群馬に2泊3日、新潟からの往復の時間を考えると正味2日間という中で、朝から晩まで走り回る。
群馬には魅力的な「橋」が多い。坂東太郎「利根川」の源流部を持ち、その支流の数々は上州の赤城、尾瀬、三国、白根、榛名、妙義の名だたる山々を駆け下り、山肌を削り、深いⅤ字渓谷を作る。県北部や西部などは河岸段丘の上に街並みが存在するケースが多い。よって、橋は都市間を結ぶために重要な存在にもなっている。
群馬県では、その橋のある風景を大切にしている感じがする。県土整備部がPRしているのをはじめ、テレビや新聞などでも特集として取り上げ、財産・資源として活用し保存する取り組みが行われている。今回の群馬訪問では、数々の橋の中から土木遺産として認定されている4橋を紹介したい。
「鷺石橋(写真上)」は、群馬県沼田市の利根川に架かる橋だ。今こそバイパスが完成して交通量も変化したのかもしれないが、高崎方面から17号線が沼田市街地に入る直前にある。以前から、橋の西詰付近で直角に近い形でカーブを切る国道を上越線の車窓から見ると、いよいよ県境が近づいてきたという感じを持ったものだ。
1929年完成。鋼プラットトラス2連で、橋長104メートル。幅員が5.5メートル?架橋当時との交通事情は違ったとしても、国道としてはやけに狭い。まあ、1970年にはすぐ下流に新鷺石橋が完成しているので、現在は歩道橋として使用されている。そうすると、電車の窓から見ていたのも新鷺石橋なんだなー。
鷺石橋は3代目。上流・下流に川の狭窄部があって、過去に架けられた木製の橋は洪水で流されたこともあったが、現在3代目・4代目が仲良く並んで沼田市民や訪れる人たちを迎え入れてくれる。群馬の数ある橋の中で、現存する鋼プラットトラス形式の橋としては唯一のもの。2020年、土木学会選奨土木遺産。
次の橋は少し山あいに入る。利根川の支流・吾妻川、長野原付近で合流する支川の白砂川をクルマで10分ほど遡った場所に目的の橋「吾嬬(あづま)橋(写真上)」がある。群馬県中之条町六合(くに)(旧・六合村)という歴史ある土地にあるが、草津町、長野原町とではなく、中之条町と2020年に合併。いろいろあったようだが、ここでは言及しない。
そんな歴史の中で、吾嬬橋は1901年(明治34年)に完成した現・渋川市の坂東橋の架け替え(1959年)により、3連のトラス橋のうち1つを旧六合村などが譲り受けたもの。坂東橋からは1世紀以上、かなり年代物でレアな橋が山の中にひっそりと眠っていました。(新吾嬬橋の開通(1980年)により、現在は通行規制中)
国内唯一のピン結合タイプのペンシルベニア形鋼トラス橋、橋長69メートル。2006年土木遺産に選奨。ピン結合?ペンシルベニアトラス?というと鉄道橋のような感じもするが、実は坂東橋時代には、東武鉄道の軌道が路面に併設されていたのだそうだ。こちらもなかなかの歴史を持っていますな!
都市部にもありました!藤岡市と高崎市の旧国道17号線(主要地方道・前橋長瀞線)、烏川に架かる「柳瀬橋(写真上」。ポニートラスの10連は見事!1930年架橋で、ポニートラス橋としては現存する中で最長の349メートルという貴重な橋である。
確かに昭和初期に架橋されたポニートラス橋は、どんどん姿を消していっているし、そもそも長径間には向かない構造である。しかし柳瀬橋は、国道17号の倉賀野バイパスが完成(1969年)してからは交通量も減ったとはいえ、旧中山道の「渡し」同様に、群馬の主要都市間を結ぶ重要な位置で現在も活躍中だ。
橋の下流方向から西方を望むとJR高崎線の橋梁があり、観音山、そして遠くに榛名山や浅間山なども望める。夕景などは高崎周辺の人たちには「上州の風景の象徴(高崎新聞・橋の風景から②)」として印象付けられているようであるが、下流方向には歩道専用橋が架けられていて、この点少し残念な気もする。2013年土木遺産に選奨。
最後に紹介するのは、私がベースキャンプとした富岡市と下仁田町の境である鏑(かぶら)川に架かる「只川橋(写真上)」だ。前回、雄川でも触れたように、この地域の川は深く、鏑川もその代表格。この地点は特に深い場所であるが、下仁田の人たちにとって重要な生活道路である県道(旧国道254号)の橋である。
橋長は82メートル、1931年完成の2ヒンジ鋼ブレースドリブアーチ橋。鏑川には、コンクリートアーチ橋は多いが、当時の技術では60メートルが限界、そこで満を持して群馬県では初の鋼トラスアーチ橋が採用されたという。トラス構造が美しいというが、両岸絶壁で谷が深く河原に降りることができず、その全景を写真にとることはできなかった。
現在の只川橋は4代目。富岡市立吉田小学校の副教材からすると、以前はかなり川面近い低い場所に木製の橋があったが流されたり、幅30センチの吊り橋だけだった時代もあったりしたという。美しく、芸術的なこの4代目・只川橋は地域の念願の橋であり、自慢の橋であるということが伝わってくる。2011年、土木遺産選奨。
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