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第1季からパワーアップ/中華ドラマ『唐朝詭事録之西行』

2024-08-16 14:44:38 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『唐朝詭事録之西行』全40集(愛奇藝、2024年)

 2022年に公開された『唐朝詭事録』の続編である。前作はまあまあ楽しめたが、エピソードによっては退屈なものもあり、私は「ハマる」ほどではなかった。それが今回は激ハマりしてしまった。本作は第1季の登場人物そのままに「降魔変」「仵作之死」「風雪摩家店」「千重渡」「通天犀」「雲鼎酔」「上仙坊的来信」「供養人」の8つのエピソードで構成されている。

 「降魔変」の舞台は長安。大唐第一の絵師・秦孝白は成仏寺に降魔変の壁画を描いていたが、壁画の魔王が抜け出して人を襲う怪事件が起きる。大理寺少卿の盧凌風は、魔王との対決で重傷を負い、墓守に左遷されていた蘇無名が呼び戻される。最終的に事件は解決し、公主と太子を狙った国家転覆の陰謀を未然に防ぐことができたが、乱戦の中、盧凌風は公主に「娘(かあさん)」と呼びかけてしまう。孤児として育った盧凌風の母親が公主であることは前作で明らかになったが、一部の者だけが知る秘密だった。

 その後、皇帝は譲位を表明し太子が即位(これ玄宗なのか)。盧凌風は寒州雲鼎県の県尉に降格され、任地に赴くことになる。政治的な雲行きの危うさを察した蘇無名も職を辞し、桜桃とも別れて長安を離れるが、結局、一行は「仵作之死」の舞台である拾陽県で集合し、西を目指すことになる。博学と弁舌の蘇無名、安定の武闘派・盧凌風、やや無鉄砲な女侠の褚桜桃、絵画と観察力の裴喜君、毒薬にも詳しい神医・費鶏師が、それぞれの得意技を発揮して、チームで難事件を解決していく展開がとてもいい。昭和生まれの私には懐かしい「戦隊もの」みたい。

 前作の陰鬱な怪奇趣味はやや薄まり、論理的な「謎解き」に力点を置いたエピソードが多いのもよかった。「供養人」は童女の何気ないひとことが犯人捜しの鍵になる。私は中国語の七割くらいしか理解できていないので「不好惹」(なめてはいけない)の意味を初めて覚えた。「仵作之死」と「供養人」に出て来た古代の仵作(検死人)による死因の調査方法、あれは創作なのか、何か典拠があるのか気になる。

 荒唐無稽を突きつめたようなエピソードが「千重渡」で、大河(たぶん黄河)を船で渡ろうとした一行は、水中の怪物「破蜇」に出会う。 鮫の頭、蠍の尾、蟹の爪、蛸の足、蝙蝠の羽根を持つ(五不像)ウルトラ大怪獣みたいなやつ。この怪物と槍の使い手・盧凌風の対決が迫真のアクションで手に汗を握ってしまった(どう考えてもCGなのだが)。

 前作では青臭さの残る青年だった盧凌風が、徐々に世間知を身に着け、蘇無名とのバディ感を強めているのも嬉しい。「雲鼎酔」では唐の国禁を破って毎晩夜市が開催されている状況に怒るのだが、当地の庶民のためという前任県尉・司馬亮の意図に最後は理解を示す。「上仙坊的来信」では殺害された被害者の悪行三昧が明らかになるにつれ、容疑者の女性たちへの追及を取りやめる。本当の悪人は許さないが、基本は義理より人情の物語なのである。

 「風雪摩家店」で盧凌風らは摩什大師の舌舎利を得るが、これは鳩摩羅什が火葬されても遺言どおり舌が焼け残ったという伝説を踏まえているのだろう。「通天犀」の舞台となった寒州城はたぶん涼州(武威)で、武威にはゆかりの羅什寺塔が残る。「雲鼎酔」は盧凌風の任地・雲鼎県城が舞台だが、犯罪集団の本拠地に人々の意識を失わせる酒池があったのは、酒泉を念頭に置いているのかもしれない。そして最後の「供養人」は敦煌が舞台で、莫高窟で旅人のガイドを務める利発な少年が登場する。私は30年近く前、一回だけ河西回廊を旅行したことがあって、むちゃくちゃ懐かしかった。現地の風景は、もうすっかり変わっているんだろうなあ…。

 最終話は、一行が陰謀渦巻く長安へ呼び戻されるところで終わる。第2季が第1季より面白いというのは滅多にない事例なので、第3季にも大いに期待したい。ところで、雲鼎県で盧凌風の部下になった捕手の策龍(張層層)が好きだったんだけど、第3季の出番はないですかねえ。あと無骨一辺倒の盧凌風には剣より槍のほうが似合うと思うのだが、「通天犀」で失われた(?)槍は戻ってこないだろうか。


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