生地の清水(しょうず)を探して路地裏をウロウロしていたら、「岩瀬家の清水」という看板を見つけた。明らかに個人宅の裏口から入った敷地内にある。まあ、見学自由と勝手に自分に言い聞かせ自噴井戸にカメラを向ける。
お店の倉庫らしいところから急に人が現れたものだから、「すいません、井戸写真撮らせてください」と声をかけると、快く二つ返事。作業場のような場所だったので「何を作っているお店ですか?」というと、なんと日本酒の酒蔵だという。
そうだ!確か聞いたことがある?いや、テレビで見た蔵だ!酒造元を確かめようと再び声をかけると「皇国晴(みくにはれ)酒造」とのこと、振り返って蔵元の名前が入ったTシャツを見せてくれた(写真下)。表通りにお店もあるということで、帰りに立ち寄ることを告げる。
皇国晴酒造にある岩瀬家の清水は、軟水と硬水の二種類あるそうで、それを最適な割合でブレンドして酒を仕込んでいる。主力銘柄は「幻の瀧」。こちらも前日、富山の酒店で地元の酒「まぼたき」といった呼び名が目に留まった銘柄だった。
日本名水百選の生地の清水を使った日本酒というだけで貴重なのだが、淡麗で飲み口が良いとのことで評判。冷酒だけでなく熱燗でもいけるそうだ。実際口にしてみたが、これは何の料理と一緒にしても行ける!新潟の酒にも似ている。
蔵元の小売部(まあ、酒屋さんだけど)に立ち寄り、お店番をしていた初老の女性に話を聞いてみる。ぼんやり脳裏にあったテレビ番組はあの「呑み鉄本線・日本旅」である。六角さんのお仕事、羨ましいよねー。あの時、確か…そうだ!そういえば女性杜氏の蔵元だ!どんどん記憶が蘇ってくる。
店先でそんな話をしていると、お店番のお母さんが声を張り上げた。「ゆかりちゃーん!」「はーい!」、突然入ってきて根掘り葉掘り聞く私に、なんと!その女性杜氏を呼び寄せてくれたのである。
岩瀬由香里さん(写真下)、皇国晴酒造専務、この酒造会社社長の奥さんで二児の母。和歌山県出身、高校時代はパン屋さんになりたくて発酵や酵母の勉強をしていたところ、広島の「酒類総合研究所」で旦那さんと出会って結婚。2年前から杜氏として本格的に日本酒造りに携わるようになった。
店番のお母さんには通じなかったが、「そうです、『まぼたき』と呼んでください」と笑って答えてくれた。清水を追いかけていたら、その名水を使って、富山県第一号の女性杜氏が仕込んだ酒に出会った。そりゃ美味しくない訳がないでしょ!
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