■龍谷ミュージアム 第25代専如門主伝灯奉告法要記念特別展『浄土真宗と本願寺の名宝I-受け継がれる美とこころ-』(2016年9月24日~11月27日)
西本願寺のホームページによれば、伝灯奉告法要は、宗祖・親鸞聖人があきらかにされた「浄土真宗のみ教え」が新しい門主に伝えられたことを奉告するとともに、み教えが広く伝わることを願う行事。このたび、第25代専如門主が法義の伝統を継承したことから、2016年秋から来春にかけて法要が行われ、あわせて龍谷ミュージアムでは特別展が行われる。国宝『三十六人家集』が公開されるという情報に色めきたって来てしまったのだが、「常時2帖ずつ展示」なので、あまり大したことはなかった。
出ていたのは、「元真集」と「小町集」。あと平安後期成立の『類聚古集』の万葉集を抜き書きした帖も見ることができた。白書院の障壁画『韃靼人狩猟図』(江戸時代)も面白かったが、あまり韃靼人(満州族)らしくなかった。昭和8年(1933)の伝灯奉告法要の記録フィルム、最近の門主の写真も興味深かった。あ、正式には「宗主(しゅうしゅ)」と呼び、戦前までは法主または門跡と呼ばれたが、 戦後昭和21年より門主と改称されたというのを初めて知った。
■京都市美術館 生誕300年『若冲の京都 KYOTOの若冲』(2016年10月4日~12月4日)
伊藤若冲生誕300年を記念する展覧会のひとつ。チラシを見ると『象と鯨図』も『樹花鳥獣図屏風』も『百犬図』も『果蔬涅槃図』もまだ出ていない。これら人気作品は11月以降に登場の予定である。そうなると、いまどんな作品が見られるのか気になって、来てしまった。冒頭には、細見美術館所蔵の墨画の押絵貼屏風が数種。あーこれ好きなので、まとめて見られるのは、負け惜しみでなくてうれしい。『乗興舟』は短い一部分(山崎のあたり)だったけど、周囲を気にせず、じっくり眺めることができた。『玄圃瑤華』も。
次室「花鳥I」は屏風1件と軸物が21幅。うち三分の二くらいが鶏を描いたもので、この部屋にニワトリが何羽いるんだろう、と可笑しくなった。細見美術館のものなど、見覚えのある作品もあるが、多くが個人蔵。ほんとに若冲筆なのか疑わしいものも混じっているけど、おおらかな気持ちで眺める。『鵜に鰌』『芦に鵜』という珍しい題材もあった。
次室は「鯉」がずらっと並ぶ。「人物」では『虎渓三笑』が微笑ましくて好き。あかんべする『布袋図』も。「花鳥II」では鶴がせいぞろい。「吉祥」の『高杯に栗図』は、わけわからないけど構図が面白い。さすが、かつて京博で、エポックメイキングな若冲展を企画した狩野博幸さん監修の展覧会。今年の若冲展の一押しだと思う。う~ん、展示替えしたら、もう一回行かなくちゃ。
■大和文華館 特別展『呉越国-西湖に育まれた文化の精粋-』(2016年10月8日~11月13日)
呉越国(907-978年)は10世紀に中国の江南に位置し、越窯青磁や金銀器など美術・工芸において高い技術を持つ一方で、仏教を篤く信奉し、東アジアにおける文化交流に大きな役割を果たした国、と解説にいう。しかし、呉越国の名前を知っている日本人は少ないだろう。呉越国が文化交流に大きな役割を果たした時代の日本はまさに平安盛期で、「国風文化」のイメージが強いことも一因ではないかと思う。本展は、磁器・工芸・小型の仏像など展示品92件のうち69件が、中国の浙江省博物館と臨安市文物館からの出陳。めったに見られないお宝がそろった本格的な特別展である。私はむかし杭州に行ったことがあるので、見ているかもしれないけど、あまり記憶にない。
印象的だったのは、小さな銅銭「饒益神宝(にょうやくしんぽう)」。皇朝十二銭のひとつで、貞観元年(859)に日本で発行された。これが杭州の雷峰塔の地宮から出土したのだそうだ。出土した3,428枚の銅銭の大半は北宋時代のもので、これは唯一海外からもたらされたものだという。とても想像力が刺激される。見ものはやはり『銀製阿育王塔』(銭弘俶塔)。四面に本生譚の物語が刻まれていて、素晴らしく細工が精緻で、銀の輝きもきれい。ただし修復を受けた状態であるとのこと。後半に、東博所蔵の銅製阿育王塔(那智経塚出土、上部は破損しているが下部の細工はきれい)と永青文庫の銅製阿育王塔(錆びている)も展示されていた。白玉の飾りものもきれいだったなあ。
■春日大社国宝殿 開館記念展『春日大社の国宝-千年の秘宝と珠玉の甲冑刀剣を一堂に-』(2016年10月1日~11月27日)
今回の関西旅行の目的のひとつ。旧称宝物殿が、10月1日に国宝殿と名を改めてリニューアルオープンした。その変貌ぶりは想像以上。ホームページに「日本の美術館建築で活躍する方々が結集し」と堂々宣言しているだけのことはある。ただ、冒頭のコンテンポラリーアートな展示室「神垣」は、先端的すぎてちょっと戸惑う。そして開館記念展に「甲冑刀剣」というのも、今の観客をねらっているなあ。開放的で入りやすいカフェスペースが併設されたのは、とてもありがたい。
玄関脇のミニ石庭でくつろいでいたにゃんこ。「あれは…」と聞いたら、職員の方はニコニコしながら「看板猫です」とおっしゃっていた。
