見もの・読みもの日記

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アイスショー”notte stellata 2025”初日公演

2025-03-10 23:29:33 | 行ったもの2(講演・公演)

羽生結弦 notte stellata 2025(2025年3月7日、16:00~)

 今年も羽生くんが座長をつとめるアイスショーnotte stellataを見て来た。今年のスペシャルゲストは野村萬斎さんと聞いて、絶対チケットを取るぞと意気込んだのだが、結局、倍率の低い金曜しか取れなかった。しかしなんとか有休を活用して見に行くことができた。そして事前情報の少ない初日の特権で、衝撃に次ぐ衝撃を味わうことができた。

 出演スケーターは、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、シェイリーン・ボーン・トゥロック、宮原知子、鈴木明子、田中刑事、無良崇人、本郷理華、フラフープのビオレッタ・アファナシバで、昨年と変わらず。座長の羽生くんにとって、最も信頼できる仲間たちなのだろう。ハビとジェイソン、それにフラフープのビオレッタは2プロで、あとの皆さんは1プロ(ただし群舞に登場)だった。

 私の席は東側スタンド。スケーターたちの入退場口となるテントが近いのが嬉しかった。そして舞台(正方形の能舞台)が近いのも嬉しいね、と隣になったお客さんと話していた。

 冒頭に登場して、notte stellata(白鳥)を舞う羽生くん。何度も見ているプログラムだが、優雅さと強靭さに磨きがかかったように感じた。そして、しっとりしたナンバー中心に5~6曲が終わったあと、突然、暗闇の中で能舞台が動き始めた。よく見ると数人の黒子のスタッフが能舞台を持ち上げ、移動させていく。能舞台はリンクに乗り上げ、その中央あたりへ。さらに後ろから付いて来たスタッフが絨毯(?)のロールを転がして、リンク上に花道をつくる。スタッフたちが引き上げたあと、リンクサイドに現れた能装束の萬斎さんが、静かに花道を歩み始める。背後のスクリーンには水面に落ちる水滴のアップ。ぴちょーんという音とともに黒い布を被ったスケーターが滑り出て、萬斎さんを追い越し、能舞台の先で、隣で、リンク上に横たわる。水滴の音とともに、またひとり、またひとり(シェイリーン、無良くん、刑事くん、明子さん、知子さん)。あたかも死者のように。

 能舞台に上がった萬斎さんが座って姿勢を整えると、スクリーンに「MANSAIボレロ」の文字が表示された。期待はしてたけど、夢がかなう喜びと、これから目の前でとんでもないものが始まるという興奮と緊張で頭の中がぐちゃぐちゃになり、しかし目だけは必死で開いていた。曲の始まり、上空から舞い散る雪を見上げる萬斎さん。大袖を頭上に被せ、雨雪を避けるように弱々しく歩み始める。万物を育む雨の音。それから、本当に音もなく、金色のオーガンジーをまとった羽生くんが滑り出る。彼は稲妻なのかな。黒い影のようだった死者たちはよみがえり、手を取り合って、それぞれの命を讃える。クライマックスに向けて、舞台上の萬斎さんが高らかに踏み鳴らす板音、羽生くんも氷上でそれに合わせたステップを踏んでいた(千秋楽のライビュで確認)。最後は二人が背中合わせにジャンプしたところで暗転。萬斎さんは舞台下のマットに飛び降りていた。場内は大歓声。いや凄かった。こんなもの、見たことがない。

 休憩時間は隣の席のお客さんと、ずっと喋っていた。とりあえず他愛もないことでも喋っていないと変になりそうなくらい、実は深い衝撃を受けていた。

 そろそろ休憩が終わる頃合い、黒いテントの中から、上半身は白ジャージの羽生くんがプーさんを抱えて登場。リンクサイドにプーさんを残して、氷の状態を確かめるようにゆっくり滑り始める。ショートサイド東隅で4S、ステージ西隅で4T-1Eu-3S(ジャンプの種類はあとで調べた)。何これ?サービス?なんて、お気楽に見ていたのだが、この後、これがSEIMEIの最重要パートの練習だったことを理解する。礼儀正しく一礼して羽生くんが退場したあと、会場は暗転。

 暗闇の中から、人語とも何とも知れない低い音が伝わってくる。「…ソワカ」という語尾だけが聞き取れて、あ、陀羅尼だ、と思ったとき、ステージのかなり高い位置に萬斎さん、いや高烏帽子に白い狩衣姿の晴明が現れた。もうそのビジュアルだけで問答無用なんだけど、ここからの演出が細かい。晴明は懐から紙の人形(ひとがた)を取り出し、「出現、羽生結弦、急々如律令」と唱えて、人形をリンクに投げ入れる。それに呼応して、SEIMEI衣装で滑り出る羽生くん。つまり氷上の羽生くんは、晴明が召喚した式神という見立てなのである。

 続いて晴明が「青龍避万兵」と唱えると青いスモークが上がり、氷上には小さな青い五芒星が浮かび出る。聞き慣れた音楽とともに、羽生くんのSEIMEIが始まり、これで萬斎さんが退場かと思うじゃないですか。ところが、羽生くんの演技を横目に、ステージから下りて来た萬斎さんは、リンクサイドを歩き始めるのである。そして東リンクサイドの中央(畳半畳ほどの小さな特設ステージが用意されている)で、羽生くんを氷上に膝まづかせ「白虎避不祥」の呪、白い五芒星が生まれる。ショ-トサイドでは「朱雀避口舌」、西リンクサイドでは「玄武避万鬼」、最後は正面の能舞台上で「黄龍伏魔、急々如律令」と唱えると、氷上の演技もクライマックスを迎え、ついにリンク上に巨大な五芒星が出現! 最初のジャンプが少しぐらつくも着地を耐えた羽生くん、試合並みに素晴らしかった。クライマックスは萬斎さんもノリノリで、羽生くんの演技に合わせて、ちょっとイナバウアーをしてみたり、くるくる回ってみたりする姿が微笑ましかった。ちなみに「青龍避万兵/白虎避不祥/朱雀避口舌/玄武避万鬼/黄龍伏魔」は、あとで調べて分かったのだが、映画にも、それからマンガにも登場しているのだな。

 これで腑抜けになりかかった会場を立て直してくれたのは、フラフープのビオレッタさんとシェイリーン。どのプログラムも最後まで楽しむことができ、最後は羽生くんの万感の思いを込めた「春よ、来い」を噛みしめた。フィナーレの周回は楽しそうだったけれど、ライビュ観戦した千秋楽と比較すると、まだまだ緊張が続いていたんだなあと思う。

 2日日のリハーサル見学、千秋楽のライブビューイング観戦は別稿に続く。


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