見もの・読みもの日記

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アイスショー”notte stellata 2025”2日目リハ見学、千秋楽ライビュ

2025-03-12 23:20:09 | 読んだもの(書籍)

羽生結弦 notte stellata 2025リハーサル見学(3月8日、14:10~);ライブビューイング(3月9日、16:00~、TOHOシネマズ日比谷)

 アイスショー”notte stellata 2025"の話を続ける。2日目は、初体験の「リハーサル見学」に出かけ、早めのシャトルバスで会場に行って、物販や飲食ブースをまわって楽しんだ。予定どおり13:30開場で中に入ると、シェイリーン、理華ちゃん、知子ちゃんがリンク上にいた。そこでアナウンスがあって、見学時間は14:10から1時間くらいと聞いていたのだが、14:10~14:55ジェイソン、無良くん、刑事くん、15:10~16:00明子ちゃん、ハビ、羽生くんに変更になったと知る。予定より長く見学できるのは願ってもない幸せだった。無良くん、刑事くんが登場すると、前の組だった知子ちゃんと一緒に、ボレロの演技の確認が始まった。音楽に合わせた確認のあと、リンクサイドのシェイリーン(振りつけ担当)と話し込んでいる様子が見られたのも貴重だった。

 次いで黒の練習着姿の羽生くんが登場。ジャンプを黙々と跳び続ける。その中には4Lo(4回転ループ)も混じっていたというが、正直、私には見分けがつかなかった。曲のかかる練習時間の後半は、なかなかジャンプが決まらなくて、観客もハラハラした。そしてタイムアップ。リンクを去る羽生くんが、何を思ったか、初日の成功に気をよくしたであろうスタッフに向けて「まさか祝杯をあげたりしていないと思いますが」「野村萬斎という存在を受け入れる覚悟を持って仕事してください」と、背筋が凍るような喝を入れていた。「僕らボロボロなんで、お願いします」とも。座長、自分にも周囲にも厳しいなあ。でもこの厳しさがあってこそのクオリティなのだろう。土曜はこれで帰京。SNSで、2日目は初日公演からさらに進歩していたという声を見て納得した。

 日曜は別の趣味に専念しようかと考えていたのだが、初日公演を見て、これは絶対に大画面で見なければダメだ!と考えを改め、慌ててライブビューイングのチケットを取った(TOHOシネマズ日比谷は最後の1席、最前列の隅だった)。現地には現地のよさがあるのだが、ライビュはまたライビュのよさがある。今回の「MANSAIボレロ」、アイスリンクの広さと天井の高さに比べた能舞台の小ささ、氷から立ち上る冷気、それらを全て突き破るような萬斎さんの熱量を感じられたのは現場の幸せ。しかし冒頭、降り注ぐ雪を仰ぐ萬斎さんの哀しみに満ちた表情を記憶に留めることができたのはライビュのおかげ。現地ステージにも大型スクリーン2面が用意されていて、ちゃんと萬斎さんと羽生くんを追っていたのだが、私は舞台上の萬斎さんに釘付けで、全くスクリーンを振り返っていられなかった。ショートサイド側の羽生くんもよく見えていなかったので、二人の動きが徐々に一体化していくクライマックスの感動を味わえたのもライビュのおかげである。ライビュのカメラは、群舞スケーターの姿も適度に見せてくれて、ありがたかった。しかし絶対カメラが足りないなあ。この演目、あらゆる角度から何度でも見たい。

 SEIMEIは、晴明衣装の萬斎さんが皮製のブーツみたいな沓を履いているのに気づくことができた。あと、最後に晴明に降り注ぐ紙吹雪は花びらかと思ったら、大量の人形(ひとがた)だったみたい。

 千秋楽のお楽しみは、やっぱり出演者たちのはっちゃけぶりだろう。フィナーレ周回のあと、ショートサイドから舞台の萬斎さんに駆け寄る羽生くんの姿は初日も目撃していたが、千秋楽の猛スピードには笑ってしまった。お互いに手を差し伸べて何度も固い握手。それで、萬斎さんが舞台から降りていらしたんだったかしら(やや記憶が曖昧)? 何の挨拶もなくて、みんないったん黒テントに引っ込んでしまったので、会場中(ライビュ会場も)再登場を求める拍手が止まなかったのである。

 そうしたら羽生くんの悪戯っぽい声で「みなさん、拍手が足りないんじゃないですか?」「萬斎さんをお迎えする準備はできてますか?」というアナウンスが流れて、テントの幕が左右に開かれ、晴明衣装の萬斎さん登場。それが、腰をかがめて両手を前後に大きく振り、スケートの所作で登場したのである(さすが狂言師!)。みんな大喜び。そしてマイクを渡された萬斎さん、MANSAIボレロを初めて東北で、この会場で、観客の生命力を感じながら演じられたことに感謝し、いきなり観客に向かって「いま生きているっていう実感ありますかー!」「生きていてよかったかー!」ってコールを送ってくれたのには、びっくりするやら嬉しいやら。泣き笑いでくしゃくしゃの羽生くんを、狩衣の大袖で包み込むような優しいハグも見ることができて幸せだった。最後は萬斎さんも含めて、出演者全員で「ありがとうございました!」で締め。

 その後も私は、SNSに流れてくる写真や感想を眺めて、幸せに浸っている。同時に鎮魂と芸能について、ずっと考えてもいる。利府のセキスイハウススーパーアリーナは震災当時、ご遺体の安置場だったので、そんな会場でのアイスショー開催には非難の声もあったことを記憶している。でも、そういう場所だからこそ「芸能」は演じられなければならない。死者の声を聞き、迷える魂を鎮め、同時に生きる者の魂に活力を呼び覚ますことが芸能の本義なのではないか。そういう点では、萬斎さんも羽生くんも伝統にのっとった「芸能者」なのだと思う。

 私は2001年の映画『陰陽師』の配役発表の頃には、萬斎さん、ピッタリだね!と大喜びする程度には萬斎さんを知っていたのだが、考えてみると、ちゃんと狂言の舞台を見たことがないかもしれない。同じ時代に生きているのに、なんという損失!と気づいて、近々見ることのできる公演を探し始めた。そうしたら、4月に大阪で『祝祭大狂言』という公演があることが分かり(なんとMANSAIボレロも上演される)、勢いでチケットを取ってしまった。狂言の生舞台を見るのは何十年ぶりだろう。実は今年の夏に控えている、能狂言『日出処の天子』(萬斎さん演出・出演)も楽しみなのだ。新しい視野の広がる一年になるかもしれない。


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