■京都国際マンガミュージアム 『荒俣宏の大大マンガラクタ展』(2020年5月11日~8月25日)
京都マンガミュージアムには何度か行っているが、最後に訪ねたのは2015年で、荒俣宏さんが2017年から館長をつとめていることを初めて知った。同館は「世の中に忘れられたマンガの先祖たちを掘りおこし、現代マンガのルーツをさぐる」ことを目的に、荒俣館長がプロデュースする「大マンガラクタ館」という小展示シリーズを展開しているが、本展は、館長自身のコレクションや創作物による「大マンガラクタ館」の特別拡大版。新型コロナウイルス感染症の影響で、休館を余儀なくされていたが、ようやく6/19から、京都府民以外も参観できるようになった。
館長が遠慮しているのか、あまり宣伝をしておらず、会場のギャラリー1, 2, 3が奥まったところにあるので、はじめ館内で会場を見つけられなくて苦労した。会場では、段ボール箱が展示ケースに流用されており、ところどころ、館長直筆のコメント(とイラスト)が記されている。同様の試みは、木下直之先生の退官記念展『木下直之(を)全(ぶ)集(める)』でもやっていたけど、フレンドリーな感じがして、とても嬉しい。
「たばこ販売店」の看板には「たばこ小売人 荒俣イト」のお名前。荒俣さんのおばあちゃんだったかな。美人画は、趣味と教養のあるお母さんの旧蔵品(作品?)だったと思う。「うちの妹は漫画家」とあるのは志村みどりさん。荒俣さんの本は、90年代初めまで、ほぼ全て欠かさず買って読んでいたので、ご家族や師匠、友人の名前を見ては、そうだったそうだった、とうなづく。
これは少年時代の荒俣さんが描いたマンガ。平田弘史が好きだったという。感性が大人!
海外の幻想作家ふうの本格的なイラストを描いたり、かわいい少女漫画を描いたり、熱帯魚の飼育日記に精緻な博物画を描いたり。短編アニメーションをつくったり、長じては同人誌をつくったり。このひとは「集める」だけでなく「生み出す」ことが好きな人なんだなあ、と感じた。マンガを描くことには、無から有を生み出す楽しさがある。私もマンガを描いて育ってきたので、そう感じる。
会場には、荒俣さんが最近、関心を持っているという趣味人・三田平凡寺(1876-1960)に関する資料や、藤原カムイのマンガ『帝都物語』の原画なども。
■京都文化博物館 特別展『祇園祭-京都の夏を彩る祭礼-』(2020年6月20日~7月26日)
日本を代表する祭り・京都祇園祭について、懸装品・飾金具・古文書・絵画資料など100点以上の資料を展観し、山鉾を彩る華麗な装飾を紹介する。しかしまあ、この特別展に合わせたように、今年の祇園祭そのものが中止になってしまったのは皮肉なことだ。あらためて調べたら、1879(明治12)年にはコレラ流行のため、祇園祭は11月に順延、86年、87年、95年にも同様にコレラ流行を理由に延期されているそうでで、疫病には弱いのだな。
展示品の見どころは、やはり前懸・胴懸・見送などと呼ばれる懸装品。ギリシャ神話に題材をとった舶来の毛織物(霰天神山、白楽天山)もあれば、円山応挙が下絵を描いた江戸の刺繍(保昌山)、今尾景年、竹内栖鳳など近代の画家や染色家の作品もある。応挙の『蘇武牧羊図』『巨霊人虎図』を布に写した刺繍の技法が素晴らしかった。以前、奈良博で『糸のみほとけ』という展示があったけれど、仏画に限らず、日常・祭礼の名品も含めた刺繍の特集展をやってくれないものだろうか。
関連展示で鈴木松年の『宇治川合戦図屏風』(浄妙山保存会所蔵)も見ることができた。あと、蟷螂山の「かまきり」(古いもの)が出ていたのも微笑ましかった。