皆様、こんにちは。23期 柴田 純一です。
今回は、現在の私の仕事であるリスクマネジメントに関連して、「不正のトライアングル理論」のお話をしたいと思います。
世間では時折、従業員の横領、着服行為の報道を耳にします。
企業体力の弱い中小企業では1人の従業員の不正行為が企業の存続を左右することもあります。
不正のトライアングル理論(Fraud Triangle)とは、人が不正をする仕組みついての研究結果です。
犯罪を研究する米国の学者ドナルド・R・クレッシーの理論を元に、W・スティーブ・アルブレヒトがモデル化したもので、不正は次の3要素が全て揃ったときに発生すると述べています。
1. 動機
例:多額の借金、ノルマ等のプレッシャー等
2. 機会
例:見つかる可能性が少ない、チェックが形骸化している等
3. 正当化
例:給料が低い会社が悪い、みんなやっている等
一般的に、「動機」は個人的な問題であり、企業努力でコントロールすることは難しいとされています。
そこで、「機会」と「正当化」を除去することが不正防止の有効策であると言われています。
「機会」を奪う最良の方法は職務分離です。業務を属人化せず、相互にチェックし、牽制しあうことが最善策ですが、人的リソースが限られる中小企業では「言うは易く行うは難し」の場合もあると思います。
「正当化」の中で、社員の給与の不満の解消する打ち手の一つは、公平性、納得性の高い給与体系や賃金の引上げですが、これも同じく簡単ではないでしょう。
一方で、「みんながやっている」は経営者の心がけでも変えることができます。
経営者自らが公私混同をせず、高い倫理観を持った行動を率先して行うことが、健全な組織風土を生み出す予防策になります。
また、社内コミュニケーションを活性化することも有効です。
社内の風通しを良くし、組織の自浄作用を高めることで、不正行為を発生し難くする効果が期待できます。
不正のトライアングル理論では、3つの要素が全て揃うと不正が起こるとしています。
逆に言えば、3つのうちどれかを防げば不正は起き難くなります。
企業努力で「機会」を減らしつつ、社員が「正当化」に至らないための職場環境作りを心掛ける「合わせ技一本」を狙うことが、中小企業では現実的な打ち手になると考えます。