見もの・読みもの日記

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ここらでそっと、読んでおく/ハリー・ポッター第6巻

2007-03-06 23:37:02 | 読んだもの(書籍)
○J.K.ローリング『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(上)(下) 静山社 2006.5

 映画『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の、この夏、日本公開が決まり、ニュースや予告編が流れ始めた。それを見ていて、ああ、そういえば、最新作の『謎のプリンス』は、まだ読んでいなかったなあ、と思い出した。

 私は、他人より遅れてこのシリーズを読み始めたが、初めは熱くハマってしまった。しかし、5作目『不死鳥の騎士団』の読後感は、どうもイマイチだったのである。うーむ。神童もハタチ過ぎれば只の人。登場と同時に、世界中の子供たちとファンタジー・ファンをとりこにしたハリー・ポッターも、凡庸なオカルト冒険譚に堕して行くのか、と思うと、じんわりとほろ苦かった。

 最新作を、発売後すぐに読んだ知人からは「面白かった。悪くないですよ」という感想を聞かされていたのだが、正直、あそこまで堕ちた作品が、再び魅力を取り戻すとは、信じていなかったのである。

 それでも、ここまで付き合ったシリーズとお別れするのも忍びなくて、結局、今頃になって読み始めた。そうしたら、上巻の半分くらい読んだところで、あれっ意外といけるんじゃないか!?という手応えを感じた。今回のストーリーは、冒頭に執務室の首相(イギリスの!?)を登場させているほかは、ウィズリー家、ダイアゴン横丁、ホグワーツ魔法魔術学校、ホグズミード村など、なじみの舞台から踏み出さない。新しいキャラクターが次々に投入されて落ち着かなかった前作、前々作と異なり、登場人物も古なじみが大半である。なので、非常に落ち着いて、筋を追うことができる。

 下巻に入ってもまだ半信半疑で、そろそろ話が魔法省のオフィスか何かに飛んで、目もあてられないドタバタ劇になってしまうのではないか、と疑っていた。しかし、幸い、物語は最後まで品位を保ち続けた。クィディッチの勝敗をめぐる不安と昂揚も、幼い恋の鞘当ても、大きくて高貴な物語の中にきちんと収まっている。

 そして、ハリーは最後の闘いに向けて、ホグワーツを旅立つつもりであること、ロンとハーマイオニーはこれに同行するつもりであることが、本巻の最後に暗示されている。この、家庭→寮生活→自立という成長プロセス、イギリスでは、今も実際にも機能しているのかなあ。日本と違って。

 原作の最終巻『Harry Potter and the Deathly Hallows』(ハリー・ポッターと死の秘宝)は2007年7月21日発売だそうだ。私の保守的な(物語に関しては)嗜好からは、「あっと驚く展開」は期待しない。堅実で品位ある結末を添えて、21世紀児童文学の最初の(?)古典になってほしいと思う。
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