あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

長谷川櫂編著「四季のうた」を読んで

2016-09-12 09:35:45 | Weblog


照る日曇る日第895回


俳人の著者が2013年4月から2014年3月にかけて新聞紙上で連載した詩文集。小古代から現代までの様々な作者が作った四季折々の俳句と短歌を取り上げて100字ほどの短文で紹介した文庫本であるが、とても面白くて為になります。

比較的数多くの作品が取り上げられているのは、高野公彦、宇佐美魚目、葛原妙子、松瀬青々、丸谷才一といった人々だが、いちばん心に残ったのは「メチレンブルーの羊」という歌集から取られた次のⅠ首であった。

 若き日に住みゐし家を一つづつ訪ねてみむとかたる月の夜 川井怜子

 私も若き日に東京に出てきていろいろなところで下宿していたので、「舞踏会の手帖」よろしくあちこちを訪ねてみたいと思う時がある。
 月夜に「かたる」相手は夫だろうか。お互いが知らないお互いの若き日の思い出をともに訪ねる旅が実現すれば、さぞや浪漫的なムードに包まれるに違いない。

  ばさばさと股間につかふ扇かな 丸谷才一

 編者によれば、神田神保町の喫茶店でみた風景を詠んだこの句が丸谷才一のお墓に刻んであるそうだが、なるほど丸谷才一とはそういう洒脱な人物だったのかと改めて見直したことであった。


  また負けたまたまた負けた稀勢の里ころころ負けちゃう万年大関 蝶人


コメント
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