見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

4回目は長崎で/道教の美術(長崎歴史文化博物館)

2010-03-04 22:13:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
長崎歴史文化博物館 特別展『道教の美術-不老長寿を夢みる魅惑の世界』(2010年1月23日~3月22日)ほか

 大きな声では言えないが、風邪の治りかけにもかかわらず、先週末は、1泊2日で福岡・長崎まで行ってしまった。だって、月初めから飛行機も取ってたんだもん…。目的は、東京で2回、大阪で1回見た『道教の美術』である。

 場所は長崎歴史文化博物館。観光バスで乗り付ける団体客が引きも切らず、えっ?と思ったら、これは併設の『長崎奉行所・龍馬伝館』(2010年1月9日~2011年1月10日)目当てのお客さんだった。3階の特別展フロアは、もったいないことにガラ空き。会場に入ると早々、私のお気に入りの妙見菩薩像(読売新聞社蔵)に再会した。展示台も背景も赤い布で統一されているせいか、表情が明るく見える。左手の二本指を立てた印相がピースサインみたい。展示スペースは東京・大阪に比べると、かなり狭く、出品件数も少ない。東京・大阪のダイジェスト版みたいな印象である。

 それでも長崎まで来た甲斐があったのは、最後の「長崎文化に息づく道教」のセクション。長崎の画工、小原慶雲筆の『涅槃図』(No.269)は、見なれた涅槃図とはずいぶん違う。釈迦如来は、ベッドでなく、集まった人々の足元、地面に敷いた敷物の上に横たわる。チェック柄(?)の敷物が可愛くて、ピクニックシートで昼寝しているみたいだ。場所は岬の突端らしい。画面上方の雲の上には天女、仙人など天界の人々、釈迦の周りには僧侶たち、そして画面右下の海の中には、龍王や海の生き物たち(半魚人ふう)が集まっているが、悲しみの表情は薄く、華やいで祝祭的な雰囲気。薩摩(鹿児島県)坊津の興禅寺に伝わったそうだが、現在は滋賀県の円福寺蔵(出品目録では粟東歴史民俗博物館蔵)。なぜ?!

 長崎の黄檗寺院、崇福寺蔵の巨大な『涅槃図』(呉彬筆)(No.267)も上記とよく似ている。片足を曲げて横たわる釈迦は、一層くつろいだ雰囲気。そして、画面の隅々まで大勢の登場人物が描かれている。ふと思ったのだが、若冲の『石峰寺図』って、この黄檗系の涅槃図の影響を受けているんじゃないかな。あと、清代(17世紀)の中国人画家の描いた『関羽像』が、はっきりした陰影で立体感を表現しているのを見ると、私たちが「初期洋風画」と呼んでいる技法も、意外と中国から入ってきたのではないか、ということも考えた。

 長崎の唐寺に伝わる媽祖像も各種。これは、長崎歴史文化博物館の常設展示コーナーから持ってきたものらしかった。会場の外に、マカオ、福建、横浜など、世界各地の媽祖廟の写真が並べてあったのも興味深く眺めたが、青森県の大間町(下北半島の突端)にも天妃(媽祖)が祀られているというのにはびっくりした。漁民ってボーダーレスだなあ。

 このあと、昨年は駆け足だった常設展示をじっくり見直し(おもしろい!)、大混雑の『龍馬伝館』も、ついでなので覗いていく。写真は、館内のレストランで食べることのできるスペシャルメニュー「龍馬伝館ランチ」。幕末の西洋料理(出島料理)をベースにした、日本人好みのシンプルな味付け。食器には亀山焼きの再現を使用する凝りよう。メインディッシュの前にパンプキンスープと鰹のサラダがついていて美味でした。残念ながら、パンはいまいち。 



 

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