○大倉集古館 『大倉コレクション-アジアへの憧憬』
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/shukokan/asia.html
会場に掲げられた説明によれば、大倉喜八郎が東洋古美術の蒐集を始めたのは、明治32年(1899)義和団事件の混乱から欧米に流出しようとしていた中国の文物を「船ごと買い取った」のがきっかけだという。豪快~!! さすが成金一代。いや、私、このひと大好きなのだ。大倉コレクションには、オツにすました三井や住友のコレクションと違って「えっこんなものも?!」という驚きがある。
この展示会でも、いきなり『祭事図』なんていう庶民的な掛け物があって、面白かった。四合院を舞台に、祭祀のために集まった一族を描いたものらしい。「清・19世紀」とあったが、男性の衣冠は純・漢人風である。紀元前の青銅器があるかと思えば、南宋の青磁(龍泉窯)があり、明の観音菩薩遊戯坐像(木像)がある。民間信仰に基づく神像群(城隍神、北斗神君、天后聖母など)も、正統派の古物愛好家なら絶対に手を染めない、異色のコレクションだろう。夾紵大鑑(きょうちょたいかん)という、麻布を漆で固めた盥(たらい)(戦国時代)にも、呆気に取られた。
2階に上がると、漢籍が並んでいる。これがすごい。興味のない人にはツマラナイ古本だろうが、私は心が躍った。宋版(1149年→鎌倉以前だ!)から、珍しい明の銅活字本まで、よくぞ取り揃えてくれたと思う。ひとつ不満なことは、大倉集古館って「展示品リスト」を作ってくれないのだ。会場にもないし、サイトにも完全版がない。覚えのために、ここに簡単なメモを掲げておくことにする(間違いがあるかも知れないが、ご容赦)。
(1)徐公文集 宋(1149)刊
(2)道園遺稿 元(1354)刊
(3)纂図互註六子 元刊
(4)水東日記 明刊→中国と周辺海域の地図あり。
(5)八種画譜 明版刊→図版あり。
(6)書経提要 明鈔本
(7)容斎随筆 明銅活字
(8)春秋経解 清刊(武英殿袖珍版)
(9)韓集挙正 南宋(1189)刊
(10)大唐三蔵取経詩話 南宋刊→「高山寺」印あり。小型で、折本に仕立てられている。
※その場で判読できなかった木箱の裏書は三浦梧楼の筆である由。
(11)礼書 元刊(南宋刊本の翻刻)
(12)史記 明刊(覆南宋刊本)→「乾隆御覧之宝」印ほか、蔵書印多数。
続く平台ケースには『清明上河図巻』。実は、北京故宮博物院蔵の名品の後を受けて、同じ趣向の画巻がたくさん制作されたのだそうだ。本品は明代の有名画家・仇英の作という(ほんとかな?)。カラフルで、庶民的な趣きがあって楽しい。上半身裸の武芸者たちもいる。橋の上には多数の物売り。折り畳み式の帆を掲げた、いわゆるジャンク(船)がたくさん描かれていたが、”原本”もそうだったろうか。よく思い出せない(→参考)。
いたましく思ったのは、大倉集古館には、三彩、仏頭など、関東大震災で焼け焦げたままの文物がかなりあることだ。曹操の銅雀台の遺構から出土したと伝わる獅子の石像(常設展示)も火中で破損したが、幸いに修復されたという。思わず、監視員の目を盗んで、丸みを帯びた首筋を「よかったね」と撫でてやりたくなった。博物館に収まることで、戦火や災害を逃れるものもあれば、逆のケースもあるのだなあ、と思った。
中国ものが多いが、朝鮮の仏画、タイの銀器などもあり。ベッドでくつろぐミャンマーの寝仏は、フィギュアみたいで珍しかった。最後に、昭和52年刊行の『大倉文化財団所蔵宋元明版本展解説目録』を買って帰った。勉強のため。
■参考:琴詩書画巣(中国絵画史ノート):張択端《清明上河図卷》
http://www.linkclub.or.jp/~qingxia/cpaint/china10.html#qingming
大きさ(24.8×528cm)をクリックすると全体画像が見られる。
