○南伸坊、南文子『本人遺産』 文藝春秋 2016.8
南伸坊さんが「本人」になり切った姿を、奥さんの文子さんが写真に収めたもの。2012年の『本人伝説』の続編である。撮り下ろし、雑誌『オール読物』に連載されたもの、その他の雑誌に掲載されたものが混じっている。初出の時期は、2012年から2016年ということで、最近、ニュースになった人々が多数登場する。
一方で、古典的な文化人の肖像も多数あって、私はけっこう、このシリーズが好きだ。伸坊さん、作家顔なのかなあ。江戸川乱歩、内田百閒、大江健三郎とか、すごく似ている。本来の顔の輪郭からいってあり得ないのだが、三島由紀夫も似ている。
本人の「談話」がついているものもあるが、これはあまり真面目に読まなかった。申し訳ないが、ひねった談話よりも、シンプルに顔面だけのほうがずっと面白い。笑ったのは、ロボット学者の石黒治センセイ。南さんが「本人」と「アンドロイド」の二役を演じ(分け)ているのが、まるで不条理劇みたいである。
私が、似てると思ったのは、清原和博、舛添要一、タモリ、長島茂雄、林修。やっぱり、おじさんが似せやすいのか? 今回、女性は少なめのように思った。しかし、信じられないことに木村拓哉が似ている。南さんの「本人術」は、どこかに必ずずギュッと特徴をつかんだところがあって(目だったり、口だったり)、そこに注意が集中すると、あとは似ていようといまいと気にならなくなる。人間の認識力って、実に不思議なものだ(もしくは、いい加減なものだ)。
巻末に、マンガ家・東海林さだおさんとの対談あり。本人術の裏オモテが語られていて面白い。有名人を認識する手段として、髪型や小道具は大事なんだなあ。似顔絵は特徴を誇張するけど、三次元で本人になり切るときはリアリズムなので誇張しすぎてはダメ、という話も興味深かった。
南伸坊さんが「本人」になり切った姿を、奥さんの文子さんが写真に収めたもの。2012年の『本人伝説』の続編である。撮り下ろし、雑誌『オール読物』に連載されたもの、その他の雑誌に掲載されたものが混じっている。初出の時期は、2012年から2016年ということで、最近、ニュースになった人々が多数登場する。
一方で、古典的な文化人の肖像も多数あって、私はけっこう、このシリーズが好きだ。伸坊さん、作家顔なのかなあ。江戸川乱歩、内田百閒、大江健三郎とか、すごく似ている。本来の顔の輪郭からいってあり得ないのだが、三島由紀夫も似ている。
本人の「談話」がついているものもあるが、これはあまり真面目に読まなかった。申し訳ないが、ひねった談話よりも、シンプルに顔面だけのほうがずっと面白い。笑ったのは、ロボット学者の石黒治センセイ。南さんが「本人」と「アンドロイド」の二役を演じ(分け)ているのが、まるで不条理劇みたいである。
私が、似てると思ったのは、清原和博、舛添要一、タモリ、長島茂雄、林修。やっぱり、おじさんが似せやすいのか? 今回、女性は少なめのように思った。しかし、信じられないことに木村拓哉が似ている。南さんの「本人術」は、どこかに必ずずギュッと特徴をつかんだところがあって(目だったり、口だったり)、そこに注意が集中すると、あとは似ていようといまいと気にならなくなる。人間の認識力って、実に不思議なものだ(もしくは、いい加減なものだ)。
巻末に、マンガ家・東海林さだおさんとの対談あり。本人術の裏オモテが語られていて面白い。有名人を認識する手段として、髪型や小道具は大事なんだなあ。似顔絵は特徴を誇張するけど、三次元で本人になり切るときはリアリズムなので誇張しすぎてはダメ、という話も興味深かった。