見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

不折と子規・鴎外・漱石/書道美術館

2006-08-11 23:15:15 | 行ったもの(美術館・見仏)
○書道博物館 企画展『中村不折生誕140周年 不折と子規・鴎外・漱石』

http://www.taitocity.net/taito/shodou/index.html

 書道博物館は、画家・書道家の中村不折(1866-1943)が、架蔵の古美術品を収蔵・展示するために創設した博物館である。中村不折といえば、私はまず、夏目漱石『吾輩は猫である』のコミカルな挿絵を思い浮かべるが、この展覧会では、見事な写実画を見ることができる。風景画は、明治の「空気」の匂いまで彷彿とするようだし、内面に食い入るような人物デッサンもいい。『ホトトギス』『馬酔木』『太陽』など、さまざまな雑誌の表紙デザインを手がけていることは初めて知った。

 それから、不折の書は「中国六朝時代の隷書の要素を残す楷書」を学んだもの、と説明されていた。なるほど。ちなみに新宿中村屋のロゴは不折の字だそうだ。森鴎外が自らの墓碑銘について「書ハ中村不折ニ依託シ」と遺言したことも有名である。その鴎外の不折宛て書簡も展示されているが、四角い字体は、少し似ていなくもない。鴎外って癖字だと思っていたが、実は意識的に不折の「隷書ふうの楷書」を学んでいたのかしら。

 久しぶりに別棟の中村不折記念館も覗いて帰った。貴重な古美術品・考古出土品が、ところ狭しと展示された、夢のような空間である。来館者を信頼して、ケースに入っていないものもあるけれど、どうか、みだりに手を触れないでね。
コメント
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