見もの・読みもの日記

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年々歳々/桜 さくら SAKURA 2020(山種美術館)

2020-04-02 22:00:15 | 行ったもの(美術館・見仏)

山種美術館 特別展『桜 さくら SAKURA 2020-美術館でお花見!-』(2020年3月14日~5月10日)

 3月15日(日)に府中市美術館の『ふつうの系譜』展とハシゴした展覧会である。府中市美術館でお会いした知人に、また山種で会ってしまい、この週末、このコースしかないものね、と笑い合った。三連休は関西へ出かけ、先週末は「自粛要請」に従ったので、今のところ東京で最後に行った展覧会になる。

 山種美術館は、毎年この時期に「桜」あるいは「花」をテーマにした展覧会を開催している。展示作品は、だいたい見たことのあるものだったが、去年と同じ木に咲く桜の花を見たときに似て、毎年同じ季節に同じ作品に出会うことの喜びがある。季節のめぐりを確認するような懐かしさと新鮮さ。

 これまでの「桜」展は、最初に風景画や花鳥画、後半に桜を配した人物画や歴史画という構成が多かったように思うのだが、今年は松岡映丘の華やかな『春光春衣』が冒頭にあってハッとした。十二単の女性たちが端居して庭の桜を眺めている。平家納経か扇面絵を思わせる情景。羽石光志の『吉野山の西行』も好き。森田曠平の『百萬』は桜の枝を肩にかつぎ、裸足で川を渡る女性の図。どこか尋常でないものを感じさせるけれど好き。守屋多々志の『聴花(式子内親王)』はさらに不安と不穏さに満ちているけれど好き。桜と女性を描いた作品には、覗いてはいけない心の蓋が開いたようなものが多い。

 満開の桜だけが描かれた小林古径の『清姫(入相桜)』には、人を愛しすぎた悲運の女性の物語がよみがえってきて心がざわつく。速水御舟が「道成寺入相桜」を描いた淡彩のスケッチさえも、知ってしまった物語を離れて、純粋に絵画を見るってできないものだ。

 奥村土牛の『醍醐』『吉野』を今年も見ることができて感謝。大野寺の摩崖仏を描いた小林古径の『弥勒』は古画を見るような趣きがある。小茂田青樹の『春庭』は、技巧を感じさせない純で素朴な雰囲気が好き。

 というように、美しいものを眺めて気持ちをリフレッシュするのは大切だと思うが、山種美術館のホームページを見たら、ついに「4月4日(土)から当面の間休館」のお知らせが載っていた。府中市美術館も週末は休館だそうだ。うーむ。開いている美術館や博物館がどんどん無くなっていく。今の東京は、それどころではないと分かっていても寂しい。次に気兼ねなく絵画や工芸作品を見ることができるのは、いつになるだろうか。

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