見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

紫式部日記絵巻(重文)ほか/東京国立博物館・平常展より

2007-03-11 21:49:32 | 行ったもの(美術館・見仏)
■18室:近代美術

 むかし、1階の「近代美術」は素通りと決めていたのだが、最近は足を止めてしまうことが多い。この日も、川村清雄『形見の直垂(虫干図)』の大画面に、つい吸い寄せられてしまった。無造作に古物が並んだ広い空間。無邪気な少女が、死者の着る白い直垂に袖を通している。画面の隅に描かれた洋装の胸像は勝海舟のもので、画家のパトロンであった故人を偲んで描かれた作品だという。黒田清輝の『マンドリンを持てる女』は、胸をはだけ、枕に凭れる女性を描く。色っぽい。『読書』と並んで、滞欧時代の代表作だそうだが、私はこっちのほうが好きだ。

 前田青邨『お水取』は、季節に合わせた展示なのだろう。見ていると、心が奈良に飛んでいくような気持ちがした。ああ、昨年に続き、今年も修二会は行き逃してしまったか。2004年と2005年には行ったんだけどね。

 『黄石公張良』を見て、おやと思った。先日、国立近代美術館の『揺らぐ近代-日本画と洋画のはざまに』で、強烈な印象を残した小林永濯の作品である。その隣りの今尾景年『鷲猿』も、負けず劣らずアクの強い画風でおもしろいと思った。


■3室:宮廷の美術-平安~室町

 2階に上がったら、『紫式部日記絵巻』が出ているのに気づいて、胸が躍った。見慣れた場面が、詞書を挟みながら4~5枚に渡って展開する。こんなに気前よく開けてしまっていいのかしら、と思ったが、よく見たら「重要文化財」とある。そうか、藤田美術館本や五島美術館本(ともに国宝)とは違うのだな。でも、東博本も13世紀成立というから、そんなに時代が下るわけではない。面白いのは、人物に比して家屋が小さいように思われること。女君たちの十二単のボリュームがあり過ぎて、几帳の後ろに隠れ切れていない。あれじゃ狭い縁先を歩く男君たちは一苦労だろう、と思われる。

 色彩は剥落が激しいが、女君の衣装に使われた截金(きりがね)はよく残っている。仏画だけでなく、こういう世俗の絵巻でも、日本人は截金好きなんだなあ。
コメント (3)
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