11月から12月にかけては紅葉の季節である。東京も比較的暖かい日が続いたが、それでも徐々に紅葉が始まってきた。しかし、不思議なのはまずその紅葉のメカニズムである。イチョウやポプラは黄色くなり、桜や柿は赤くなる、ナラやクヌギのように茶色になるもあるし、雨が続いいた秋は紅葉の色が悪く、枯れたような褐色になることもある。
葉が緑色であるのは葉緑体があるからだが、紅葉のメカニズムは葉の細胞の中で気温が下がると葉緑体が分解し、緑の色素がなくなり、元からある黄色の色素が残るため葉が黄色く見える。つまり、イチョウやポプラなどは葉を赤くする酵素が作れないのでクロロフィルが分解されてβカロテンが残るために黄色く色づく。
しかし、赤く色づく葉は秋になり、葉の出入口が閉ざされると生成されたデンプンが幹に送られず、葉の中に溜まるため、これが分解されて糖になる。この糖とアミノ酸を材料にアントシアニンという赤い色素が合成され、葉は赤く色づくのである。
それならば赤くも黄色くもなく、茶色になってしまう場合はどうしてであろうか。これは原理は黄色くなるのと同じだが、タンニン性の物質など褐色物質の蓄積が目立つためで量の違いで黄色くなったり、茶色になったりするのである。また、本来ならば赤くなる葉が茶色になるのはアントシアニンの生成が少ない、例えば秋に日照が少なくアントシアニンの材料になるデンプンが少ない場合は赤く色付かず茶色となってしまうのである。
紅葉そのものはいわば葉の老化である。秋が深まると日照時間が短くなり、さらに気温が低くなると根からの水分供給が減る。落葉樹の葉は大きいため、水分の蒸発量が多く、葉をつけたままでは木全体が水不足で死んでしまうため、葉を落とす。さらに副次的要素として落葉が木の根元にたまり、さらに微生物などに分解されることにより、木の養分になるリサイクルが成り立っている。
動くことのできない植物がその生を維持するため、また、葉などに溜まった不要な老廃物を捨てることにより、よい状態を維持するために紅葉があるのである。いや、調べてみると自然の偉大さを知ることも多い。