
照る日曇る日第898回
ジョン・キーツ(1795-1821)はイギリス・ロマン派を代表する詩人で、たった25歳の若さで幸い薄きこの世をみまかった。
この文庫本ではその主要な作品を、明快な日本語でクイクイ読むことができるが、英文では相当難しいのではないだろうか。
私の尊敬する先輩の一人は英文科でこのキーツを、もう一人は仏文科でロートレアモンを卒論の対象に選んだが、その理由を尋ねてみると、いずれも遺された作品が少ないからやりやすいということだった。
キーツも短命だったかそりゃ少ないといえば少ないが、作品の多くがミルトンのようなしんねりむっつりした歴史劇の総括文のような趣で、こんなのに向き合うと結構消耗したのではないだろうか。
ギリシアやローマ神話に通暁している人でなければあんまり興味も関心も湧かないのではないだろうかと思ったが、違いますかねHさん。
しかしキーツときたら大したもんだ。よくも20代にして古典の教養を踏まえ、そのうえで近代的な個我のほむらを鮮やかに燃え立たせることができたものだ。
小便の饐えた臭いが鼻をつくパンツとズボンは履いているのに 蝶人