見もの・読みもの日記

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豆知識もいろいろ/唐三彩(松岡美術館)

2024-08-01 22:34:31 | 行ったもの(美術館・見仏)

松岡美術館 『唐三彩-古代中国のフィギュア-』(2024年6月18日~10月13日)

 「唐時代には、唐三彩俑や加彩俑と呼ばれる、カラフルで生命力に溢れる造形のフィギュアをお墓に入れる風習がありました」というのは、本展のイントロダクション。フィギュアか…と思ったけど、まあ間違ってはいない。いずれも唐代の、人物や牛・馬など40件弱の陶俑が展示されていた。

 はじめに目に入ったのは、官人、武人、婦人などの人物俑。『三彩官人(一対)』は、褐釉の衣の武官(冠にヤマドリ=羽根でなくて鳥そのものの飾りが付いている)と緑釉の衣の文官のペアらしかったが、なぜか上衣の丈が短くて、股引を穿いたような両脚がにゅっと伸びており、文官がこの格好はないだろう、と思う。どちらも武官なのかな。

 『黄釉加彩楽人』は全6体のすべて女性の楽人俑のセット。琵琶と排簫らしい楽器を演奏していたが、ほかは持ちものが失われたのか、もともと空手だったのか、よく分からない。髪は高く結い上げ、スカート姿で正座をしていた。続いて牛と馬。唐代には馬が普及して牛の使用頻度が減ったが、貴人が牛車を使用することはあったという。『黄釉加彩牛車』(7世紀)の牛は愛嬌があって、かわいかった。

 馬および騎馬人物像は20件近く出ていて、解説も面白く、勉強になった。『三彩馬』の1体で、体色は白く、褐釉や藍釉で彩りを付けたものには「鐙(あぶみ)をつけた珍しい作例」という解説が付いていた。よく見ると、下鞍(鞍の下で馬の背中に当てる敷物)の端に、吊り革の先みたいな輪っかが見える。解説によれば、鐙は西晋時代の中国で考案されたもので(乗馬に慣れた騎馬民族は必要としなかった)、鐙を用いることで騎兵の戦闘能力が増したという。しかし展示室に並んだ三彩馬や騎馬人物像には、ほかに鐙を表現したものはなかった。

 三彩ではなく、白っぽい『加彩白馬』『加彩馬』は右の前足を踏み上げた、特徴的なポーズをしていた。これについて解説は、唐玄宗は100頭以上に舞馬を飼育しており、玄宗の誕生日である8月5日には舞馬が杯を口に咥えて拝舞する催しがあったことを紹介していた。ほんとなのか~と思って中国の検索サイト「百度」で調べたら、確かにそういう伝承があることが、陝西歴史博物館の名品『唐舞馬銜杯紋銀壺』の解説に出て来た(これ、見たいなあ…)。三彩馬は、髪型はさまざま(たてがみを長く垂らしていたり、短く刈り上げていたり)だが、尻尾は例外なく短くカットされているのが面白かった。

 最後に駱駝。駱駝引きの胡人とセットになっていることが多い。脂肪を蓄えた駱駝の瘤(駝峰)は珍味として知られ、楊貴妃はこれを好んだそうだ。検索すると、日本にもラクダのこぶを食べられるお店があるらしい。この展覧会、意外な豆知識をずいぶん仕入れてしまった。

 併設は『レガシー -美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ』(2024年6月18日〜10月13日)で、20世紀初頭のパリを彩った多様な表現を紹介する。パリに渡った日本人作家の作品も含まれる。パリ五輪を意識しての企画だろうか。

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