見もの・読みもの日記

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最高級コレクション/美麗なるほとけ(根津美術館)

2024-08-15 23:45:17 | 行ったもの(美術館・見仏)

根津美術館 企画展『美麗なるほとけ-館蔵仏教絵画名作展-』(2024年7月27日~8月25日)

 根津美術館の仏画作例は「日本の私立美術館の中では最高レベルといってよい質と量を誇っています」と自ら言い切る自慢のコレクション。 本展は、特に美麗な名品や希少性が高い作例などにしぼった、いわばコレクションの粋を展示する。

 冒頭は「院政期の仏画」で『普賢十羅刹女像』と『大日如来像』。前者は、向かって左向きの白象の前に二童子、後ろ(右)に唐装の十羅刹女が従う。先頭の羅刹女だけヘアスタイルが違って巻髪らしい。最近の企画展『古美術かぞえうた』にも同名の仏画(鎌倉~南北朝時代)が出ていたが、こちらは平安時代の作。『大日如来像』は本展のポスター等にもなっているもの。朱隈を施した肌が輝くように美しく、全体に品のいい暖色系でまとまっている。元は仏像の像内納入品であったため、彩色の残りがよいとのこと。

 それから「曼荼羅」「密教の尊像」と続く。金剛界曼荼羅の中心の「成身会」だけを拡大した『金剛界八十一尊曼荼羅』は、両手を伸ばして円形区画の四方を支える尊像が好き。緑・青・白・赤の肉身をしている。外周を囲むのは宝相華らしいが、アザミのような赤い花に、アサガオのような葉っぱがついている。オレンジ色の表具もよく合っている。同じく金剛界曼荼羅の「理趣会」を取り出し、中尊を愛染明王に変えたのが『愛染曼荼羅』で、こちらの宝相華は紺地の背景にふわふわ漂うクラゲみたいに見える。

 あまり記憶になかったのは『大日金輪像・如意輪観音菩薩像』と題された厨子で、扉にあたる左右の板には、愛染明王と不動明王、中央の板(慳貪板/けんどんいた)には蝦蟇みたいに低い姿勢の獅子に乗った大日金輪像を描く。板の裏側は如意輪観音菩薩像とのことで写真が添えてあった。調べたら2013年の『曼荼羅展』では、板の両面が見える展示方式だったのだな。今回、「色鮮やかな五輪塔」も写真でしか見ることができなかった。なお独特の諸尊の組合せには、文観の思想が反映しているのではないかという。

 続いて「浄土」「神々」「霊現仏」など。印象的だったのは『二十五菩薩来迎蒔絵厨子』(室町時代)で、外側は金蒔絵の蓮の花びらがひたすら舞い散り、内側には菩薩来迎図。本尊は台座のみ残るところが、心ある人にだけ姿が見えるようでよかった。『那智瀧図』はありがとうございます。

 ここまで日本の仏画ばかりだったので、今回は中国・朝鮮の仏画はないのかしら?と思っていたら、ちゃんと展示室2に待っていた。まず「禅宗」の仏画として、明兆筆『五百羅漢図』2幅など。東博『東福寺展』にも出ていたものだ。因陀羅筆『布袋蒋摩訶問答図』もありがとうございます。高麗仏画はどれもいいが、やっぱり『地蔵菩薩像』(被帽地蔵)が好き。

 今回の仏画展、これで終わりではなくて、展示室5も「白描」「絵巻」等を展示している。大好きな『十二因縁絵巻』が冒頭(たぶん)から開いていて歓喜!「文化財オンライン」の解説を読んだら、折吒王は羅刹に喩えられた12の因縁を訪ね歩くのだな。太鼓三頭羅刹(お腹が大きい)、四頭四面羅刹など、名前はおどろおどろしいが、絵を見ると噴き出すほどかわいい。いまネットで詳細を調べていたら『十二因縁絵巻詞書』(美術研究 第18号 昭和8/1933年)という全文翻刻のPDFファイルを英国CORE(機関リポジトリアグリゲーター)のサイトで見つけてしまった。いい時代になったものである。『絵過去現在因果経』も長めに開いていたので、太子と愛馬カンタカの別れ(なかなか別れない)をしみじみ味わった。

 展示室6は「追善の茶事」。大正11年(1922)4月、根津嘉一郎が、山縣有朋、朝吹柴庵、益田紅艶(いずれも数寄者)3名の追善のために催した茶会に用いられた道具を主に展示する。経筒を花入に用いたり(大山蓮華を1輪挿した)、華籠を菓子器に用いたりなど、大胆な工夫もあり。鰐口やつれ風炉、燈籠釜も珍しかった。


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