診断士の知り合の紹介で、
デービッド・アトキンソン著『国運の分岐点』を読んだ。
日本の生産性が低い理由を独自の分析に基づき分析した書籍である。
この書籍の主張をくみ取りつつ、今後の国の政策、診断士のあり方を少し考えてみたい。
生産性向上が日本経済を維持するうえで
非常に重要だということは私も理解していたつもりだったが、
同著者に言わせると根拠のないことを盲信し、
生産性向上のための正しい取り組みとは何かを誤解していたことになる。
本書によると日本の生産性は、
1990年の世界第9位から今では28位。
この20年間で先進国の平均給料1.8倍になった一方、
日本は9%減少した。
日本は9%減少した。
近年日本はなぜ生産性で国際競争力を失ったのだろう。
本書ではその原因を「人口減少」と「多すぎる中小企業」に帰結する。
つまり、生産人口が劇的に減少することにより、
規模が小さい企業の存在が国全体の生産性向上の
足を引っ張っているというのである。
さらには1963年の中小企業基本法の存在が
生産性が低いことの主因の1つと明言している。
日本の人口は2015年から2060年で
42.5%もの生産年齢人口が減少するそうだ。
この減少ペースはどの先進国よりも速い。
この人口減少のなか生産性を向上させるには、
1963年の中小企業基本法で定めた
小さい会社を守る方針自体を軌道修正するしかないという。
中小企業のM&Aが活発に行われているのは、あまりに非効率で時代に取り残された企業やそこで働く従業員の生産性を向上させるためには有意義なことである。
(本書にはその根拠や理由が満載である)
私たち中小企業診断士は中小企業支援法第11条により設立された。
中小企業の成長戦略策定やその実行のための診断助言がミッションである。
この基本的な考え方は、
デービッド・アトキン氏の主張に反するかもしれないが、
人口が減少しデジタル化が進展する中、
中小企業の支援のありかたが
1963年当時の考えから変わってくるのは
当然のことではないだろうか。
政府の中小企業支援策の柱のひとつに補助金がある。
上記アトキン氏の主張が正しいとすれば、
今後は中小企業偏重の支援策を方向転換し、
中国や韓国のように大企業にも
補助金を拡大していく可能性が大いに考えられる。
例えば中小企業を吸収合併すると優遇策が得られるなどである。
今後の中小企業診断士のあり方をマクロ的視点から
考えるきっかけになると思うので、
一読をおすすめしたい一冊である。
『国運の分岐点』のご紹介ありがとうございます。
一部の診断士界隈で話題になっていますね。私はまさに今読んでる中です。一歩引いて、クールに診断士としての活動を見直す視点を与えてくれる感じがしています。
私は初めて診断士資格の勉強を開始したとき、「いろいろ面倒な支援が必要な中小企業ってなくした方が世の中の面倒が減るのでは?」という上から目線な印象を感じたのですが、当時の印象を思い出させてくれました。そして、人口が経済に与える影響力もヒシヒシと感じさせてくれます。特に米国人口。子供の頃の「日本の約2倍」というざっくりした印象を持っていたのですが、米国人口は増加していたんですね。それにも軽く驚きました。
企業もそうですし、人の住む場所も都市に集中して(移住してもらって)効率化したほうがいいという考えも。住み慣れた街とかもう言ってる場合ではないのではないかとさえ思うこともあります。
早速買って読んでみます。
ありがとうございました。