まず最初に、この地獄池に昔から伝わるお話をさせて頂きます
昔、水不足で 困っていた時に清左衛門(せいざえもん)という人が良い
水源
を探しながら歩いていました。
この地に来たところ、乗っていた馬もろとも地中深くに落ち込んでしまいました。
そしたらそこから勢い良く沢山の
水
が湧き出てきたのだそうです。 それからは土地の人々がそこに行って「清左衛門
」、「清左衛門
」と呼ぶと、いっそう勢い良く水が湧き出して来たそうです。
これはこの池に昔から伝わる伝説ですが、この話からも昔から農民たちがいかに沢山の良い 水
を欲しがっていたかが判ります。
清左衛門という人は昔からあった池を改修して常時沢山の水を貯められるようにしたか、または池の開発のために犠牲になったのか、あるいはこの地方の有力者であって農民たちのために水利権を守ったのかもしれないという事です。
また、狩野(かの)には昔から加藤氏という有力者がいたそうで、清左衛門を加藤氏と結びつける人もいるそうです。
清左衛門地獄池の近くにあります富士フイルム(株)の社宅敷地内から5~6千年も前の縄文時代の人々の住居跡『馬場[ばっぱ]遺跡』が発見されたことが、既にここに良い水があり、人々が生活していたことの証拠となっています。
この地獄池は箱根火山の外輪山である明神ヶ岳 (標高 1169m)を水源とし、1日に1.3万トンの
地下水
が湧き出しているとのことです。
池の中には宗像三神
を祀る厳島神社
が、池の畔には辨財寺が建てられており、現在は平成の名水百選に選定され地域住民の手で管理保全されています。
《※宗像三神とは、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫津(たぎつひめのみこと)の3人の女神であります。》
この湧き水の源である明神ヶ岳 は、およそ27~23万年前に活動していた成層火山です。
カルデラが形成された23万年前以降の大規模
噴火により、山頂部分が崩壊し、現在の形になったとのことです。
その時の噴火による火山噴出物がスポンジのような役割をし沢山の水を蓄えることができ、清左衛門地獄池をはじめ、麓では豊富な水が湧き出しています。
箱根は全国平均のおよそ2倍の降水量があるため、その麓の南足柄市は豊かな地下水に恵まれています。
(※ 箱根の年間降水量は平均約3500mm。全国で第6位です。)