この記事は「2009大胆占い」の四半期毎の定期的な見直しを補足する臨時増刊号です。何故このタイミングで臨時レビューをやるかというと、直近の報道や各種データを見て世界経済の潮の目が変わりつつあると感じたからだ。第3四半期に回復に向かう大胆占いが当たったかもしれない。
リーマンショックが世界経済を大恐慌の危機に陥れて以来、最初の潮目の変化は今年3月シティバンクが経営黒字化すると社内向けの発表で金融システムが安定化に向かい、第2の潮目の変化はGMの計画倒産で実体経済の底抜けが避けられそうだというシグナルが発せられ、そのつど株価が大きく上昇した。
先週のマーケット動向とそれをどう評価するかの記事を見ると、総合して私は第3の潮目が来たと感じる。私がそう判断する最大の要因は米国企業がリーマンショック前と同じレベルの利益率(10%)を回復したからだ。この不景気の中で二桁の利益率は驚異的ですらある。
米国企業は既に縮小した経済の中で利益を出せる構造変化を短期間に実現した。それは雇用調整と設備投資の抑制だ。その代償は650万人の労働者で、失業率が5.3%から9.4%に悪化した。設備投資は今後経済の回復過程で見直されていくが、今まで凍結されキャッシュが内部留保されている。
従って雇用悪化は今後も続き10%台になると予測され、消費停滞が続く可能性が高い。しかし、米国家計の貯蓄率増加など合理的消費の定着、7月中古住宅販売(7.2%増前月比)など家計の健全化は進んでいる。米国企業は消費スタイルの変化を織り込んで利益体質に変化した。もう負のスパイラルは完全に断ち切られたと見てよいのではないだろうか。
日本の失業率は1.2%悪化して5.2%になったが、企業内失業600万人説が正しければ失業率は10%を越す。労働者の解雇に対する社会的反発の強さを反映した結果(コスト)だと私は思う。設備投資抑制には制約はない。総合して、日本企業の回復は米国と比べかなり遅れると予想される。片や、手厚い社会保障がある欧州とはいえ失業率の悪化は日米の中間の2%台であった。
一方、新興国、特にアジア諸国の経済回復は予想を遥かに超して世界経済回復の牽引車になり、日本企業の主要な輸出増要因となり経済回復に多大の貢献をしている。今のところ内需回復期待は現実的でなく、日本経済回復の唯一の希望は輸出以外に見出せない。今後本社を海外移転を検討する会社が出てきてもおかしくない。
それでは世界各国はどういう回復経路を辿るだろうか。アジアは明らかにV字回復の道を辿っている。米国はリーマンショック前のレベルには到達しない言わば平方根型回復(\√)を辿り、日欧はその平方根の屋根の高さがかなり低くなりそうだ。最悪なのは屋根の高さが“0”で、現状のまま続くとなべ底型回復だが、政治混乱が続けばそれもありだ。■