一月も半ばに差し掛かった。在宅のばあちゃん的には、あと、六か月で、百九歳になる。正月の三日から、ヘルパーさんの世話になって、昨日は、訪問医療で、今日は、訪問薬局の世話になる。げた箱上での、新年の挨拶は、終わりになる。
今回は、九十五才頃の「見送り」と、題してのことです。脳梗塞の治療がおわり在宅介護が始まった。晩秋のある日。ばあちゃんの娘夫婦が見舞いにきた。テーブルを囲んでの談笑に。ばあちゃんも車椅子のまま、一緒に話しを聞いていた。時々話しかけられても、うなずいているだけ。ぼんやりとしているのは、「眠むてぇんだっぺぇ」と。帰り支度で、席を立つのを、目で追っていた。「ばあちゃん、げんきでねぇ。また来るから」に、うなずいていた。見送りは廊下で、手を握られて、うなずいていた。ゆっくりと走り行く車に、五回、六回と、手を振っていた。晩秋の日暮れは速早く、テールランプが消えても、また、手を振り続けていた。夕闇が濃くなり、部屋にもどすので、「あっちゃ、いくぺぇ」と、声をかけると、口をへの字にして、涙がほほを伝わった。パジャマの袖で、涙をぬぐい、嗚咽していた。頭の中は、寂しさが、つのっているのだろう。