あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ドラマ「夏目漱石の妻」をみて

2016-09-29 11:57:27 | Weblog
ドラマ「夏目漱石の妻」をみて


狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op. 243



 そおゆう題名のテレビドラマをNHKの衛星放送でやっていたので、これはこれはと思ってついしまいまでみてしまったが、どうも全体的に作りごとめいて真実味に乏しいので、だんだん白々しく味けなくなってしまった。

 まず役者。ヒロインとかその父親役はまあこんなもんだろうが、肝心の漱石をやる役者が吹けば飛ぶようなまるで屁のような男で、まるきし存在感がない。子規なんかも親近感を持てない馬鹿面をしている。探せば他にもっとましなのがいたのではなかろうか。

 次に脚本。お見合いの席で漱石が鏡子を気にいったのは、彼女が「遠慮なく笑ったから」ではなく、「口の中の金歯を隠そうともせず無遠慮に笑ったから」なので、ドラマはちゃんとこの金歯まで映すべきだった。熊本での結婚式では猛烈な暑さのあまり、新郎も新婦の父親も全員上着を脱ぎ捨てているのだが、それもちゃんと描かれてはいなかった。
 鏡子が入水自殺に至る経緯も、その描写も、突っ込みが甘い。

 これを要するに、脚本も演出も昼行燈のように曖昧模糊としていて、見世物としての切れ味が鈍いのである。

 まあいまどき平成末期の体制翼賛放送局に過重な期待を寄せてはいけないのだろうが、偏向政治報道に夢中になるあまり文藝娯楽物には手が回りかねたような、トロイトロイ出来栄えであった。


 ほんたうは面白くもなきお笑いに追従笑いしているタイタニック上の我ら 蝶人


コメント
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