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/shukokan/asia.html
会場に掲げられた説明によれば、大倉喜八郎が東洋古美術の蒐集を始めたのは、明治32年(1899)義和団事件の混乱から欧米に流出しようとしていた中国の文物を「船ごと買い取った」のがきっかけだという。豪快~!! さすが成金一代。いや、私、このひと大好きなのだ。大倉コレクションには、オツにすました三井や住友のコレクションと違って「えっこんなものも?!」という驚きがある。
この展示会でも、いきなり『祭事図』なんていう庶民的な掛け物があって、面白かった。四合院を舞台に、祭祀のために集まった一族を描いたものらしい。「清・19世紀」とあったが、男性の衣冠は純・漢人風である。紀元前の青銅器があるかと思えば、南宋の青磁(龍泉窯)があり、明の観音菩薩遊戯坐像(木像)がある。民間信仰に基づく神像群(城隍神、北斗神君、天后聖母など)も、正統派の古物愛好家なら絶対に手を染めない、異色のコレクションだろう。夾紵大鑑(きょうちょたいかん)という、麻布を漆で固めた盥(たらい)(戦国時代)にも、呆気に取られた。
2階に上がると、漢籍が並んでいる。これがすごい。興味のない人にはツマラナイ古本だろうが、私は心が躍った。宋版(1149年→鎌倉以前だ!)から、珍しい明の銅活字本まで、よくぞ取り揃えてくれたと思う。ひとつ不満なことは、大倉集古館って「展示品リスト」を作ってくれないのだ。会場にもないし、サイトにも完全版がない。覚えのために、ここに簡単なメモを掲げておくことにする(間違いがあるかも知れないが、ご容赦)。
(1)徐公文集 宋(1149)刊
(2)道園遺稿 元(1354)刊
(3)纂図互註六子 元刊
(4)水東日記 明刊→中国と周辺海域の地図あり。
(5)八種画譜 明版刊→図版あり。
(6)書経提要 明鈔本
(7)容斎随筆 明銅活字
(8)春秋経解 清刊(武英殿袖珍版)
(9)韓集挙正 南宋(1189)刊
(10)大唐三蔵取経詩話 南宋刊→「高山寺」印あり。小型で、折本に仕立てられている。
※その場で判読できなかった木箱の裏書は三浦梧楼の筆である由。
(11)礼書 元刊(南宋刊本の翻刻)
(12)史記 明刊(覆南宋刊本)→「乾隆御覧之宝」印ほか、蔵書印多数。
続く平台ケースには『清明上河図巻』。実は、北京故宮博物院蔵の名品の後を受けて、同じ趣向の画巻がたくさん制作されたのだそうだ。本品は明代の有名画家・仇英の作という(ほんとかな?)。カラフルで、庶民的な趣きがあって楽しい。上半身裸の武芸者たちもいる。橋の上には多数の物売り。折り畳み式の帆を掲げた、いわゆるジャンク(船)がたくさん描かれていたが、”原本”もそうだったろうか。よく思い出せない(→参考)。
いたましく思ったのは、大倉集古館には、三彩、仏頭など、関東大震災で焼け焦げたままの文物がかなりあることだ。曹操の銅雀台の遺構から出土したと伝わる獅子の石像(常設展示)も火中で破損したが、幸いに修復されたという。思わず、監視員の目を盗んで、丸みを帯びた首筋を「よかったね」と撫でてやりたくなった。博物館に収まることで、戦火や災害を逃れるものもあれば、逆のケースもあるのだなあ、と思った。
中国ものが多いが、朝鮮の仏画、タイの銀器などもあり。ベッドでくつろぐミャンマーの寝仏は、フィギュアみたいで珍しかった。最後に、昭和52年刊行の『大倉文化財団所蔵宋元明版本展解説目録』を買って帰った。勉強のため。
■参考:琴詩書画巣(中国絵画史ノート):張択端《清明上河図卷》
http://www.linkclub.or.jp/~qingxia/cpaint/china10.html#qingming
大きさ(24.8×528cm)をクリックすると全体画像が見られる。