あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

鎌倉国宝館で特別展「北斎と肉筆浮世絵」をみて

2018-02-05 11:11:58 | Weblog


蝶人物見遊山記 第271回


「大英博物館を熱狂の渦に巻き込んだ北斎作品が凱旋!」なんてチラシに惹句が刷り込んであるので、思わず笑ってしまった。

この世に美術館、博物館多しといえども、この国宝館ほどマンネリの施設はない。年年歳歳時は移れど、春夏秋冬ほとんど同じ内容の企画をぐるぐる開催しているのが、この名前だけは立派な鎌倉国宝館なのである。

今回の特別展にしても、毎年恒例の「氏家浮世絵コレクション」の相も変らぬ展示なのであるが、たまたま北斎の「酔余美人図」「桜に鷲図」「雪中張飛図」の3幅を大英博物館で公開したら、好評を博したというだけの話で、物見高い英都倫敦市民がどれくらい熱狂したかは現場を見ていないので測りかねるが、それをウリにするところが、肌寒いような、可憐なような、そんなくわんらんであった。

でもに改めて見る葛飾北斎の肉筆の分厚い筆致は、それが晩年の筆致を感じさせない画狂人らしい情熱の産物で、「ああ鎌倉国宝館にこれあるかな!」と、無上の喜びに酔いしれたる天下の逸品ではありましたぞえ。

北斎の他にも、師宣、歌麿、雪鼎、政信などのいつもの肉筆画が並んでおりましたが、浮世絵とは風合いの異なるタッチを披露している歌川広重のそれがちょっと面白かったずら。

なお残念ながらこの展覧会は、すでに昨日2月4日に終了してしまったので、ごらんになりたい方は、来年の今頃鎌倉八幡宮傍をめざして頂ければと存じます。

開口一番悪口も言うたけれど、同じ展覧内容を10年いちじつのごとく毎年村の水車のように飽きずにやっている美術館もいいものですよ。


  藝大の入学式で拾いたるムクロジの実が大樹となるまで 蝶人
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