カフェ・ショップ「鹿音(KAON)」でソフトクリームをテイクアウト。奈良に来る楽しみがひとつ増えた。
西本願寺のホームページによれば、伝灯奉告法要は、宗祖・親鸞聖人があきらかにされた「浄土真宗のみ教え」が新しい門主に伝えられたことを奉告するとともに、み教えが広く伝わることを願う行事。このたび、第25代専如門主が法義の伝統を継承したことから、2016年秋から来春にかけて法要が行われ、あわせて龍谷ミュージアムでは特別展が行われる。国宝『三十六人家集』が公開されるという情報に色めきたって来てしまったのだが、「常時2帖ずつ展示」なので、あまり大したことはなかった。
出ていたのは、「元真集」と「小町集」。あと平安後期成立の『類聚古集』の万葉集を抜き書きした帖も見ることができた。白書院の障壁画『韃靼人狩猟図』(江戸時代)も面白かったが、あまり韃靼人(満州族)らしくなかった。昭和8年(1933)の伝灯奉告法要の記録フィルム、最近の門主の写真も興味深かった。あ、正式には「宗主(しゅうしゅ)」と呼び、戦前までは法主または門跡と呼ばれたが、 戦後昭和21年より門主と改称されたというのを初めて知った。
■京都市美術館 生誕300年『若冲の京都 KYOTOの若冲』(2016年10月4日~12月4日)
伊藤若冲生誕300年を記念する展覧会のひとつ。チラシを見ると『象と鯨図』も『樹花鳥獣図屏風』も『百犬図』も『果蔬涅槃図』もまだ出ていない。これら人気作品は11月以降に登場の予定である。そうなると、いまどんな作品が見られるのか気になって、来てしまった。冒頭には、細見美術館所蔵の墨画の押絵貼屏風が数種。あーこれ好きなので、まとめて見られるのは、負け惜しみでなくてうれしい。『乗興舟』は短い一部分(山崎のあたり)だったけど、周囲を気にせず、じっくり眺めることができた。『玄圃瑤華』も。
次室「花鳥I」は屏風1件と軸物が21幅。うち三分の二くらいが鶏を描いたもので、この部屋にニワトリが何羽いるんだろう、と可笑しくなった。細見美術館のものなど、見覚えのある作品もあるが、多くが個人蔵。ほんとに若冲筆なのか疑わしいものも混じっているけど、おおらかな気持ちで眺める。『鵜に鰌』『芦に鵜』という珍しい題材もあった。
次室は「鯉」がずらっと並ぶ。「人物」では『虎渓三笑』が微笑ましくて好き。あかんべする『布袋図』も。「花鳥II」では鶴がせいぞろい。「吉祥」の『高杯に栗図』は、わけわからないけど構図が面白い。さすが、かつて京博で、エポックメイキングな若冲展を企画した狩野博幸さん監修の展覧会。今年の若冲展の一押しだと思う。う~ん、展示替えしたら、もう一回行かなくちゃ。
■大和文華館 特別展『呉越国-西湖に育まれた文化の精粋-』(2016年10月8日~11月13日)
呉越国(907-978年)は10世紀に中国の江南に位置し、越窯青磁や金銀器など美術・工芸において高い技術を持つ一方で、仏教を篤く信奉し、東アジアにおける文化交流に大きな役割を果たした国、と解説にいう。しかし、呉越国の名前を知っている日本人は少ないだろう。呉越国が文化交流に大きな役割を果たした時代の日本はまさに平安盛期で、「国風文化」のイメージが強いことも一因ではないかと思う。本展は、磁器・工芸・小型の仏像など展示品92件のうち69件が、中国の浙江省博物館と臨安市文物館からの出陳。めったに見られないお宝がそろった本格的な特別展である。私はむかし杭州に行ったことがあるので、見ているかもしれないけど、あまり記憶にない。
印象的だったのは、小さな銅銭「饒益神宝(にょうやくしんぽう)」。皇朝十二銭のひとつで、貞観元年(859)に日本で発行された。これが杭州の雷峰塔の地宮から出土したのだそうだ。出土した3,428枚の銅銭の大半は北宋時代のもので、これは唯一海外からもたらされたものだという。とても想像力が刺激される。見ものはやはり『銀製阿育王塔』(銭弘俶塔)。四面に本生譚の物語が刻まれていて、素晴らしく細工が精緻で、銀の輝きもきれい。ただし修復を受けた状態であるとのこと。後半に、東博所蔵の銅製阿育王塔(那智経塚出土、上部は破損しているが下部の細工はきれい)と永青文庫の銅製阿育王塔(錆びている)も展示されていた。白玉の飾りものもきれいだったなあ。
■春日大社国宝殿 開館記念展『春日大社の国宝-千年の秘宝と珠玉の甲冑刀剣を一堂に-』(2016年10月1日~11月27日)
今回の関西旅行の目的のひとつ。旧称宝物殿が、10月1日に国宝殿と名を改めてリニューアルオープンした。その変貌ぶりは想像以上。ホームページに「日本の美術館建築で活躍する方々が結集し」と堂々宣言しているだけのことはある。ただ、冒頭のコンテンポラリーアートな展示室「神垣」は、先端的すぎてちょっと戸惑う。そして開館記念展に「甲冑刀剣」というのも、今の観客をねらっているなあ。開放的で入りやすいカフェスペースが併設されたのは、とてもありがたい。
玄関脇のミニ石庭でくつろいでいたにゃんこ。「あれは…」と聞いたら、職員の方はニコニコしながら「看板猫です」とおっしゃっていた。
カフェ・ショップ「鹿音(KAON)」でソフトクリームをテイクアウト。奈良に来る楽しみがひとつ増えた。