見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

上諏訪で初訪問:サンリツ服部美術館+北澤美術館

2015-12-07 22:02:56 | 行ったもの(美術館・見仏)
サンリツ服部美術館 特別展『和歌と物語の美のかたち』(2015年11月21日~2016年1月31日)

 先週末、1泊出張で長野県の松本に行ってきた。松本市内は以前、観光したことがあったので、途中下車して上諏訪の二つの美術館に寄った。サンリツ服部美術館は、服部一郎と株式会社サンリツが収集致した茶道具、古書画や西洋近代絵画等、約600点の作品を収蔵する。服部一郎(1932-1987)は、服部時計店三代目社長の服部正次の長男でセイコーエプソン社長。株式会社サンリツはよく分からないけど、諏訪にある金属加工の会社だろうか。

 展示室は2室あって、小さいほうでは服部一郎コレクションのルノワールやシャガールなどフランス近現代絵画を展示していた。大きいほうが特別展。お蔵出しの優品は『佐竹本三十六歌仙絵巻断簡・大中臣能宣像』。草色の直衣(たぶん)姿。袖口に有職文様が覗いている(前期:11/21-12/20)。後期は上畳本の大中臣能宣像に替わる。なぜ大中臣能宣を揃いでコレクションしたのか、熱烈なファンがつくとは思えない、地味な歌人なので気になる。

 絵巻類には、楽しいものがいっぱい。『弘法大師伝絵巻』は、応天門の扁額に書き忘れた点を、筆を投げて書き足した場面。扁額の前に、まさに筆が浮いている。『尊意参内図』は弘安本北野天神縁起絵巻の断簡で、むかし出光美術館で見た大きな屏風とそっくりの構図だった。『地蔵菩薩霊験記絵巻断簡』(室町時代)は、獣面の獄卒の前に立ちはだかり、身体を揺らして人々をかばう地蔵菩薩さまがかわいい。『東北院職人歌合絵巻』(桃山時代)は描写が精密で、職人たちが使っていた道具や身体動作がよく分かる。仏師は足の先で巧みに仏像を抑えて、ノミと槌を使うのだな。大和文華館から特別出陳の『伊勢物語図屏風』(江戸中期)は、見た記憶がなかった。人の顔立ちがわりと写実的。三河の八ッ橋の場面で、人の数が多く、なぜかカキツバタが白い。

 茶道具は、雨漏茶碗(銘:鈴鹿山)、伊羅保茶碗(銘:夏山)、志野火入(銘:寒草)、武蔵野図鉢(北大路魯山人)の並びが最高! 特によかったのは夏山。かたちも色もどこかモダン。姫路酒井家伝来だという。黒楽茶碗(銘:雁取)は長次郎の作にしては、ずいぶん大ぶりだなあと思った。少し四角い。最後に『蜘蛛巣蒔絵硯箱』は、あまりに精緻な工芸なので、明治の超絶技巧かと思ったら、江戸時代(17世紀)とあって驚いた。眼福。

北澤美術館 特別展『パート・ド・ヴェール-秘められたるガラス技法-』(2015年12月2日~2016年10月2日)

 列車の時間までまだ余裕があったので、隣りの北澤美術館にも寄ってみる。キッツ(株式会社北澤バルブ)創業者の北澤利男(1917-1997)が設立した。ちょうど来館者に解説をしているガイドさんの話を聞いていたら、はじめは実業家仲間に勧められて日本画を集めていたが、途中からアールヌーヴォーのガラス工芸に関心を持ち、集め始めたそうだ。現在は、色ガラスの粉を型に詰めて焼き上げる特殊なガラス技法「パート・ド・ヴェール」の作品を特集中。ざらっとした、砂糖菓子のような独特の質感が懐かしい。

 ガレの『ひとよ茸ランプ』は、初めて見たとき、大きさが意外すぎて(サントリー美術館)衝撃的だったことを思い出した。いや、本物のヒトヨタケはあんなに大きくないよねえ、たぶん。二階は現代日本画。明るい具象画が多くて、落ち着く。
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