知人の紹介で読む。この小説、実は家康が主人公ではない。小説は五話からなり、利根川の流れを変えた、精巧な金貨を作った、江戸に水道を敷いた、江戸城の鏡石を作った、天守閣を作った、いずれも当時の職人、技術者が主人公だ。もちろん大御所家康、殿様である秀忠も要所要所に登場する。
私は、学生時代、土木工学を学んだ。卒業研究は、アーチ橋・合成桁橋の設計だった。河川では、河川工学。実験室には、川の蛇行の実験施設があった。石垣は、河川堤防で、石積をちょこっと学習したくらい。天守閣は、建築の分野、畑違いだ。
そして、水道。水理学という工学だ。もちろん実験施設もあった。今でも資格試験で出題される「管網計算を」学習した。一本の水道管は、上流から下流に流れは簡単だが、複数になると途端に計算が難しくなる。どっちからどっちへ流れるか、簡単にはわからないのだ。でも社会人になって、いやというほどガス管の管網計算やガス工事をやった。水道とガスは歩道上、だいたいお隣に敷かれる。
話はちょっと反れるが、水道管に穴が空いていると、水が勢いよく噴き出し、隣のガス管に当たる。ガス管の周りは砂を入れるから、その砂がやすりになり、ガス管に穴を空ける。現場も見たが、まんまるの孔だ。従って、水道がガス管の中に流れて来る。そして運が悪ければ、ガスの供給支障となる。
この復旧、かなり大変だ。一昼夜もかかる。私の現役時代は、ときどきあったが、今はどうだろうか。だいぶ整備も進んで少なくはなっているはずだが。ガスの供給支障、いまでも資格試験の論述試験で、「ガスの供給支障の原因と対策を述べよ」、という問題が出される。
話は戻って、この小説は、江戸は、家康が夢を見た新しい都市なんだろう。そしてこの都市を作るのに命を賭けた職人たち、土木技術者たちの物語である。特に、これから土木を目指す方々、読んでみてね。