〇「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」埼玉公演ディレイビューイング(2024年12月14日13:00~、TOHOシネマズ日比谷)
遅くなったけど書いておく。羽生結弦くんの単独公演「Echoes of Life」は、いま埼玉→広島→千葉を巡回中だが、埼玉公演の初日をディレイビューイングで見てきた。単独公演シリーズを見ることにはちょっと躊躇があったのだが、今年4月にやはりディレイビューイングで見た「RE_PRAY」が文句なく素晴らしかったので、また見に行ってしまった。
ストーリーの概要は、どこかで誰かが詳しく書いてると思うが、「人間」と「作られしもの」の戦争によって、生命体が死に絶えた世界。人間なのか非人間なのかよく分からない「NOVA(VGH-257)」という個体が目を覚ます。生命について、存在について、運命について、多くの疑問を抱くNOVAが出会った「案内人」は、その答えを見つけるための扉を指し示す。扉をくぐった先で、氷上の演技で示されるNOVAの思考、というような設定。
最初の数曲はゲームやアニメに関係の深い楽曲だったらしく、私の知らないものばかりだったが「Utai IV ~Reawakening」が印象的だった。和風というかエスニックというか。その後、なつかしいショパンの「バラード第1番」の衣裳で登場した羽生くんは、ブラームス(たぶん)やバッハ(たぶん)のピアノ曲で次々に舞う。フィギュアスケーターには、バイオリンが似合うタイプとピアノが似合うタイプがいると思うのだが、彼の精緻で正確な音の捉え方は、ピアノ曲でこそ生きる気がする。多様なピアノ曲のハイライトを5曲滑ったあと、6曲目が「バラード第1番」だったのには息を呑み込んでしまった。初演日は1回、ジャンプの失敗があったが、その後の公演では完璧な演技が見られたそうだ。前半の最後はカッコよく「Goliath」で締め。
後半に「Danny Boy」を滑ってくれたのも嬉しかった。羽生くんには、人間を超えた存在に祈りを捧げるようなプログラムがいくつかあるけれど、これもその1つで、新定番と言っていいだろう。呼応するように、ストーリーの中のNOVAくんも、自分に「愛してる」というメッセージを残してくれたVGH-127の存在を思い出し、荒れ果てた大地を癒し、草花を再生していくことに、自分の命の役割を見つける。壮大で美しいファンタジー。
終演後、半袖の白Tシャツに黒ズボンというラフなスタイルで現れた羽生くんは、ニコニコ顔で喋りっ放し。この日(12月7日)は羽生くんの30歳の誕生日で、みんなでハッピーバスディを歌ってお祝いしたあと、「Let Me Entertain You」「阿修羅ちゃん」「SEIMEI」のアンコールも大盛り上がりだった。
年明けの千葉公演、チケット取りに参戦しようかとも思ったのだが、3月の「notte stellata2025」がまた見逃せないことになりそう。彼と同じ時代に生きていることに感謝して、来年も追いかけていくだろう。