音楽千夜一夜 第407回

旧EMI盤がワーナー傘下に入ってリマスターされた、1947年から1958年のライヴの録音である。
バッハの「ミサ曲ロ短調」とベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」はフィルハーモニア管、ブラームスはウィーン・フィルの演奏だが、いずれもトスカニーニ流のきりりと引き締まった端正なたたずまいに襟を正さざるをえないなあ。
そのカラヤンが、やたらめったらレガートを多用するいわゆるひとつのシュガーベイビー、甘美で情緒的な演奏に変わったのは70年代半ばくらいからではないかなあ、と推察するのだが、その時点で筋肉マン風のトスカニーニ風と決別して独自の路線を追求しようと考えたのではなかろうか。
それはともかく、パーボとかN響相変わらず下らない若手の演奏がマーケットを賑わせている今日この頃であるが、彼奴らが嫌になったときに手が伸びれば、いつでもそれなりの満足を与えてくれるのが万能カラヤンの音楽である。
勝負とは恐ろしきものよその一瞬が人生を変えてしまう 蝶人