節は鼻を楽しませてくれる金木犀(キンモクセイ)の香りに気がつく。キンモクセイは何ということのない常緑樹だが、今の季節に小さいオレンジの花を沢山つけ、良い香りを放つ。花の一つ一つは小さく、目立たないが、しばらくすると落下して地面にオレンジの雪が積ったようになる。
数えてみると駅までに8本のキンモクセイが植えられているが、一説には昔の便所の悪臭対策にこの樹を植え、さらにトイレの芳香剤にも使われたため、それを連想する人も多いとか。
しかし、人工的な香りと違い、通勤路で香るキンモクセイは春の沈丁花や初夏のジャスミンと共に気分を和らげてくれる。
因みに中国では桂花と呼び、楊貴妃が好んだ桂花陳酒はキンモクセイの香りをつけたもの。花が小さいこともあり、花言葉は「謙虚」である。