蝶人物見遊山記 第272回&鎌倉ちょっと不思議な物語第397回
小春日和の散歩で、市役所の右手奥にある「鎌倉歴史文化交流館」を訪ねました。
鎌倉という中世都市の特徴は、山側のどの方向に進んでも、「谷戸」と称する袋地、谷間に突き当たることで、その大中小の谷戸の高地には必ずと言うていいほど寺院が建立されていましたが、この谷間も「無量寺谷」と呼ばれた谷戸で、そこにはかつて「無量寿院」という名の巨大なお寺が聳えておりました。
資料によれば、江戸時代には刀匠正宗の末裔が住み、大正時代には三菱財閥の岩崎小弥太の別荘があったそうですが、その後どこかの大金持ちが英国の建築家ノーマン・フォスターに頼んで建築した洋館に改修を施したものが、鎌倉市のこの施設に生まれ変わったそうです。
げんざいここでは「鎌倉の構造と境界」というもっともらしいテーマで、3月17日まで展覧会が開催されていますが、その中身は最近発掘された鎌倉時代の埋蔵物の展示でして、私たちはこれらの考古遺物を通じて中世鎌倉人の生活と文化のあれこれを窺い知ることができます。
冬来れども春なお遠い2月16日、わたくしは、多くの人員と労力と税金を投じて完成、維持されているこの、このいったいなにをするのかよく分からない妙な名前の広大な施設を、無量寿院の裏山から見下ろしながら、こんな観光客目当ての博物館を作るくらいなら、神奈川県でもっとも遅れていると定評のある本市の悪評を一気に覆す障害者向けの綜合社会福祉施設センター、とりわけ成人自閉症者用のホームを、「せめて併設」してくれたらいいのになあ、と遠い目で思ったことでした。
無言なる非通知電話また掛かる何もないより少しはましか 蝶人